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【日本未上陸】古い着物から新たな服を ニューヨーク発のアップサイクルブランド「コンシダード・オブジェクツ(Considered Objects)」

2025.02.07
メンズライクな白いシャツには、繊細な花模様のアップリケが施されている。その花は、実はビンテージの着物生地を組み合わせて生まれたものだ。
ニューヨークを拠点に、アップサイクルな商品を手掛けるアパレルブランド「コンシダード・オブジェクツ(Considered Objects)」。ブランドを率いる日系アメリカ人のサラ・サカナカさんは、カリフォルニアで移民一世の両親のもとに生まれ育ち、ニューヨークにあるFIT(ファッション工科大学)を卒業した経歴をもつ。
イミテーション・オブ・クライスト(Imitation of Christ)やフォクシーなどさまざまなブランドで経験を積んだあとに、コロナ禍を経て自身のブランドをローンチした。
「日本の文化遺産である着物を守りたい」という大きな使命感をもって、ハンドメイドに重点を置いた服作りを続けている。
サラさんに、マンハッタンにあるアトリエで話を伺った。

PROFILE

サラ・サカナカ(Sara Sakanaka)

コンシダード・オブジェクツ創業者兼デザイナー

日本に住む祖母から裁縫を習い、デザイナーの道へ

サラさんがデザイナーを志したきっかけを教えてください。
私はクリエイティブな家庭で生まれ育ちました。母はグラフィックデザイナーを経て画家になり、父は建築家で、日本に住む祖父母はアートの先生でした。家ではいつも誰かが何かを作っている環境だったので、ものづくりがとても身近にあったんです。
デザイナーになりたいという考えは、私の生い立ちや家族、ことに祖母からきていると思います。祖母は、私の人生において大きなインスピレーションを与えてくれた存在です。
子どもの頃は、よく祖母の家で夏を過ごしていました。数年前に他界したのですが、彼女が自宅で着物を着て過ごす様子や、着物をリサイクルした布巾や人形を作っているのをよく目にしていましたね。
祖母からは裁縫も習いました。自分の手でものを作る喜びは祖母から教えてもらったように思います。それらの経験が、デザイナーを志すきっかけになりました。
着物を用いて服を作るという着想はどこから?
FITを卒業したあと、いくつかのアパレルブランドでインターンシップを経験したのですが、2020年のコロナ禍で仕事が激減してしまったんです。さらに、同じ年に祖母も亡くなりました。
葬儀のために日本に行くこともできず、もちろん旅行もできない。仕事もできず家にいるしかなかった状況が、結果的に服作りを始めるきっかけになりました。
ある日、クローゼットの掃除中に、祖母の形見として母が着物をたくさん送ってくれたことを思い出しました。
眺めているうちに着物を分解してみたくなり、それでシャツを作ったんです。型紙を見よう見まねで作り、自宅のミシンでシャツを縫ったのを覚えています。
制作には2ヶ月ほどかかりましたが、作業をしているうちに気力が湧いてきたんです。ある意味、癒やしのような時間でしたね。
出来上がったシャツを着て友人に会ったら、「サラ、すごく特別なシャツだよ。なんで売り出さないの?」と言われて。道行く人に呼び止められて、美しいと褒められたこともありました。
それが自信になり、服を自作してはInstagramに投稿するようになりました。

着物の染みも味わいあるキャラクターに

服作りに使う着物は日本で手に入れたのですか?
はい。着物はすべて日本製で、日本の知人や家族から譲り受けたものか、アンティークショップで購入したものを使っています。それを、ニューヨークの工場から調達した生地と組み合わせて服を作ることが多いですね。
アパレル業界に携わるようになってからずっと、再生テキスタイルやオーガニックコットン、ウールなど、取引先の工場でデッドストックになった生地を集めてきたんです。
布で花びらを作ったコサージュもシグネチャーになっていますが、それも着物の生地を使っているんですね。
はい、すべて着物の端切れです。草木染めで生地の染色を行うこともあります。
古い着物なので染みがついている場合もありますが、そのまま使うことも少なくありません。日本の方々は生地の染みを嫌がるのですが、私にはそれも味わいあるキャラクターに見えるんです。
サステナブルについてのサラさんの哲学を教えていただけますか? 
サステナブルなファッションとは、自分にとって意味のあるものだと感じられる服を大切に着ることだと思います。
私は祖母の着物を扱うようになって初めて、着物は日本の美しい文化の一部であるだけでなく、家族の歴史や家宝とも言えるような「思い出深く意味のあるもの」だと気づいたんです。
服がただの品物ではないと思えるようになったとき、服をもっと大切にしたいと思うようになりました。
もちろん持続可能な素材を使ったり、リサイクルされた衣服を購入することもひとつですが、それよりもどうすれば無駄な消費を減らせるのかを考えたり、自分にとって意味のある服とは何かを考えることが大事だと思うんです。
服がもつストーリーを共有できたり、歴史の一部と結びつけられたりすると、その服を本当に大切にしたいと思うものです。

「ものを大切に使う」日本古来の考え方がブランド名の由来に

サラさんは日本文化にどのような印象をもっていますか?
歴史を守り儀式を重んじる日本文化が本当に大好きです。特に日本の織物文化に魅了されてきましたね。祖母の着物姿がとても素敵で、私も七五三や高校の卒業式では着物を着用しました。
だからこそ、日本の着物文化をどうやって守っていくかということに、ずっと興味がありました。私の使命は、着物の再利用によって、より多くの人にこの美しい日本の織物に触れてもらえるようにすることだと考えています。 
ブランド名の由来を教えて下さい。
母がいつも私に伝えてくれていた言葉から名付けました。たとえば私が片付けをしていなかったら、母は私に「サラ、ものを大切にしてね。大切に使ったものは100年後に魂が宿るのよ」と言いました。
日本の神や妖怪として描かれる「つくも神」ですね。
だから、ものが壊れても買い直すのではなく、修理して使うように言われていたんです。そんなふうに魂が宿ると考えてものを大切にする考え方は、結果的に環境について考慮していることにもなりますよね。
自分の身近なものに考慮し、環境に考慮する。この考え方が好きで、「Considered Objects(考え抜かれたものたち)」というブランドネームをつけました。
最後に、今後のブランドの展望を教えてください。
展開する作品の幅を広げていきたいと考えています。今、ブライダルのクライアントとカスタムメイドの作品に取り組んでいるのですが、とてもやりがいがあり面白いんです。
また、着物から作った花のアクセサリーや男性用のブートトニア(胸に飾る花)など、服だけではない着物由来のアイテムも増やしていきたいですね。
最近はポップアップなどの対面イベントも行っているので、オンラインだけでなく、より多くのお客さまに直接会って話す機会を設けていきたいです。

Text by 黒部エリ

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