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出版社がリカバリーウエアを作る!? 宝島社はなぜ一般医療機器を1万円以下で実現できたのか?

2026.08.26

宝島社はなぜ一般医療機器を1万円以下で実現できたのか?

出版社である宝島社が、一般医療機器として届出したリカバリーウエア「Recoverypro Lab.(リカバリープロ ラボ)」を開発し、大ヒットさせている。機能性を追求すれば高価になるのが当たり前の市場で、なぜ同社は上下セットで1万円以下という価格を実現できたのか。その背景には、雑誌づくりで培われた、既成概念にとらわれない戦略があった。
今回、宝島社 コンテンツ&プロダクツ局 局長の藤定修一さんへ取材し、異分野への挑戦を成功に導いた開発秘話を伺った。

PROFILE

藤定 修一(ふじさだ しゅういち)

宝島社 コンテンツ&プロダクツ局 局長
1999年に宝島社入社。『宝島』編集部、メンズファッション誌『smart』編集部を経て、2007年11月よりブランドムック(ブランドの特集本に、ブランドアイテムが付録についた本)の編集部の立ち上げ時の編集長に就任。

2024年9月からはコンテンツ&プロダクツ局局長として、グッズ付き本の編集部とリカバリーウェアの企画を統括。出版社ならではの企画・編集力を生かし、「読者の毎日の暮らしをより豊かにするアイテムと誌面」の開発に日々取り組んでいる。

出版社が挑んだ異業種参入! きっかけは読者の悩みだった

出版社・宝島社が一般医療機器のリカバリーウエア市場への参入に踏み切った背景には、雑誌の付録やムック本で培った企画開発力があった。
同社には、読者の悩みを解決する機能性商品を企画・開発する部門がある。コンビニコーヒーを長時間保温するカップコーヒータンブラーや深睡枕など、これまでも数々のヒット商品を生み出してきた。その企画リストの一つにあったのが、当時はまだニッチな存在だった「リカバリーウエア」である。
開発責任者の藤定さんは、同市場参入のきっかけをこう語る。
「もともとリカバリーウエアは高価格帯の商品なので、書店で販売するのは難しいと考えていました。そこで、自社ECサイト『宝島チャンネル』の専売商品にすれば、サイズ展開にも対応できると考え、そこから開発がスタートしました」
書店販売という既存の枠にとらわれず、EC限定という形を選んだことが、後に市場を驚かせる商品の実現への第一歩となった。

一つの確信がプロジェクトを動かす

開発当初、リカバリーウエアの認知度は現在ほど高くなく、社内でも「知る人ぞ知る」存在だった。それでも藤定さんは、展示会で見つけた製品を実際に試し、その効果に強い手応えを感じたという。
「実際に着て寝ると、いつものTシャツで寝た翌朝とは体感がまったく違いました。そのときに、『これは良い商品になる』と確信したんです」
市場がまだ成熟していないなかでも、自身の体感を信じて商品化を決断した。その判断を支えたのは、ファッション誌の編集者として培ってきた「良いものを見極める目」だった。

上下1万円以下を実現した「サービス企画」という発想

最大の特徴は、一般医療機器でありながら、上下セットで1万円を切る価格を実現したことだ。その背景には、この製品が自社ECサイト「宝島チャンネル」の会員向けサービス企画として始まった経緯があった。
「もともとは宝島チャンネルの会員の方に向けたサービスでした。利益よりも、会員の方に喜んでいただくことを優先していたので、本当に利益は少なかったんです」
その結果、上下セットで約8,000円(本体3,990円×2)という価格を実現した。利益を追うのではなく、多くの人に試してもらい、その良さを実感してもらうことを優先した戦略が、認知拡大につながった。
「Recoverypro Lab. 疲労回復ウェア 上下セット(半袖・ショートパンツ)」9,240円(税込)
後の一般販売で価格は若干見直されたが、徹底したコスト管理で現在も手頃な価格を保っている。出版社ならではのスケールメリットが価格競争力の源泉だ。

「効果」と「着心地」を両立する試行錯誤

低価格ながら、本製品は一般医療機器として必要な品質を満たしている。その裏には、妥協を許さない開発プロセスがあった。体から放出される遠赤外線を、セラミックを練り込んだ繊維が吸収・輻射することで、血行を促進し、疲労回復を促す仕組みだ。
繊維に練り込まれたセラミックの効果によって、遠赤外線を輻射し血行促進効果が生まれる
この効果を科学的に証明するため、開発チームは完成した製品ごとに臨床試験を実施した。その結果、統計的な有意差が認められないものについては、商品化しなかった。
「生地の段階ではなく、製品の形にしてから臨床試験にかけます。どんなに風合いが良くても、きちんとした効果が認められなければ商品にはしません」
臨床試験には多額の費用がかかり、不採用となった試作品のコストも開発費に積み重なる。しかし、多くの試作を前提とした商品開発は、付録開発で培った宝島社の強みでもあった。
こだわったのは機能性だけではない。敏感肌の人にも心地よく着られるよう、10種類以上の生地サンプルを取り寄せ、肌触りや風合いを徹底的に比較した。毛玉ができにくくても着心地が損なわれる素材は採用せず、効果と快適性の両立を追求した。

顧客の7割は女性! 「ファッション誌のDNA」が生むデザイン性

初の実店舗販売は丸善丸の内本店でのポップアップだった。当初は「認知度が低いので売れないのでは」と考えていたが、予想に反して大ヒットした。「この価格なら試したい」と、多くの来場者が商品を手に取った。
購入者の7割以上が女性だったことも特徴だ。『smart』編集部、ブランドムック出身の藤定さんは、スタイリストやデザイナーなどファッションのプロの意見を取り入れながら、女性に受け入れられやすいカラーやデザインを追求した。さらに女性誌編集長や読者組織の声も商品開発に反映し、寝間着に見えないデザインへと仕上げている。
ポリエステル80%、綿20%のなめらかな生地で快適な着心地を実現。「Recoverypro Lab. 疲労回復ウェア 半袖 ユニセックス」4,620円(税込)
ゴム入りのウエストでも締め付け感はなく、ポケットもあるため機能性は十分
「宅配便が来てもそのまま対応できますし、ワンマイルウエアとして近所まで出掛けることもできます。そうしたデザイン性が、他社との差別化につながっていると思います」
部屋着と外出着の間を狙ったデザインは、忙しい現代女性のライフスタイルにもマッチした。ファッション誌づくりで培った知見が、リカバリーウエアの価値を新たな領域へと広げている。
外出でも着用できるデザイン性で、リカバリーウエア=寝間着という印象も払拭

より身近な疲労回復ウエアに

「365日、昼も夜も着ています。もうこれなしの生活には戻れません」と藤定さんは笑う。その言葉には、自社製品への確かな手応えがにじむ。
「宝島社には、良い本や良い作品を世に広めたいという思いがあります。このリカバリーウエアも、私たちにとってはそれと同じ考え方なんです」
価格を理由にリカバリーウエアの購入を諦めていた人にも、その価値を届けたい。Recoverypro Lab.の挑戦は、休養や健康をより身近な習慣へと変えていく可能性を秘めている。

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