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【日本未上陸】オランダ発「clōw atelier(クローアトリエ)」とは? “髪を飾るジュエリー”として注目のヘアアクセブランド
有機的なラインとミニマルな造形、身体に調和する彫刻的フォルムを特徴とするヘアアクセサリーブランド「clōw atelier(クロー アトリエ)」。オランダに拠点を置く設立者エメ・メデンス(Aimée Meddens)の「小さなディテールが全体の印象を変える」という信念のもとに誕生したブランドだ。
競技馬術で培った身体感覚と規律、そして内に秘めていた創造性を形にし、より個人的で身体に近い存在としてのヘアアイテムを生み出している。ヘアアクセサリーの新たな分野を開拓する彼女に、創作プロセスからデザイン思想に至るまで詳しく聞いた。
PROFILE

エメ・メデンス(Aimée Meddens)
clōw atelier 設立者
情熱に導かれ、競技の世界から創造の現場へ
強く主張せずとも印象に残るデザインがある。ほんのわずかな違いやさりげないディテールが、装い全体の雰囲気を大きく変える。「clōw atelier」は、まさにその感覚から生まれたブランドだ。設立者のエメ・メデンスはオランダ出身。幼少期から競技馬術に打ち込み、長年にわたって身体と規律性を鍛え上げてきた。その経験は、現在の制作においても確かな軸になっているという。「集中力や精度に対する感覚は、あの頃に培われたものです」と語る彼女は、一方で法学を専攻するというアカデミックな道も歩んできた。
しかしその過程で、内側にある創造性が十分に発揮されていないという感覚が常にあった。やがて競技の世界から距離を置いたとき、彼女が立ち返ったのは、“創る”というシンプルな衝動だった。

「ある時、自分自身の何かを築くことに完全にコミットする決断をしました。それが『clōw atelier』の始まりであり、意図を持って創造し、個人的かつ洗練されたものを形にするための出発点となりました」
ブランド名は、母クロエ(Cloé)の名に由来する。「アトリエ」という言葉が示すように、制作は常に意図と熟考のもとに進められる。大量生産ではなく、一点一点に向き合う姿勢。その創作プロセスそのものが、ブランドの核を支えている。
“髪”を起点に生まれた、新たな造形言語
幼い頃からファッションに強い関心を寄せていたエメにとって、洋服やバッグ、ジュエリーなど、題材の選択肢はいくつもあったはずだ。その中で、あえてヘアアクセサリーに着目した理由は明快だった。「わずかなデザインによって装い全体を変える力があるジュエリーに惹かれてきました。ジュエリーがすでに豊かな歴史と表現を持つ一方で、洗練され、意図が感じられるヘアアクセサリーが欠けていると感じたのです」
この思想は代表作にも表れている。人気作のひとつ「The Knot French Hairpin」は、細長いシルエットと流れるような曲線が印象的なヘアピンで、静かなラグジュアリーと実用性を両立した一本。髪に自然に沿いながら、さりげなく全体の印象を引き締めてくれる。


ブランドを象徴する「The Knot」は、その名の通り結び目のような彫刻的フォルムが特徴で、ミニマルでありながら確かな存在感を放つシグネチャーピース。装いに強い輪郭を加えながらも、過度には主張しないバランス感覚に「clōw atelier」らしさが表れている。


さらに「The small Knot」は、その造形をより繊細なスケールへ落とし込んだモデルで、日常に取り入れやすい軽やかさが魅力。ブランドの彫刻性と身体性を、より親密な形で感じさせる存在だ。


有機的なラインに、削ぎ落とされたミニマリズム。だが、彼女が注視しているのは造形美だけではない。重要なのは、いかに身体と調和するかという点にある。
「制作の多くは、身に着けたときのバランスを整えることに費やされます。比率や重さ、配置を繰り返し検証し、細部を調整していきます。どれだけ視覚的に強いフォルムであっても、髪の中で自然に収まり、その動きと共鳴しなければ完成とは言えませんから」
着想は、しばしば感覚として突然訪れるという。「形そのものというより、感覚として現れることがあります。時には夢の中で見たフォルムが頭に残ることも」。そうしたイメージはドローイングへと変換され、物理的な検証を経て、最終的に“そこにあるべきものとして自然に存在する状態”へと磨かれていく。
思想を支える、素材選びと制作背景
ブランドのコンセプトである「自己感覚を高める」という言葉も、抽象的なスローガンではない。控えめなものから存在感のあるものまで、デザインには意図的な振れ幅が設けられている。「その日の気分や状態に応じて、自分の一面を選び取れるようにしたい」と語るエメ。フォルムは明確でありながら過剰にはならず、個人の内面と共鳴するための装置として機能する。素材選びにも同様の思想が貫かれている。
「clōw atelier」が主に用いるのはエコブラスだ。公式サイトでは、無駄を減らしながら耐久性を高めるためにデザインを継続的に見直していること、さらに各ピースを少量生産・ハンドメイドで仕上げていることが示されている。価値観を共有するアトリエと協働し、責任ある生産とクラフツマンシップを重視する姿勢も明記されている。
また、ゴムを用いたモデルには交換可能な構造が採用され、長く使い続けられるよう工夫されている。使い捨てではなく、時間をともにするものとして成立させたいという視点は、プロダクトだけでなくブランド体験全体に及んでいる。

時間をかけて築くデザインの価値
スピードと過剰が支配する現代のファッションシーンにおいて、「clōw atelier」の存在はむしろ対照的だ。新しさを次々と提示するのではなく、一つひとつのデザインが認識され、理解される時間に目を向けている。「人々がデザインを理解し認識する時間を大切にしたいのです。それが強固な基盤を作るから。スローダウンするのではなく、一貫性と意図を持って築いていくことが重要です」
小さなディテールが、髪を通して全体の印象を変える。そんな彼女の信念は、単なる装飾を超えて、自己のあり方や世界との距離をわずかに更新するものなのかもしれない。「clōw atelier」のピースは、その変化にそっと寄り添いながら、日常の中へ静かに溶け込んでいく。そうした静かな確信が、この小さな造形物たちに確かな強さを宿らせている。
Text by ELIE INOUE













