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初代「G-SHOCK」が現代の技術で完全復刻! 名品の進化の背景を探る
1983年に登場したG-SHOCKのオリジナルモデル、いわゆる「初号機」が、昨年末に現代の技術で復刻発売された。
なぜ今、「初号機」なのか。オリジナルと復刻版の違いを通じて、本モデルの魅力を解き明かす。
目指したのは、見た目の完全な再現
1983年、カシオが満を持して発売したG-SHOCKは、「落としても壊れない丈夫な時計」として、40年以上たった今も世界中で人気を誇っており、時計史にその名を刻む名品のひとつとなっている。
数々の派生モデルが誕生するなか、2024年末、誕生当時のオリジナル“初号機”「DW-5000C」が、現代技術を用いて「DW-5000R-1AJF」として復刻された。

写真左が復刻版の「DW-5000R-1AJF(以下5000R)」、写真右が初号機である
「DW-5000C(以下5000C)」なのだが、一瞥では見分けがつかないほど、意匠はほぼ同様に再現されている。
本作の復刻について、カシオ計算機株式会社で現在、商品企画の責任者を務める齊藤慎司さんに、詳しく話を聞いた。

「目指したのは、見た目の完全な再現です。現在、さまざまな派生モデルが誕生しているG-SHOCKですが、その原点となるモデルを現代の技術で再生することで、多くの人に、その価値を再認識していただきたかったというのが理由です。
誕生を知る世代には、言わずとも伝わる部分があるとは思いますが、誕生の経緯も知らないような若い世代には、改めてG-SHOCKの魅力を伝える必要がありますからね。
コレクターからツッコミを受けないように、資料という資料を漁りました(笑)」
ベゼルの内側に配置した赤い枠とレンガパターン、そして、バンパーを持たないフラットベゼルといった、「5000C」を象徴するディテールを完全に再現。
液晶左下に配されるブルーの防水性表示は、文言こそ異なるものの、現代の書式で同様のデザインで印字されている。
また、本体とバンドとの接続部に配置された左右一対のくぼみ(ディンプル)の位置や深さも忠実に再現した。完成の実寸も「5000C」とほぼ変わらない仕上がりとなっている。


オリジナルモデルの存在感を確固たるものとしてブランドの価値を高めるという手法は、長い歴史のなかでアイコンモデルを持つウォッチブランドではよく見られるものだ。
誕生から40年余りを経たG-SHOCKもまた、時代の流れのなかで、そうしたヘリテージブランドと肩を並べるほどの存在になったと言っても過言ではない。
「あえてアニバーサリーモデルではなく通常版として販売しているのは、それだけ末長く、より多くの幅広い世代の人たちに手にとっていただきたいからです。
そのためには、40年前のモデルをヴィンテージとして中古で使っていただくこともありがたいとは思いますが、耐久性などを考慮すると、現代の腕時計として『5000R』を腕に巻いて、オリジナルの魅力を体感してほしいのです」
これまでの進化の過程で生まれた数多の機能はあえて排除して、忠実なオリジナルモデルの再現に努めたのが、この「5000R」というわけだ。
時代に応じてバイオマスプラスチックを採用

デザイン上は、ほとんど忠実に再現されている「5000R」だが、初号機「5000C」との違いは、大きく3つある。
1)樹脂部分にバイオマスプラスチックを採用
2)バックライトをLEDに変更
3)最新ムーブメントを搭載
特に、バイオマスプラスチックの採用は、今回の復刻のハイライトのひとつだろう。
「現代の腕時計としての進化を見せる必要がありました。実際、誕生から40年余りの時を経て、性能が上がっている点もあります。
一方で、サステナビリティへの取り組みも必要でしたので、バイオマスプラスチックの採用も避けては通れない道でした」
原料にトウゴマ(ひまし油)やトウモロコシなどの再生可能な有機資源を使用したプラスチックを採用することで、環境負荷低減に貢献している。
「G-SHOCKでは、2022年から採用されています。従来の樹脂とは性質が異なるので、金型へのインジェクション(注入)における品質の安定性などで、苦労してきた面はあります。
一方で、この素材を時計に採用するためのノウハウも確立してきました」
耐久性などのテストを繰り返して、いかに基準値に達するかという点において、製品化にも困難があったという。
G-SHOCKが築き上げた耐衝撃性の価値を維持するうえでも大きなポイントだった。

「この素材を金型に流し込む成形に関しては、流動性の点で従来の樹脂とは異なる条件がありました。これを試行錯誤の末に改善して、製品化に至ったという背景があります。
『5000R』に関して言えば、完全復刻したいがために、設計担当者には、手書き図面と現物をにらめっこしながら、細かな合わせ込みをしてもらいました。
特にバンドは表面に凹凸がたくさんあることが要因で金型に貼りついてしまいますので、見た目に影響が出ないよう細かい設計調整を山形サイドと協力して、量産の立ち上げまで持っていきました。
これは、現在の生産基準から考えるとかなり生産性の悪い設計条件になっていたそうです」
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加えて、性能面の進化として、より光量の多いLEDのバックライトの採用と、時代に即して進化してきた新型ムーブメントの採用が挙げられる。
これらに関しては、時代の流れにおける至極当然の進化と捉えていいだろう。1983年当時から、G-SHOCKが腕時計として歩んできた流れを汲んだものだ。


G-SHOCKの生みの親であるエンジニアの伊部菊雄さんが、研究開発センターの3階の窓から何度も落とす実験を繰り返してたどり着いた耐衝撃構造は、時代とともにアップデートされている。
こうした進化してきたディテールを取り入れつつ、忠実な再現を試みた結果、新規の金型を起こしていちから設計された点にも注目したい。
「当初は、既存の『5600』系統のモデルをベースに、ディテールを調整してアレンジすれば、製品化できるものと甘く見積もっていました(笑)。
しかしこだわりを詰め込んで『5000R』を思い通りに実現させるには、結局、金型をいちから起こして製品化する必要が生まれたのです」
カシオ山形工場で「忠実な」日本製造
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「忠実」という意味においては、「5000C」が行っていた日本製造という点でも「忠実」だ。
G-SHOCKの最高級ラインである「MRG」も製造しているカシオの山形工場に、本モデルの生産ラインを置いている。
「ここまできたら、ピンバックル裏の“JAPAN”まで再現したいじゃないですか。
原点となるモデルなので、カシオが誇る山形工場のラインになんとかねじ込んで、少量ながらも日本で生産しています」

細部において「原点に忠実」を実行したからこそ、「入手困難モデル」となっているのが、復刻版の「5000R」モデルというわけだ。
「G-SHOCKの本質は、機能性です。長い歴史のなかで、ファッションアイテムとしても親しまれてきましたが、実用面を追求した結果の機能美があったからこそ、世界中で支持されてきたのだと思います。
ですから、その原点の復刻版である『5000R』に触れていただいて、改めて実用時計として優秀なG-SHOCKの本質を感じていただきたいのです」
現在のG-SHOCKでは、ソーラー充電機能やスマートフォンリンク機能、電波受信機能などを備える“進化版”も数多い。
が、そうした付加機能は排除して、誕生当初の仕様にとどめたのには、こうした理由がある。
改めて、日本が世界に誇る「G-SHOCK」の価値を体感するのには、この「5000R」は最適といえる。
「公式オンラインストアでの入手はかなり難しくなっております。
お手数ではありますが、全国に9店舗ある『G-SHOCK STORE』や、時計店に常設されている7つの『G-SHOCK CONCEPT SHOP EDGE』のほか、G-SHOCKの正規販売店にお問い合わせください。通常モデルなので、生産し続けます!」
とのことで、実際の入手は店舗に問い合わせるしかないようだ。
それでも、限定モデルではなくレギュラーモデルということで、地道に購入活動に励んで、ぜひ入手していただきたい。それだけの価値がある一本ではないだろうか。
PROFILE
齊藤 慎司(さいとう しんじ)
カシオ計算機株式会社 羽村技術センター
時計BU 商品企画部 部長
1998年入社。BABY-Gの企画やEDIFICEなどの一般時計企画を経て、2007年よりG-SHOCKの企画を担当。2019年より全ブランドの商品を統括し、カシオの腕時計の舵取りを仕切るキーパーソンだ。
Text by Masashi Takamura













