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2021.09.01

関真也「バーチャルファッションにおけるデザインをめぐるファッションロー」

現在、発展目覚ましいバーチャルファッション。今後さまざまな企業の参入が見込まれるこの領域だが、今までとは異なる法的課題に直面することが考えられる。
今回は、メディアコンテンツやファッションローを専門とする弁護士の関真也さんに、バーチャルでのファッションデザインに関わる法規制の基礎から、これから起こりうる法的課題、今後ファッション業界の人々がバーチャルに参入する際に意識しておくべき姿勢についてインタビューを行った。
PROFILE|プロフィール
関 真也
関 真也

関真也法律事務所 

日本国弁護士・ニューヨーク州弁護士。漫画、アニメ、映画、ゲーム、音楽などのコンテンツやファッションに加え、XR (VR/AR/MR)、VTuber、NFT、eSports、AIなど等テクノロジーが関わる分野を中心に、知的財産、契約、紛争対応、新規事業の適法性チェック等の法律業務を取り扱う。東海大学総合社会科学研究所客員講師、東京工業大学非常勤講師、日本女子大学非常勤講師。ファッションビジネス学会ファッションロー研究部会部会長。一般社団法人XRコンソーシアム社会的課題ワーキンググループ座長。日本バーチャルリアリティ学会認定VR技術者。書籍ファッションロー」(共著、勁草書房)のほか、ファッション、コンテンツ、バーチャルリアリティ等に関する執筆・講演等多数。

フィジカルとバーチャルの法律は全くの別物

まず、バーチャルでのファッションローは、これまでのファッションをめぐる法律とどのように異なるのでしょうか?
詳しくはこれからお話するとして、まずざっくりとしたイメージからお話しますね。フィジカルのファッションデザインとバーチャルのファッションデザインとでは、別々の知的財産法で保護することになります。場面に応じて考え方を使い分けるのが良いでしょう。
実用的な工業製品である衣服等のデザインと、実用目的ではなく見て楽しむためのコンテンツとでは、中心的な役割を果たす権利の種類が異なります。大雑把に言えば、前者は主に意匠権で、後者は主に著作権で、それぞれ保護されると考えられています。必ずしもあらゆるケースに当てはまる正確な区分けとはいえませんが、バーチャルファッションを考えるうえでのざっくりとしたイメージとして、下記画像をご参照下さい。
ファッション分野では、フィジカルな製品とバーチャル空間でアバターが着用するバーチャルファッションが同じデザインで提供されるなど、リアルとバーチャルが融合するケースが増えています。それに伴って、いわば知的財産領域におけるリアルとバーチャルの融合ともいうべき状況が生じてくるのではないかと思われます。つまり、従来のようにフィジカル領域とバーチャル領域とでざっくりと区別されていた意匠権と著作権の役割分担が、どんどん曖昧になってくるわけです。
バーチャルファッションから見た守備範囲の大まかなイメージ
バーチャルファッションから見た守備範囲の大まかなイメージ
たとえば、フィジカルとバーチャルで同じデザインの衣服を発表した場合、どちらの法律が適用されるのかが不明瞭となってしまう場合がありえます。デザイナーにとっては、両方の法律で保護されるならいいのですが、場合によっては両方の法律で保護されないかもしれない。フィジカルのファッションデザインをバーチャルで模倣した場合や、逆にバーチャルのファッションデザインをフィジカルで模倣した場合など、さまざまなバリエーションの問題が起こりえるでしょう。
フィジカルのファッションデザインを保護する法律について、あらためて教えてください。
物品や画像のデザインを保護する知的財産権には、いくつかの種類があります。それぞれ保護対象や特徴に違いがあり、守ろうとするデザインに応じて使い分ける必要があります。
デザインを保護する知的財産権の保護対象と特徴
デザインを保護する知的財産権の保護対象と特徴
まずフィジカルな実用品のデザインの保護から考えると、最初に大事になるのが意匠権です。フィジカルな衣服は身に着けることで体を隠す、覆って守るという機能を備えているため、基本的には実用品として扱われます。
「意匠権」とは、普段みなさんが買って着るような洋服などの、実用的な工業製品のデザインを保護するものです。ただ、意匠権の場合は登録までに通常半年以上かかるため、流行にあわせた展開をされているブランドの場合は出願・登録が追いつかないという現状があります。
一方で「不正競争防止法2条1項3号」という、形状・模様・色彩・光沢・質感などの商品の全体的な形態を保護するための法律があり、これは登録不要で市場に投入されてから3年間は保護される仕組みになっています。ファッションデザインの場合は、これで保護しているケースが一番多いですね。ただし、商品の全体的な形態が実質的に同一の場合に限って侵害が成立するとされているため、保護できる範囲が狭いという特徴があります。
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