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創業25周年の「グラニフ」を名作とともに振り返る:Tシャツブランドから世界のグラフィックカンパニーへ

2025.04.09
グラフィックTシャツを主軸としたアイテム展開で知られてきた「グラニフ」が今年、25周年を迎えた。
2021年には「デザインTシャツブランド」から「グラフィックライフストアブランド」へのリブランドを実施し、Tシャツに限らず、ファッション雑貨やホーム雑貨など、アパレルだけにとどまらない幅広いアイテムをラインナップ。“グラフィックのある豊かな暮らし”を提案するため、時代の変化に合わせて進化を続けている。
そんな同社のこれまでとこれからを、Tシャツを取り巻く環境の変遷と共に探った。

PROFILE

枝村 亮太(えだむら りょうた)

株式会社グラニフ 執行役員 
プロダクト部門トップとして、アパレルや雑貨のオリジナル・ライセンス、デザイン開発、生産管理に関するすべての業務を統括・リードしている。

創業時から変わらない、“主役となるTシャツ”という考え

「グラニフ」のはじまりは、2000年にオープンした下北沢1号店だ。大学でアートを専攻していた3人が、アートを世の中に発信するためにスタート。白いTシャツがキャンバスとして機能するのではないか、という考えのもと、グラフィックをプリントしたTシャツを展開した。
2000年にオープンしたグラニフ下北沢店
また、Tシャツをレコードのように“ジャケ買い”してもらう、という構想から、店内をレコードショップのような内装に設計。価格は1枚2500円、2枚セットで4000円と、当時は1枚5000円前後のTシャツが主流だった中で手に取りやすくし、グラフィックTシャツをより身近な存在にした。そうした独自の発想と手頃な価格、そして豊富なグラフィックを武器に、「グラニフ」は次々と新たな店舗を展開していった。
そんな「グラニフ」のTシャツが持つ強みについて、プロダクト部門の統括兼執行役員を務める枝村亮太さんは「インナーではなく、“主役となるTシャツ”を作るという考え方を、創業時から一貫して大切にしています」と語る。
サイズは日本人の体型にもっともフィットするよう設計された定番のTシャツを軸にしつつ、時代の変化に応じて数ミリ単位で細やかな調整を実施している。
素材や製法にも工夫がある。たとえば、襟元が伸びにくいように襟とボディで異なる糸を使用。さらに黒や青など色のついた糸と白い糸とでは管理体制を分けて生地の厚みをコントロールするなど、見た目や着心地の良さを持続するために、細かい点にまで配慮した製法を採用している。
また、グラフィックを活かすために、Tシャツそのものの色にもこだわりがあるという。
「特に白と黒の色合いにはこだわりがあります。白は工場にそのまま依頼すると、蛍光灯のように明るすぎる仕上がりになりやすいので、日常生活に取り入れやすい白になるよう細かく調整しています。また、黒に関しても、一般的な黒よりさらに深い色味に仕上げることで、グラフィックを一層鮮明に見せる工夫をしています」と枝村さんは説明する。
主役であるグラフィックがもっとも映える黒色にこだわる

詳細なストーリー設定から生まれるオリジナルデザイン

肝心のグラフィックには、どのようなこだわりがあるのだろうか。「グラニフ」のグラフィックは、社内で生み出されるオリジナルデザインとアーティストや企業とのコラボレーションによるデザインの2つに大別される。
オリジナルデザインに関してはインハウスデザイナーが生み出したアイデアをもとに、チームで何度も議論を重ね、キャラクターの設定やストーリーを丁寧に組み上げ、最終的にコンテンツ化していくという。
「たとえばオリジナルのキャラクターを生み出す際には、デザイナーの『こういうアイデアが面白いのではないか』といった発想を起点に、キャラクターのパーソナリティやバックストーリー、さらには趣味や身長などの細かい点までペルソナを設定していきます」
一番人気のオリジナルキャラクター「ビューティフルシャドー」。どんなときも楽しむ気持ちを忘れずに、自由気ままに過ごすイタズラ好きな性格
「アーティストや企業とのコラボにおいては、従来はTシャツ1型のみの展開が主流でした。しかし、2010年頃からは、複数のアイテムを一つのコレクションとして打ち出す方向へシフトしました」と枝村さんは振り返る。
「コレクションとして展開し始めたきっかけは、絵本作家さんとのコラボレーションで、『はらぺこあおむし』作者のエリック・カールさんの作品などを商品化しました。子ども向けから大人向けまで幅広い商品展開をしてきたグラニフだからこそ、世代を超えて親しまれてきた絵本とのコラボレーションはぴったりなのではないか、という考えからスタートしたところ、非常に好評でした」
エリック・カールとのコラボレーションTシャツ「スケッチ アップル」
「2018年頃からは石黒亜矢子さん、2021年頃からは中村佑介さんといった、著名なイラストレーターの方とのコラボレーションもスタートしました。様々なクリエイターとのコラボレーションを機に、鮮やかなアートの魅力を最大限に引き出すものづくりの重要性を改めて実感しています」
左:石黒亜矢子さんとのコラボレーションTシャツ「猫又親子図」/右:石黒亜矢子さんとの第一弾コラボレーションより、Tシャツ「鬼子母猫百号」
左: 中村佑介さんとのコラボレーションTシャツ「My name is」 /右: 中村佑介さんとの第一弾コラボレーションより、Tシャツ「ソルファ」

「グラニフ」だからこそ生まれた、世界的ブランドとの唯一無二のコラボレーションアイテム

企業やコンテンツとの協業では、人気ゲームコンテンツや人気レストラン・チェーンなど、多くの人に親しまれている作品・ブランドとの取り組みを行っている。「コラボ先には強いエネルギーがあるので、それに負けないよう、他社には出せない独自のアイデアを生み出すことを常に意識しています」と枝村さんは言う。
「たとえば人気ゲームコンテンツとのコラボの場合、ゲームの世界観をグラフィックを通して表現するため、『どのシリーズが印象的なのか』にはじまり、『どのモンスターが人気なのか』『どのシーンが多くの人の記憶に残っているのか』『どの呪文がファンに愛されているか』といった様々な観点を洗い出しながら、ストーリーやデザインを緻密に構築していきました。
いずれにしても重要なのは、数多くのアイデアをまとめていく中で、最終的に着られる商品へ落とし込むことです。やりたいことだけを優先して作ってしまうと、単なるコレクターズアイテムになってしまいます」
これまでのコラボレーションの中には、上記をはじめ、「アパレル製品ではグラニフでしか実現できなかったコラボ」が数多く存在している。その背景には「強すぎる作品愛」があると枝村さんは話す。
「コラボ先へは、ライセンスの営業チームが直接アプローチを行いますが、最初から順調に進むことはほとんどありません。それでも、時間をかけて根気強く作品やブランドへの愛情と熱量を伝え続けることで、グラニフならではのコラボレーションを実現してきました。最近ではそうした我々の熱意に共感していただき、コラボレーション先の方からお声がけいただく機会も増えています」

オーバーサイズの流行、インバウンド需要の高まり。Tシャツを取り巻く時代の変化とは?

オリジナルデザインからコラボレーションまで、多様なデザインのTシャツを世に送り出してきた「グラニフ」は、この25年の間でTシャツにおけるトレンドの変遷をどう捉えているのか。
「サイズのトレンドは年々変化しており、約3年前からは、かつて考えられなかったようなオーバーサイズが主流です。それに伴い、昨年からはXXLサイズを展開し、サイズのバリエーションも拡充しています。グラフィックデザインについては、3年ほど前から古着風のデザインが流行っている他、ここ1年ほどでワンポイントデザインが『グラニフ』で好評を得ています」
ワンポイントTシャツ「シティボーイペンギンサーフ」
さらに、Tシャツの購買層にも変化があるようだ。
「『グラニフ』は女性のお客様が多いものの、男性のお客様も少しずつ増えてきています。インバウンド需要は、コロナ前は全体の約5%を占めていましたが、現在では約10%に増加し、特に多い店舗では50〜60%に達しています。インバウンドのお客様の購買傾向も変化しており、かつては和柄や日本の食べ物などの日本らしいモチーフのアイテムが人気でしたが、現在は国内でも人気のオリジナルキャラクターのアイテムや、コラボレーションの中ではアニメや漫画などのコンテンツをモチーフにしたアイテムが特に人気です」

世界に向けてIPを発信するNo.1グラフィックカンパニーへ

創業から現在に至るまで、市場やトレンドの変化を捉えつつ、グラフィックを軸とした遊び心のあるモノ作りを続けてきた「グラニフ」だが、大きな転機となったのが2021年に実施したリブランディングだ。
「改めて『グラニフ』にしか提供できない独自の価値とは何かを考えました。社内で議論を重ね、お客様へのインタビューを行う中で分かったのは、求められているのはTシャツそのものというよりも、グラフィックが生み出すある種の高揚感やコミュニケーション、そしてカルチャーの醸成でした。
そうした点と、グラフィックに特化したブランドが世の中に存在しない点を踏まえ、Tシャツという枠から脱却し、“グラフィックのある豊かな暮らし”の実現へと舵を切ることにしました。リブランド後、まず行ったのはアイテムバリエーションの拡充です。数百に及ぶオリジナルデザインやキャラクターを約20種類に絞り、ユーザーが共感しやすいようにストーリー性を持たせ、コンテンツ化を進めました」
リブランド後の2023年12月、旗艦店となる「グラニフ東京」を原宿にオープンした
「リブランドを経て『グラニフ』が次に目指すのは、グローバル展開です。今年3月には、台湾へ海外直営店をオープンしました。ゆくゆくは、IP(知的財産。アイデアや創作物など、財産としての価値をもつもの)を世界に向けて発信するNo.1グラフィックカンパニーを目指しています。グラフィックを通じて人々の日常を“好き”で満たし、豊かな暮らしを実現したいと考えています」
既存のものづくりのマインドは継承しつつ、グラフィック×Tシャツからグラフィック×ファッションへと概念を拡張した「グラニフ」。日本のポップカルチャーが海外で人気を博している今、海外への直営店は奏功するのか。台湾店の動向に注視したい。

Text by 石塚 振

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