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2022.03.02

クルエルティフリーの培養毛皮開発 オランダ発Furoid™の挑戦

Furoid™(フロイド)は、オランダを拠点とするGeneus Biotech(ジェネウス・バイオテック)の技術を応用し、毛皮の製造方法に特化した研究開発を行うスタートアップ企業だ。Geneus Biotech社の細胞農業の知見を応用し、Furoid™では動物のない細胞ベースの毛の複製方法を提供している。今回、Furoid™のCEOであるMaria Zakurnaeva(マリア・ザクルナエワ)、とGeneus Biotech最高科学責任者Sundararaghavan Pattabiraman(スンダララガヴァン・パッタビラーマン、以下スンダー)にインタビューを行った。

「培養毛皮」 

Furoid™の技術について教えてください。

マリアまず、私たちの技術を理解する上で重要なのは毛は毛包から生まれるという基本原理です。異なる細胞、種で異なりますが、基本的には毛包を作るために細胞を分化させることができれば、動物の毛包を作るために細胞を分化させることもできます。
スンダー行程としてはまず、ミンクのような毛皮を作る動物の細胞から幹細胞を採取し、特定の条件下で育てると毛包ができ、その毛包から細胞の玉のようなものが出てきます。そして培養を進めると約1000個の細胞の玉から、毛が生えたり、毛皮が飛び出したりするのです。そして、私たちは、これを実験室内で使えるようにすることを計画しています。
シンプルに言えば、髪の毛が伸びるに当たって、体内には100種類もの細胞が必要となります。そしてそのメカニズムを私たちは研究室で、同じ環境を作ることで、同じように髪を成長させようとしています。つまり、私たちの体内や動物の体内の環境を模倣し、毛包を成長させ、毛を成長させようとしているのです。
マリアよって、私たちが実現しようとしているのは単にシャーレで作られた毛皮、という訳ではなく、「培養された毛皮(Cultivated Fur)」という用語が適切だと言えます。
バイオプリントされたポリマーから成長する毛包の光画像 photo by @Furoid™
バイオプリントされたポリマーから成長する毛包の光画像 photo by @Furoid™

Furoid™は従来の毛皮と変わりない機能を持つのでしょうか。

マリア私たちは従来の毛皮の暖かさと美しさを実現することを目的としています。これらの機能はバイオポリマーを含む全てのレイヤーを編集することで追加していくことが可能であるため、今後追加していきたいと考えています。そして具体的にどういった機能性を製品に求めるかは、業界の方々との話し合いを続けながら開発を進めていきたいとも考えています。
ポリエステル製品と比較した場合、我々の開発の最も大きな利点は、マイクロプラスチックがないことです。つまり、動物にやさしいということであり、これで既に十分に良いことだと言えます。しかし我々はまだ研究開発の段階であり、まだ機能性への議論を広げるには早すぎます。プロトタイプが出来次第、実用性・機能性への言及は始まっていくでしょう。機能性の付与に関しては、従来の毛皮と比較し、ニーズに応じて開発を進めていければと考えています。
images by @Furoid™
images by @Furoid™

基本的な質問になりますが、動物の毛包と人間の毛包の違いはどういった点にあるのでしょうか。

スンダー人間の髪の毛と動物の毛の構造は組成の名前を見てみると非常に似ているものの、化学物質の量や分子レベルでは大きな差異があります。これは進化によるものですが、完全に似ていると言い切ることはできません。他方で、全く似ていないと結論づけることもできません。しかし大きな差は、人間の髪の毛は成長し続ける一方で、動物の体毛はある時点で成長が終わり、毛が抜け落ちる点にあります。犬の場合、毛が伸びはじめ、ある特定の長さに到達すると毛が抜け落ち、新しい毛が生えてくるのに対し、人間の髪の毛は切らずにいるとどんどん伸びていきます。実際に細胞を分化させる方法と混ぜる方法は、実はほぼ同じで、違うのは加える要素の違い、そして与える条件の違いです。そして先ほども申し上げたとおり、動物の細胞は人間の細胞と異なるため、同じ条件で成長するわけではありません。ですから、異なる条件を与え、時間の長さも動物と人間では変えることになります。
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#Bio Fashion
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