【第5回(最終回)】育て、挑み、超えていく──人間国宝・中川衛の果てなき挑戦
2025.07.03
【第5回(最終回)】育て、挑み、超えていく──人間国宝・中川衛の果てなき挑戦
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「加賀象嵌(かがぞうがん)」の第一人者である人間国宝・中川衛さんが、自分を着飾らず、そのすべてをさらけ出す姿が印象的だった前回の配信。スケッチブックの重要性や幾何学模様と自然の融合といったスタイルの秘密など、ここまで語ってしまって大丈夫なのかと少し心配にもなる。だが、それも杞憂だろう。
ここまで全4回の配信をすべてチェックしてきた読者の方ならば、「加賀象嵌」に真摯に向き合ってきた中川さんの言葉の裏にある努力の数々を知っているはずだ。だからこそ、その半生を包み隠さずに語る中川さんの気持ちも想像がつくだろう。
最終回では、かつて一人で伝統工芸の道に入り、そして人間国宝へと上り詰めた中川さんに、弟子の育成や伝統工芸の行く末をどのように見ているのかを語っていただいた。そこには、人間国宝という技術の継承者として、つねに先を歩む中川さんの覚悟があった。
<前回は作品に見られる芸術的なデザインの秘密をお送りしました。詳しくはこちら。>

弟子が増える喜び

かつて中川さん自身が高橋介州先生の下で修業をしたように、いまでは中川さんの教えを受け継ぐお弟子さんも出てきた。伝統工芸に携わる人が増えたいま、こうした状況は想像すらしなかったという。

「弟子というと、大学で教えていたときの学生さんや、川本敦久先生が運営している金沢卯辰山工芸工房で教えた人たちがいますね。それに、いまも金沢職人大学校で教えていますから。こういうところから職人になっていく人が出てきて、大変うれしいですよ」

感慨深く語る中川さんの口調は、自身が職人の道に入ったときに孤独な思いをしたからなのだろう。

「私が工芸を始めたときは、金沢には2人しか象嵌職人がいませんでした。このままでは、金沢から象嵌がなくなってしまうのではないかと不安になったほどです。でも、私が工芸の道を選んだことを先生たちは喜んでくれてね。

ですから、工芸に携わる人が増えてきたいまの状況は、昔じゃ考えられなかったですよ」
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