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1mm以下で“血行促進”を実現──MTG「VITALTECH」8年開発の舞台裏

2026.02.09
美容・健康機器メーカーのMTGが展開するリカバリーウエアブランド「ReD(レッド)」。その中核技術である「VITALTECH(バイタルテック)」は、8年もの歳月をかけて開発された特殊繊維だ。
2022年の法改正を好機と捉え、1mm以下の極薄生地でも高度な血行促進などの効果効能を実現した背景には、素材選定から製造工程に至るまでの緻密な計算と、多くの技術的障壁を乗り越える開発チームの尽力があった。今回、MTGのVITALTECH開発担当の高椋皓一さん、同社ブランドマネージャーの竹中淳也さん、そして同企画の石津亮さんへの取材を通じ、同技術の開発ストーリーと革新に迫る。

PROFILE

高椋 皓一(たかむく こういち)

VITALTECH事業支援本部 学術企画課 リサーチラボグループ

PROFILE

竹中 淳也(たけなか じゅんや)

ReD VITALWEARブランド本部 本部長

PROFILE

石津 亮(いしづ りょう)

ReD VITALWEARブランド本部 マーケティング部 商品企画グループ

法改正を見据えた参入戦略

「VITALTECH」の開発がスタートしたのは2016年に遡る。8年の開発期間を経て、2023年12月に、一般医療機器としての届け出基準をクリアする製品が誕生した。
開発当初の課題は「血行促進」を標榜する製品に明確な法的定義が存在しなかったことだ。当時、一般医療機器として血行促進効果を謳えるものは、小豆パックなどで患部を温めるような「温熱用パック」に限定されていた。衣服そのものが血行を促進するという概念は、法的な枠組みの中に存在していなかったのだ。
商品企画を担当した石津さんは、明確な基準が存在しないなかで製品化することに強い葛藤があった。同社はEMS機器「SIXPAD(シックスパッド)」などでリカバリーウエアを展開していた実績があるなかで、エビデンスが不明瞭なまま新技術を市場に投入することには大きなリスクがあった。
転機が訪れたのは2022年10月11日だ。実に42年ぶりとなる家庭用医療機器の新カテゴリーとして、「家庭用遠赤外線血行促進用衣」が新設された。これにより、遠赤外線を放射する衣類が医療機器として認められるための、明確な定義と基準が誕生した。
明確化された基準に確固たる法的根拠とエビデンスを持って参入する。この経営判断が、後の「ReD」ブランドの信頼性を支える基盤となった。

24時間365日を支える1mm以下の極薄生地への挑戦

インナーウエアとして着用することで、効果をより実感できるものに
「ReD」が市場に提示した最大の特長は、生地の圧倒的な「薄さ」にある。既存のリカバリーウエア市場では、スウェットやパジャマが主流で、上下セットで数万円という高価格帯が一般的だった。これに対し、MTGは「1mm以下」という極限の「インナーウエア」を選択した。
ReD バイタルテック V ネックインナー半袖(⼀般医療機器) 3,960円(税込)
高椋さんは、この戦略を「24時間365日の着用を実現するため」と語る。厚手のウエアでは着用シーンが限られてしまうが、薄手のインナーであれば、スーツの下やカジュアルウエアの下にも着用することができる。ファッションを邪魔することなく、生活の中に溶け込む形で健康をサポートする。それが「ReD」の目指したリカバリーウエアのあり方だった。
しかし、生地を薄くすることには技術的な困難があった。一般的に遠赤外線の放射効果を高めるためには、繊維に練り込む鉱石の量を増やすしかない。だが、糸を細くすればするほど、鉱石を練り込む物理的なスペースは失われていく。1mm以下の薄さで、一般医療機器としての基準を満たす十分な効果を発揮させる。この薄さと機能性の両立こそが、開発チームが直面した最大の壁だった。
1mm以下の薄さ
同時に、MTGは価格戦略においても常識を覆した。インナーウエアで税込み3,960円からという価格設定は、従来の相場を大きく下回る。竹中さんは日常を毎日元気に過ごしたい方はもちろんのこと、未病に悩む多くの人の手に届いてほしいという思いから、低価格戦略と大規模なマーケティング投資を決断したと語る。

8種の天然鉱石配合と均一化の壁

「VITALTECH」の核心は、繊維に練り込まれた8種類の天然鉱石にある。開発チームは世界中から数十種類に及ぶ鉱石を取り寄せ、検証を繰り返した。鉱石によって放射される遠赤外線の波長や蓄熱性は異なる。それらを組み合わせ、より効果を発揮する配合比率を見つけ出す作業は困難の連続だった。
さらに、インナーウエア特有の「色」の制約もあった。インナーに不可欠な「白」を実現しようとすると、天然鉱石で有名なブラックシリカの利用は制限される。白色のインナーを実現しつつ、高い放射率を維持するための絶妙な配合のバランスも求められた。
ReD バイタルテック V ネックインナー半袖(⼀般医療機器)
製造工程も極めて複雑だ。ファブレスメーカーであるMTGは、鉱石の粉砕、セラミック化、チップ加工、そして糸への練り込みといった各工程で、異なる専門技術を持つパートナー企業と密接に連携する必要があった。
そして、製造現場でもっとも困難だったのが、鉱石の均一化だった。極細の糸に対して、セラミック化した鉱石を練り込む際、最大限の量を限りなく均一に混ぜられなければ、紡糸の過程で糸が切れてしまい、一般医療機器としての効果基準を満たせなくなる。
開発チームは、0.1%単位で調整する実験を何十パターンもの試作を経て、試行錯誤の末ようやく「糸切れせず、かつ最大限の効果を発揮する」黄金比率にたどり着いた。このプロセスを経て完成した生地は、1mm以下の薄さでありながら、滑らかな肌触りと高い機能性を両立することに成功した。

専門家も認める機能性素材

一般医療機器として、しっかりと認められた機能
VITALTECHには、多くの専門家も注目している。整形外科・脊椎脊髄外科専門医 名誉指導医の佐藤公治臨床教授や、森ノ宮医療大学の工藤慎太郎教授など、臨床の最前線に立つ医師や研究者とも連携し、さらなるエビデンスの構築が進められている。
単なるアパレル製品の枠を超え、一般医療機器としての確かな裏付けを持つ「ReD」。その背景には、8年に及ぶ開発期間と、法改正という時代の変化を捉えた戦略、そしてミクロレベルの技術的課題を克服した「VITALTECH」の誕生があった。血行という生命の根源的な機能に着目したこの技術は、アパレル産業における機能性素材の新たなスタンダードとなるだろう。

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