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『ウマ娘』キャラの魅力を最大化する、デザインの必然性と服づくりとは?

2026.03.26
実在の競走馬をモチーフにしたキャラクターたちが織りなす、唯一無二の物語が魅力の『ウマ娘 プリティーダービー』(以下、ウマ娘)。作中の彼女たちが身にまとう多種多様な衣装は、単なる華やかさを超え、一人ひとりの生き様や背景を雄弁に物語っている。
そのデザインの起点となるのが、「衣装原案プランナー」と「衣装デザイナー」という専門的な職種だ。衣装原案プランナーが練り上げたコンセプトを、衣装デザイナーが緻密なビジュアルへと昇華させる。この緊密な連携によって、数々の名作衣装が誕生してきた。
今回は、Cygamesで本プロジェクトの衣装制作を担う両名にインタビューを実施。モチーフとなった競走馬への深いリスペクト、現代のファッショントレンドとの融合、そしてキャラクターをもっとも輝かせるための「計算されたこだわり」の舞台裏に迫る。

衣装原案プランナーは、物語の熱量をビジュアルへ繋ぐ「翻訳者」

はじめに、衣装原案プランナー・衣装デザイナーとはどのような役割を担うお仕事なのでしょうか。
衣装原案プランナー衣装原案プランナーは、いわば「衣装のコンセプトの設計図」を作る仕事です。「今回の衣装を通じ、キャラクターのどの魅力を、どのようなテーマで届けるべきか」という根幹を決定します。
私自身が直接イラストを描くのではありませんが、衣装の背景や意図を、どのようなスタイルで表現するかを、言葉とビジュアルイメージを使ってデザイナーに依頼し、形にしてもらいます。『ウマ娘』という物語が持つ熱量をビジュアルへと繋ぐ、「翻訳者」のような存在と言えるかもしれません。
衣装デザイナー衣装デザイナーは、衣装原案プランナーが定めたコンセプトを土台に、具体的なイラストへと落とし込んでいく仕事です。衣装原案プランナーから受け取ったアイディアや、キャラクターが持つ固有の設定をひとつでも多くデザインに盛り込みながら、ビジュアルとしてもっとも魅力的に映る着地点を目指しています。
衣装原案プランナーというのは、ゲーム業界の中でも非常に珍しい職種だと伺いました。
衣装原案プランナー一般的なゲーム開発では、プランナーやイラストレーターが衣装のコンセプト担当も兼任することが多いですね。ウマ娘において独立した「衣装原案プランナー」を置いているのは、「現代の女性の目から見ても、憧れやリアリティを感じられる衣装を届けたい」という強いこだわりがあるからです。
本作は、現代の日本に近い世界観を舞台としています。ファンタジー作品以上に、現実のファッションとの整合性が問われます。プレイヤーの皆様が日常で感じる「おしゃれさ」と乖離しないよう、細心の注意を払っています。
作中にはさまざまな衣装が登場しますが、衣装原案プランナーが関わるのはどの衣装なのでしょうか。
衣装原案プランナー主に「勝負服」「私服」「季節衣装」の3種です。
「勝負服」は、ウマ娘たちがレースで走るときに着る衣装です。モチーフとなる競走馬の要素をどう取り入れるか、走っているときに映える服であるかが重要です。
「私服」はその名の通りキャラクターの普段着のこと。キャラクターが普段着として選びそうなリアリティのある服であること、似合っていることを重視しています。
スティルインラブの勝負服[緋想の誓衣](© Cygames, Inc.)
グランアレグリアの私服 (© Cygames, Inc.)
衣装原案プランナー最後の「季節衣装」は、クリスマスなどの季節に合わせて公開する衣装で、ゲーム内のレースでも着用して走ります。その季節らしさがあること、普段見えないキャラクターの隠れた魅力を見せることを大事にしています。
サクラローレルの季節衣装[Nouvelle pousse](© Cygames, Inc.)
衣装デザイナー「勝負服」や「季節衣装」、「私服」のデザインには、大きく分けて2つのアプローチがあります。
一つは、デザインの方向性や史実、用いるカラーリングなどが示された「衣装原案」をもとに構築していくケース。もう一つは、デザイナーが自由な発想で制約に縛られず、ゼロから構築していく「作家性重視の自由なデザイン」のケースです。
メインとなる「勝負服」や一部の「私服」においては、後者の自由なデザインが中心となります。また近年では原案チームによる指針を起点に、そこからデザインを膨らませていくものも増えています。
なおすべての衣装デザインは衣装原案プランナーのチェックを通しており、アイディアをすり合わせていくことによってクオリティのブラッシュアップを行っています。
衣装原案がある場合は、そこに込められた意図をいかに魅力的なビジュアルへ落とし込んでいくかという面白さがあります。 一方で、自由にデザインを行うものは、作家性を存分に発揮して「ウマ娘」という一人の人格をゼロから表現しなければなりません。衣装のみならず、顔立ちや髪型といったキャラクター造形そのものから構築していく非常に重要な役割を担っており、モチーフ馬への敬意や熱い思い、そしてデザインの爆発力をダイレクトに表現できることこそが、この仕事の醍醐味です。

キャラクターの内面を衣装に出すことで差別化できる

単なる「可愛い服」を作るのとは異なる、ゲームならではのポイントはありますか。
衣装原案プランナー何よりも重要なのは、服を通して「キャラクターの魅力が瞬時に伝わること」です。一目見ただけで、そのキャラの性格や信念、好みが直感的に理解できるデザインを常に心がけています。
衣装デザイナー見た目のバリエーションにとどまらず、「そのキャラの内面を表現する」という視点を軸に据えることで、デザインの可能性はどこまでも豊かに広がります。
たとえば同じ「元気なキャラクター」であっても、内面の根拠が違えば、選ぶ服のディテールやシルエットに明確な差異が生まれ、結果として深い差別化に繋がるのです。
ウマ娘ならではの衣装作りの難しさはありますか?
衣装デザイナー世界観と機能性の両立です。ウマ娘は走ると同時にステージにも立つので「トップアスリートとして走れる」「人前でパフォーマンスできる華やかさがある」の2点を衣装でも両立させるようにしています。
ウマ娘において「走ること」は絶対の前提ですので、足さばきの良さを確保し、過度な装飾を避けるといった実用的な美しさを追求しています。
また、デフォルメ感や密度感、色味のバランスを一貫させることで、初期から現在までの全衣装が並んだ際にも作品の世界観が損なわれないよう、常に全体を俯瞰してデザインすることを意識しています。
ドリームジャーニーの勝負服[夢路のよすが](© Cygames, Inc.)
衣装原案プランナーロングスカートでも切れ目を入れたり、後ろに広がるようにしたり、走れる服というのは特に心がけていますね。
その他には、ウマ娘はみんな耳で感情をしめすので、耳飾りや頭部周りのアクセサリーには特に気を使っています。耳が可愛く見えて、動きのじゃまにならないものをつけるようにしています。
左右で靴の色が異なるキャラクターが多いのも、独特のこだわりですよね。
衣装原案プランナーそこは私たちのリスペクトがもっとも濃縮されている部分です。モチーフとなった競走馬の脚の模様(白斑)をデザインに落とし込んでいます。
後肢(後ろ足)の色が左右で違う馬なら靴の色を変え、前肢(前足)に特徴があるなら手袋に反映させる。そんな風に、モチーフの馬の身体的特徴をファッションのアクセントとして「翻訳」しているのです。
コパノリッキーの勝負服[陰陽八卦☆開運衣](© Cygames, Inc.)

衣装に刻まれる「関係性」と「ライバル心」

多くの衣装の中で、クリエイターとして特に思い入れのある一着を教えてください。
グラスワンダーの新勝負服[蒼炎の誉](© Cygames, Inc.)
衣装原案プランナー私はグラスワンダーの[蒼炎の誉]の衣装ですね。
モチーフとなった競走馬グラスワンダー号は、ウマ娘でも主人公的なキャラクターとして描かせていただいているスペシャルウィーク号と熱いライバル対決を繰り広げた馬です。
[蒼炎の誉]は史実の決戦をイメージした衣装で、外国産馬でありながら日本人好みの活躍を繰り広げたグラスワンダーらしい和風の服にまとめました。
スペシャルウィークの新勝負服[日之本一の総大将]と真逆な、たおやかで凛とした姿に仕上がっていて、個人的にかなり気に入っています。
スペシャルウィークの新勝負服[日之本一の総大将](© Cygames, Inc.)
衣装デザイナーネオユニヴァースとサウンズオブアースは、史実でも親子という深い縁があるため、アースの青い瞳や柔らかな髪質は、ネオユニヴァースからの継承ポイントとしてデザインに盛り込んでいます。そうした血統の繋がりを、ビジュアルや衣装でも大切に表現しました。
サウンズオブアースの勝負服[リトモ・デッラ・テッラ]は、髪を結う大きな白リボンや、袖のボリュームある白フリルなど、ネオユニヴァースの白基調でボリューム感のある勝負服[Universe-Naut]から受け継いでいます。
ネオユニヴァースの勝負服[Universe-Naut](左)、サウンズオブアースの勝負服[リトモ・デッラ・テッラ](右)(© Cygames, Inc.)
衣装デザイナーサウンズオブアースの季節衣装[ソナタ・アッラ・メンタ]は、ネオユニヴァースの勝負服[Universe-Naut]を思わせる耳カバーや、胸元の三本ベルト、ネオユニヴァースのインナーカラーを想起させる水色を衣装のベースカラーに採用しています。
サウンズオブアースの季節衣装[ソナタ・アッラ・メンタ](© Cygames, Inc.)
衣装デザイナーまた、ネオユニヴァースの季節衣装 [Like “ZEER”]からは、ショートブーツや三つ編み、穴あきフリル等を受け継いでいます。
他にも少しずつお互いを連想させるような要素を散りばめていますので、ぜひ見比べみてほしいです。    
ネオユニヴァースの季節衣装 [Like “ZEER”]
性格だけでなく、キャラクター同士の「繋がり」も衣装に反映されているのですね。
衣装デザイナーそうですね。親子以外の繋がりを衣装で表していることもあります。
モチーフ馬のダイタクヘリオス号とメジロパーマー号はどちらも90年代に「逃げ」で知られた馬で、ウマ娘では「ズッ友」としています。そのため、ダイタクヘリオスは、私服でメジロパーマーの緑と自身の青を組み合わせたネイルをつけており、メジロパーマーも同じ色を組み合わせたブレスレットをつけています。
ダイタクヘリオスの季節衣装[Joyful_Jamboree!](左)、私服(右)。メジロパーマーをイメージした緑色をネイル・アクセサリー・ソックスなど衣装の随所に取り入れている(© Cygames, Inc.)
メジロパーマーの季節衣装[赤心のトナカイさん](左)、私服(右)(© Cygames, Inc.)
衣装デザイナーダイタクヘリオスの季節衣装[Joyful_Jamboree!]とメジロパーマーの季節衣装[赤心のトナカイさん]はミニハットやそれぞれの髪型の取り換えっこなどお揃いになるポイントを随所に散りばめました。見比べていただくと発見があるはずです。デザインを通して、二人の友情や絆を感じ取ってもらえたら嬉しいです。
ダイタクヘリオス号は、ケイエスミラクル号とはライバル関係にありました。
ダイタクヘリオスとケイエスミラクルの勝負服は、どちらも青と黄色がメインですが、モチーフの馬の性格や史実などバックボーンは真逆です。だからこそ、ライバルとして並んだ際に対照的な魅力が際立つよう、一貫した意図を持って設計しました。
「色やデザイン、使用モチーフで関係性を表す」ということひとつとっても、性格や関係性をどう解釈するかで変わるといういい例だと思っています。
ダイタクヘリオスの勝負服[Fun☆Fun☆ぱりない](左)、ケイエスミラクルの勝負服[Prism](右)(© Cygames, Inc.)

モチーフの競走馬が活躍した時期のトレンドを取り入れる

衣装を考える際トレンドは意識していますか。
衣装原案プランナーある程度は意識しています。ウマ娘のように現代日本に近い世界観の作品は、現実のファッショントレンドをおさえないと古く見えてしまうんですね。
具体的には、マヤノトップガンの衣装[ろっきん☆MewMeow]に最近のトレンドであるY2Kっぽさを入れたり、ナリタタイシンの[迷光オーヴァライド]に最新テックのイメージを取り入れたりしています。
マヤノトップガンの季節衣装[ろっきん☆MewMeow](© Cygames, Inc.)
ナリタタイシンの新シナリオ衣装[迷光オーヴァライド](© Cygames, Inc.)
衣装デザイナー逆に、モチーフの競走馬が活躍した時期のトレンドを入れることもあります。
フサイチパンドラ号は2000年代に活躍した競走馬で、その時期は「姫系(姫ギャル系)」と呼ばれるファッションがトレンドでした。そのため、「ふわふわマシュマロ甘々ギャル」というコンセプトで服も姫系にまとまっています。
お金持ちで豪快な金銭感覚を持っているので、アクセサリーも贅沢につけていますね。
フサイチパンドラの私服(© Cygames, Inc.)
制作するときに特に苦労した衣装を教えてください。
衣装原案プランナードリームジャーニーの季節衣装[雪白の夢路]は、試行錯誤の連続でした。
彼女は「かっこよさ」「可愛さ」「品位」「危うさ」をすべて併せ持つ多面的なキャラクターです。当初の案では納得がいかず、途中で方向性を大胆に変更しました。結果として、彼女の気高さが滲み出るミステリアスな一着に辿り着けたと思っています。
ドリームジャーニーの季節衣装[雪白の夢路](© Cygames, Inc.)
衣装デザイナードリームジャーニーは、私自身非常に強い思い入れがあるキャラクターです。
そのため制作当初は、原案が示す方向性と彼女の個性をいかにより良い形で共存させるか、その最適解を求めてチーム内でも議論が交わされました。着地点を見出すまでには多くの時間を要しましたが、現状を打破し、彼女の魅力を最大限に引き出すために、私から「当初とは真逆のシルエットと方向性」による全く新しいアプローチを提案しました。
「彼女に最高に似合う姿で世に送り出したい」という一心で、デザインを一から再定義して完成させた、私のこだわりと情熱のすべてを注ぎ込んだ思い出深い衣装です。
衣装原案プランナー他に苦労したものだと、メジロラモーヌの季節衣装[Untouchable Eden]ですね。
最初は孤高の美しさを強調するために背中に巨大な装飾を背負わせていたのですが、「レースのじゃまになる」ということで不採用に(笑)。その後、彼女の持つセクシーさをどのラインまで表現するか、極限の調整を続けました。苦労した衣装ほど、プレイヤーの皆様から好評をいただけたときの安堵感はひとしおです。
メジロラモーヌの季節衣装[Untouchable Eden](© Cygames, Inc.)
最後に、全国のトレーナーの皆様にメッセージをお願いします。
衣装原案プランナーいつもウマ娘を愛してくださり、本当にありがとうございます。皆様が衣装の細かなディテールまで見て、考察してくださることが私たちの最大の励みです。
スタッフ全員がキャラクターの個性、そして何よりモチーフにしている競走馬への深い敬意を抱きながら制作しています。衣装の隙間から、それぞれのウマ娘が歩んできた物語を感じ取っていただければ幸いです。
衣装デザイナーどうすればウマ娘一人一人が一番輝けるのかと、そればかり考えて悩み抜きこだわりを尽くして一着ずつ形にしてきました。衣装を通して、キャラクターの体温や息遣いを伝える一助になればと願っています。ウマ娘ファンの皆さんに、彼女たちがそこで生きている実感を届けられたら嬉しいです。
走る瞬間、歌う瞬間、そして隣で過ごす何気ない瞬間。そのすべての時間がより輝くように、これからも一着一着、心を込めて丁寧にデザインを続けてまいります。

ヘッダーキャプション:© Cygames, Inc.

Text by まいしろ

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