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【日本未上陸】トルコの職人技に魅せられて:古代ジュエリーをモダンに昇華させる「クレオパトラズ・ブリング」

2024.12.26
美術館の古代ジュエリーを思わせるアンティーク調のデザインと、職人の手仕事が光る「クレオパトラズ・ブリング(Cleopatra's Bling)」。
オーストラリア出身の設立者兼デザイナー、オリヴィア・カミングス(Olivia Cummings)が2014年に創設したこのブランドは、地中海・中東の文化遺産と普遍的な美、そして故郷オーストラリアの豊かな自然からインスピレーションを得て、日常に彩りを添えるモダンなジュエリーを生み出している。
18Kゴールドメッキ、スターリングシルバー、宝石、緻密なビーズ細工、エナメルなど、細部まで感性に語りかけるコレクションは「時代を超えた物語を内包する絵画」と評され、職人たちが情熱を注ぎ込んだ作品は、時を重ねるごとに美しさと価値を増し、装飾品の域を超えて、感情と記憶を呼び覚ます芸術品となるよう創造されている。
「クレオパトラズ・ブリング」設立のきっかけとなった初めてのトルコ訪問から、現地での修行、創作プロセスまで、ジュエリーへの思いをオリヴィアに聞いた。

PROFILE

オリヴィア・カミングス(Olivia Cummings)

クレオパトラズ・ブリング設立者兼デザイナー
メルボルン大学で芸術学位を取得し、その後パリ政治学院で言語(フランス語、ドイツ語、アラビア語)を修了。パリのINSEECでブランド・マネジメントに焦点を当てた修士課程を修了した後、インスタンブールに移住して職人からジュエリー制作を学んだ。2014年に故郷メルボルンで、長年の夢であった自身のブランド「クレオパトラズ・ブリング」を設立。

失恋の経験から、イスタンブールへ

はじめに、ブランドの立ち上げに至った経緯を教えてください。
20代前半の大きな失恋がきっかけで、わずか200ユーロと「クレオパトラズ・ブリング」というジュエリーブランドを創設する夢だけを胸に、私はイスタンブールへと旅立ちました。
12年前、パリからイスタンブールへの移住を決めたのは、格式あるブランドの設立を目指してではありません。古代ジュエリー制作への純粋な情熱に導かれてのことでした。
22歳で初めて訪れたイスタンブールは、私の人生の大きな転換点となりました。特にグランドバザールの活気や、地元のジュエリー職人たちの手仕事に心を奪われたのです。
現地の文化に深く触れ、トルコ語を習得し、技術を磨いていくなかで、自分が本当に身につけたいと思えるジュエリーを作りたいという思いが、自然とブランドの誕生へとつながっていきました。
人生を変えるきっかけとなったインスタンブールへの訪れ、もっとも印象に残っていることは何ですか?
イスタンブールに息づく文化に心を奪われた感覚は、今でも鮮明に記憶に残っています。街に溢れる色彩や音、そしてトルコのジュエリー職人たちが見せる卓越した技に、深い感銘を受けました。
特にグランドバザールは、職人たちがその技と物語を共有する、まさに宝の宝庫でした。
創作のインスピレーションを湧き立たせてくれる特別な場所です。アンティークショップで古代文明について語り合った時間は、私の好奇心を刺激し、創作への情熱をより一層掻き立ててくれました。
インスタンブールでのジュエリー制作の修行はいかがでしたか?
トルコでの修行は、私の創作の礎となる貴重な経験でした。特に、蝋を彫刻して複雑なデザインを作り、それを金属に鋳造する古代の技法「ロストワックス鋳造」との出会いは、大きな転機となりました。
この技術は、トルコのジュエリー職人たちが紡いできた豊かな歴史と深く結びついています。制作過程は瞑想的でリズミカル、手作業ならではの魅力と、近道を許さない厳格さに強く惹かれました。
この職人技へのこだわりこそが、私たちのジュエリーを特別なものとし、伝統に根ざした独自性を生み出しているのだと考えています。

職人の手から生まれる、12ヶ月の物語

「クレオパトラズ・ブリング」のコンセプトや美学について教えてください。
「クレオパトラズ・ブリング」は、モダンなデザインと古風な雰囲気を融合させた独特の美学を持っており、主にゴールドに色鮮やかなストーンやビーズ、倫理的に調達された素材を使用しています。
古代エジプトのモチーフや神話にインスパイアされた作品が揃っています。具体的なエピソードについても教えてもらえますか?
私は、イスタンブールやナポリの建物に刻まれたテクスチャーやモチーフ、古代のシンボル、装飾の芸術など、細かなディテールからインスピレーションを得ています。
たとえば、バレエに着想した最新コレクション“BALLET OF GEOMETRY”では、1912年に生まれたアルノルト・シェーンベルクの“Moonstruck Pierrot”からイメージを膨らませて、星を描いた作品などがあります。
私たちのジュエリーが、着用者に深いレベルで響き、好奇心を掻き立て、自己表現を可能にすることを願っています。ジュエリーは非常に個人的なものであり、着用者の物語を語り、生涯を通じて共に歩む家宝のような存在になると信じています。
新コレクションの制作プロセスと、クリエイティブな面での取り組みについてお聞かせください。
私の創作プロセスは、常に丹念なリサーチとインスピレーションの収集から始まります。現在のムードボードには、シチリアの温かな台所の風景や、アンティークのレースカーテン、そして心惹かれるヴィンテージの逸品たちが並んでいます。
デザインはすべて手作業で個別に創り上げていきます。鋭い工具やヒートワンドを駆使して、蝋を一つ一つ丁寧に彫刻していくのです。
コレクションの完成までには約12ヶ月を要しますが、コンピューターで生成された無機質なデザインではなく、手作りならではの遊び心と素朴な魅力を大切にしています。
このプロセスに決まった順序はありません。時にはデザインのアイディアが先行することもあれば、印象的な石との出会いから新しい作品が生まれることもあります。
また、クリエイティブチームとの密な対話を重ねながら、コンセプトを練り上げ、作品に込めるストーリーを紡いでいきます。
ブランド設立までの経験を、現在の運営にどのように生かされていますか?
ブランドを立ち上げる前に、私は「本物であること」と「つながり」の大切さを深く学びました。
職人たちとの直接的な関係を築くことで、私たちの作品に不可欠な伝統技法を守り継ぐことができています。旅を通じて出会った素晴らしい職人たちは、今なお私に大きなインスピレーションを与え続けてくれます。
これらの関係性を大切にすることで、品質や職人技において妥協することは決してありません。
ブランドを設立されてからの10年間で、もっとも挑戦的だった経験をお聞かせください。
「クレオパトラズ・ブリング」の歩みの中で、もっとも大きな試練のひとつは新型コロナウイルスの影響でした。
しかし、この困難な時期は、ビジネスモデルを見直し、お客様との新しいつながり方を模索する機会ともなりました。
オンラインプラットフォームの効果的な活用や、デジタルストーリーテリングを通じたコミュニティの強化など、多くのことを学ばせていただきました。この経験は、柔軟な対応の重要性を教えてくれただけでなく、ブランドをより強靭に、そしてお客様とより深いつながりを持つ存在へと成長させてくれました。
また個人的には、大切な職人コミュニティやチームメンバーと離れて過ごさなければならなかったことが、コロナ禍においてもっとも心に残る試練だったと思います。

不完全さの美を受け入れる“侘び寂び”の概念

未進出の日本市場について、どのような印象をお持ちでしょうか?
私は日本の美意識に深い敬意を抱いています。特に、洗練された簡潔さへのこだわり、細部への繊細な配慮、そして不完全さの中に美を見出す「侘び寂び」の哲学に強く魅了されています。
日本の方々が職人技に示される深い理解と評価は、私の価値観と強く共鳴するものです。特に、日本のジュエリーに見られる精緻な技巧や、陶芸、織物といった伝統工芸に大きな関心を寄せています。
そして、素晴らしい和食文化にも心を奪われずにはいられません。
最後に、「クレオパトラズ・ブリング」の展望について教えてください。
今後はデザインの可能性をさらに広げるため、専用スタジオの設立も視野に入れていますが、現在は自宅での制作がもたらす親密な創作環境を大切にしています。
また、ブランドは国際的な広がりを見せており、スペインやイタリアでの新たなプロジェクトも進行中です。これにより、デザインとブランドのクリエイティブディレクションにより一層注力でき、豊かな物語性を持つコレクションの創作が可能になっています。
私の目指すところは、人々の心に永く寄り添うタイムレスな作品を生み出し続けること。そして、職人技と真正性を大切にする確かなコミュニティを育んでいくことです。

Text by ELIE INOUE

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