発売から30年以上、子どもたちの“お世話したい”というやさしい心に寄り添い続けている人形「
メルちゃん」。近年、その魅力は「お世話」の領域を超え、ファッションや着せかえの楽しみにまで大きく広がっている。
今回はメルちゃん誕生のきっかけから、現在注目を集めているSNSやファッションへのこだわりまで、
パイロットコーポレーション玩具事業部の土井 菜摘子さんと髙木 千咲さんにお話を伺った。
原点は“髪の色が変わる”筆記具のインキ技術
1992年に誕生したメルちゃんは、今年で33年目を迎えるロングセラー人形である。遊びながら思いやりを育める知育玩具として長く支持されてきたが、なぜ筆記具メーカーのパイロットが人形を作ることになったのだろうか。「実は、摩擦熱で筆跡を消去する、消せるボールペン『フリクション』が世に出るよりもずっと前から “温度で色が変わるインキ”自体は社内で開発されていたんです。ただ、筆記具として使えるレベルの品質にまで引き上げるのには時間がかかっていたため、その技術を何か別の形で生かせないか? と考えたのが、玩具事業部のはじまりでした。
温度で色が変わるという特徴はお風呂などのシーンと非常に相性がよかったこともあり、さまざまな試行錯誤の末、最終的にたどり着いたのが“お風呂で髪の色が変わるお人形”というアイデアでした」(土井さん)