【第1回】人間国宝・宮本貞治の原点──幼少期と家族の記憶
2025.09.01
【第1回】人間国宝・宮本貞治の原点──幼少期と家族の記憶
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日本の領土は3分の2が森林であり、風土や気候に恵まれ、多種多様な木々が生育している。それにより、古くから日本では木工芸が発展してきた。私たちの身の回りにある木材を使用した家具や、木造建築への安心感や懐かしさは、そうした伝統的な日本の文化が育んできたものだろう。
今回お話を伺ったのは、2023年に木工芸の人間国宝になった宮本貞治さん。滋賀県大津市で工房を構え、日本伝統工芸展などに精力的に作品を出展している。その作品群は、まるで琵琶湖の水面に映る波紋を思わすかのようで、木の木目を生かしつつしなやかさを表現したものが多く、その美しさには目を奪われてしまう。
第1回の配信では、宮本さんの生い立ちに焦点を合わせ、木工芸という作品に魅了され、その道を歩むきっかけについて語っていただいた。
PROFILE|プロフィール
宮本 貞治(みやもと ていじ)
宮本 貞治(みやもと ていじ)

1953年京都市生まれ。

黒田乾𠮷氏(木工芸作家黒田辰秋氏〈人間国宝〉の長男)に師事。

独立後、滋賀県湖西に工房を構え、創作活動を行う。

日本伝統工芸近畿展で日本伝統工芸近畿賞ほか5回受賞。日本伝統工芸展で第50回展記念賞ほか4回受賞。伝統工芸木竹展で文化庁長官賞ほか4回受賞。その他受賞多数。滋賀県指定無形文化財技術保持者。紫綬褒章受章。重要無形文化財「木工芸」保持者(人間国宝)。

物心つく頃から工芸に囲まれた生活

誰しもが、子どもの頃に見たドラマや漫画に影響を受けて、将来はあの職業に就きたいなと思いを馳せたことがあるだろう。ところが、宮本さんの場合は少し違っていた。取材の中で、宮本さんがふと口にした「門前の小僧習わぬ経を読む」という言葉、その意味するところは何なのか。

「父親は京都の家具会社の職人で、家には小さな仕事場がありました。どういうわけか、当時、僕は幼稚園に入園していなかったので、日中に1人で遊ぶことが多かった。それでも家の向かいは、町屋の大工さん、隣は木工所で、職人さんの作業風景をひがな一日見て過ごしていました。」

子どもの頃というには幼少すぎるかもしれないが、物心ついた頃からものづくりに囲まれて生活をしていた宮本さん。「教わらずとも、この道具はこういう使い方をするものなんだなっていうのが、大体わかっていましたね」と当時を振り返った。

周りの同世代の子どもたちが戦隊モノの真似ごとをしていたとき、宮本さんは、お父さんの本物の道具を使った職人ごっこをしていたというから驚きだ。

宮本先生の作業台
宮本先生の作業台
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