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アパレルの現場から生まれたクラフトビール DD4Dが描くローカルとカルチャーの交差点

2026.03.04
地方都市・松山に、少し風変わりなクラフトビールの現場がある。アパレルショップとして始まり、今では国内外からビールファンやクリエイターが訪れるDD4D BREWING(ディーディーフォーディー・ブリューイング)だ。ここでは、服を見るために訪れた人が自然とビールを手に取り、ビールを目当てに来た人がいつの間にか服に袖を通している。
ファッションとクラフトビール。ジャンルとしては離れているように見える両者が、無理なく同じ空間に共存しているのがDD4Dの特徴だ。

PROFILE

山之内 圭太(やまのうち けいた)

株式会社JAPANDEMIC COMPANY 代表取締役CAPTAIN

1989年松山市生

大手メーカーで経理を勤めた後、学生時代に海外で経験したビール醸造のことが忘れられず、2016年にクラフトビール醸造家に転身。

2019年に地元でDD4D BREWINGを立ち上げ、国際色豊かな仲間たちと共に、樽や缶ビールを全国・海外に展開。業界を超えたコラボも多数。

「出会いや偶然に感謝しながら、無理せず自分達のペースでやりたいことに挑戦していきたい」と常々考えている。

アパレルの現場から始まったクラフトビールという選択

DD4Dの原点には、家業として営まれてきたアパレルの現場がある。ただし、服だけでなくビールも好きだからつくり始めた、という単純な話ではない。
店舗スペースが広く、在庫を抱えすぎてしまう。余った服は翌年セールに回り、また仕入れをする──そんな循環に違和感を覚えたことが、一つの転機になった。物理的に店を半分にし、空いたスペースをどう活用するか。その答えの一つが、クラフトビールだった。
重要だったのは、家業と資本関係を完全に切り分け、自分自身の会社として立ち上げたことだ。親の会社と地続きで事業を始める選択肢もあったが、それはしなかった。「仕事は仕事」と割り切り、独立した立場でリスクを背負う。全財産を投じ、銀行から借り入れをして設備を入れるという決断は、ビールへの純粋な熱量がなければできなかったはずだ。

飲みながら服を見るという体験が生む新しい接点

DD4D BREWING & CLOTHING STORE
DD4Dの店舗では、昼間からビールを飲むことができる。営業時間は11時から20時。服屋としてはやや変則的だが、ビールが加わることで空間の性質が変わる。
「飲みながら服を見る」という体験は、想像以上に自然だ。カフェ併設のショップは珍しくないが、そこにビールがあることで場の温度が少しだけ緩む。買う・買わないの判断も含めて、すべてがフラットになる。
ビール目当てで訪れた人が服を買い、服を見に来た常連客がビールを飲んでいく。DD4Dでは、そうした行き来が特別な演出なしに起きている。狙って融合させたというよりも、現場で必要だったものを積み重ねた結果、自然とそうなったという感覚に近い。

柑橘と実験精神が形づくるDD4Dのビール哲学

冷凍庫には愛媛県産の柑橘がたくさん準備されている
ビールづくりの面でも、DD4Dは実験的だ。
愛媛という土地柄、柑橘は欠かせない要素の一つ。伊予柑や河内晩柑など、地元の素材を積極的に取り入れ、業界内でも「柑橘のビールといえばDD4D」と認識される存在になっている。
レシピ設計は、完成形の味を頭の中で描くところから始まる。甘さ、苦さ、香り、アルコール度数。それらを数値と工程に落とし込み、再現性を高めていく。日本酒酵母や木材、副原料など扱いの難しい素材にも積極的に挑戦し、「難しいからやらない」という判断はしない。どうすれば成立するかを考え続ける姿勢が、ビールの幅を広げてきた。

ビールを起点に広がるカルチャーの輪DD4Dの活動は、ビールに留まらない。

DD4Dメンバーでの集合写真
小説、映画、ゲーム、ファッションブランドなど、異分野とのコラボレーションを数多く行ってきた。物語と味をリンクさせたシリーズや、二次元コードからゲームに接続するラベルなど、ビールを「体験の入り口」として設計する発想は、アパレル出身ならではのものだ。
ラベルデザインやスタッフのユニフォームにも一貫した美意識がある。作業着でありながら、街に出ても違和感のない佇まい。かっこよさを年に一度、きちんと形に残すための集合写真。そうした細部が、ブランドとしての輪郭を強くしている。

ローカルから始まる、軽やかな広がり

終始笑顔で案内してくださった山之内さん。そのお話ぶりからは、心から楽しみながら「ものづくり」に向き合っている情熱が伝わってきた。
松山という地方都市で事業を続ける理由も、DD4Dにとっては現実的だ。家賃や固定費が抑えられ、物流面でも大きな不利はない。松山空港から東京までは1時間強。距離は、障壁ではなくなっている。
のんびりした環境で、必要なときにしっかりと走る。そのリズムが、結果的に持続可能なものづくりにつながっている。DD4Dのビールは、派手な主張をするわけではない。だが、服と同じように、つくり手の思想や背景をまとっている。松山の一角から生まれたそのカルチャーは、今日も静かに、しかし確実に広がり続けている。
DD4Dがつくっているのは、単なるクラフトビールでも、アパレルの新領域でもない。服と同じように、背景や思想、つくり手のスタンスまで含めて味わわれる「カルチャーとしてのプロダクト」だ。
地方に拠点を置きながら、分野を軽やかに横断し、実験と対話を繰り返す。その姿勢そのものが、DD4Dというブランドを形づくっている。松山というローカルから生まれたこの現場は、これからもビールを起点に、新しい交差点をつくり続けていく。

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