津軽びいどろの最大の特徴は、青森の四季を映し出すその豊かな色彩にある。職人たちは、100色を超える色ガラスを自社で開発・調合し、自在に操る。これは単に顔料を混ぜるだけではない。ガラスは色(材質)ごとに熱による膨張率が異なり、その数値が揃わないと冷めたときに割れてしまう。100色以上もの色ガラスが、すべて割れずに共存できること自体が、高度な技術の証しなのだ。
この無限の色彩を器に写し取るのが、多種多様なガラス成形の「技法」である。その数は、実に9種類にも及ぶ。
メインとなるのは、遠心力を利用して模様を生み出す「スピン成形」だ。溶けた透明なガラスで色の粒を巻き取り、炉に戻して回転させると、柔らかいガラスの中で色が美しい渦を描く。さらに5〜6年の経験を積んだ職人が挑むのが、息を吹き込みながら型の中でガラスを回転させ、より精密な形を作り出す「型吹き」である。これは誰もが学ぶものではなく、「もっと上を目指したい」という意志を持つ者だけが進む、高みへの入り口だ。
そして、もっとも難しいとされるのが、型を一切使わず、職人の腕と感覚、イメージだけでガラスを成形する「宙吹き」である。北洋硝子社内では、この宙吹きを習得し、かつ自身が作った製品が市場で評価されることが、伝統工芸士になるための条件となっている。県の公式基準よりも厳しい、職人の誇りをかけた独自基準だ。
これら以外にも、ガラスの粒を埋め込んで空気の膨張で模様を作る「ピンブロー」や、大阪から受け継いだ液だれしない「醤油さし」の伝統技法など、製品ごとに最適な技法が使い分けられている。