「展覧会の出品者の中には、審査員の先生方の好みに合わせて作品を作っている人もいました。私はそんなこと考えたこともありません。
その時、その時に、今自分が表現したいものを入落は気にせず、出品し続けました。
僕は毎年工芸展に出展するとき、その年の代表作と呼ばれる作品を出すという強い思いがあります。かれこれ本展には41回出展していますが、どれもが代表作だと自負しています」
言うは易く行うは難しとは言ったもので、毎年新たなデザインを生み出すには、相当な引き出しや日々の着想が求められる。だが宮本さんは、デザインも素材のほうからやってくるという。
「今は、これを作りたいから良い材料がないかなと探しに行くことはありません。むしろ、材木屋さんに置かれている木々の中に、自分が作りたいものが見えてくるかどうかです。木材のほうから訴えかけてくるものが読み取れて、初めて作品にできるんです」
自然を相手にする木工だからこそ、人間の勝手な思いを木々に向けるのではなく、相手に寄り添う姿勢が必要だという。