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ナイキやアンダーカバーが注目するタトゥーアーティスト・TAPPEI:その歩みとデザイン哲学

2024.12.04
かつてアウトローの象徴であったタトゥーはいま、日本でもファッションのひとつとして広まりつつある。
その中心的なアーティストのひとりがTAPPEIさんだ。独学でタトゥーを始め、ポップなキャラクターがちりばめられたピースフルな作風で注目を集めている。NIKEやUNDERCOVERなど国内外の有名ブランドとのコラボレーションも絶えない。
本記事ではTAPPEIさんのタトゥースタジオを訪問。クリエイションの秘密や、新しいカルチャーとして生まれ変わろうとしているタトゥーの魅力を聞いた。

PROFILE

TAPPEI

1993年大阪府生まれ。2015年から東京を拠点にタトゥーアーティストとして活動。2020年に自身のアトリエ&タトゥースタジオ「TAPPEI ROOM」を中目黒にオープン。「UNDERCOVER(アンダーカバー)」や「NIKE(ナイキ)」など、さまざまなブランドとのコラボレーションを果たし、グラフィックデザインやアートディレクションも手掛けている。
Instagram:@tappeis

タトゥーに夢中の小学生

TAPPEIさんがタトゥーに惹かれたきっかけや、ルーツについて教えてください。
はじめてタトゥーを知ったのは、小学生のときです。自宅で父親が見ていた映画に刺青が映っていたんですよね。たしか日本の任侠映画だったと思います。父親に「これなに?」って聞いたら、「イレズミといって、肌の中に絵が入っているんだ」と教えてくれて。そのとき、ものすごくかっこいいと思いました。
それからずっとタトゥーに憧れて、高校を卒業した日に胸元にタトゥーを入れました。
高校の卒業式の日に入れたファーストタトゥー
はじめから彫師の方に依頼していたんですか?
はい。高校生のころにはタトゥーアーティストという職業のことも調べていたので、絶対プロの方に入れてもらおうと考えていました。「TAPPEI」という名前をスターの形にしたデザインを持ち込んで、彫っていただいたんです。
その3ヶ月後にはタトゥーマシンを買って自分で彫りはじめていました。とはいっても僕には師匠がいないので、ひたすら自分の体に彫って練習するか、友達に声をかけて彫らせてもらうところからのスタートです。お金ももらっていませんでしたし、趣味のような位置付けでした。
いつごろからタトゥーが仕事になったのでしょうか。
大阪から東京に出てきた、2015年ごろです。CANNABIS[1]のスタッフとして働いていたのですが、僕がタトゥーを彫っていると店長に言ったら、閉店後にスペースを貸してくれたんですよ。そこから徐々にお客さんがついてきて、2020年に自分のタトゥースタジオを開きました。

体の上に暮らすキャラクターの秘密

カートゥーンのようなフレンドリーなキャラクターが、シンプルな線で描かれていますよね。
本格的にこのデザインになっていったのは東京に出てきてからです。大阪にいたころはクラシックなタトゥーを彫ったほうがいいのかなと思っていたんですが、東京では自分のオリジナルのデザインを面白がってくれる方が多かった。
かわいらしく毒々しくもあるキャラクターが登場する世界観はどこから生まれたのでしょうか。
キース・へリングのグラフィティや『ザ・シンプソンズ』のような海外のアニメに影響されているところもありますが、子どものころに人形やぬいぐるみで遊んでいたことが一番大きいですね。
怪獣の人形を戦わせるというような男の子らしい遊びには興味がなくて、『トイ・ストーリー』みたいにいろいろなキャラクターが暮らしている世界をつくるのが好きだった。そこが原点のような気がします。
たしかに、キャラクターが体の上に暮らしているようにも見えますね。なかでも「天使」は代表的なモチーフだと思います。名前はあるのでしょうか?
あえてつけていません。「天使のキャラ」と呼んでいます。「天使」はタトゥーのメジャーなモチーフで、お客さんからのオーダーも多かったのでつくりました。最初はスマイルマークのような顔だったのですが、だんだんと現在の姿に近づいていって、僕の看板キャラになっています。
初期の「天使のキャラ」のタトゥー
現在の「天使のキャラ」
こうしたキャラクターやメッセージを体の上に彫っていくスタイルで、独特なストーリー性も感じます。タトゥーならではの創意工夫はありますか。
タトゥーは体のどの場所に入れるかによって表現が変わるところが面白いと思います。テクニックはいろいろありますよ。たとえば、肘には「蜘蛛の巣」のモチーフをよく入れるんですが、肘に「立入り禁止」の看板を彫って、その周りに巣を張れなくて困っている蜘蛛を彫ったり。
依頼してくれた方の体に他の彫師さんの作品が入っていて、その近くに僕の作品を彫ることもあります。もしハートの絵柄が入っていたら、「じゃあ僕もハートの絵柄に合うデザインを彫りましょうか?」と提案することも。ただし、もともと入っているタトゥーのストーリーを壊さないようには気を付けています。タトゥーの世界のしきたりにそこまでこだわっているわけではないけれど、そういうマナーは大切だと思いますね。
逆に「カバーアップ」といって、前のタトゥーの上から僕のタトゥーできれいに消すというオーダーの場合もあります。
なかでも印象に残っている施術はありますか。
たくさんありますが、ひとつあげるなら2年ほど前に「天使のキャラ」を後頭部の辺りに彫ったことがあります。髪の毛が生えている位置にとても小さく、ひとつだけ。
理由を聞くと、絶対にタトゥーが見えてはいけない職業の方でした。本人も見ることができない位置なのに、どうしても僕のタトゥーを彫りたいと言うんです。その人にとってタトゥーは「お守り」のようなものではないかと思いました。

タトゥーから広がるコラボレーション

10月には個展「From:space」を開催。絵画・立体・インスタレーション・アパレルなどのタトゥー以外の作品が展示された
この数年はタトゥーから活動が広がり、個展やファッションブランドとのコラボレーションも活発です。
最初はSWATCHからコラボの依頼をいただいて、NIKEの「エア フォース1」の40周年企画やRODY、AVIREXなどともアイテムをつくらせていただきました。
TRUNK(HOTEL)でのプロジェクトでは、僕の頭にカメラをつけて、3日間で背中を彫り切るライブパフォーマンスを行ったこともあります。基本的にはギャラの金額ではなく、僕がやりたいと思えるかどうかで決めてきました。
名だたる有名ブランドが相手ですが、特に思い入れのあるコラボは。
ひとつだけあげるなら、2022年のUNDERCOVERとのコラボレーションです。UNDERCOVERの代表的なキャラクター「目隠しベア」は僕にとって特別な存在なんです。
MADSTORE UNDERCOVER × TAPPEI Tシャツ
東京に出てきたとき、すごくお世話になったのがオオスミタケシさん[2]でした。僕のタトゥーを気に入ってくれて、毎週オオスミさんに彫っていた時期もあったほどの恩人です。
そのオオスミさんがあるとき「目隠しベアを彫ってほしい」と言ったんです。僕も好きなブランドだったので彫らせていただいて、「ジョニオ君(UNDERCOVER・デザイナー)にも見せに行きたいね」と話していた2021年、オオスミさんが亡くなってしまいました。
だから、UNDERCOVERからコラボの話が来たとき「ぜひ『目隠しベア』を描かせてください」と頼んで1型つくってもらったんです。オオスミさんのタトゥーを直接ジョニオさんには見せれませんでしたが、別の形でジョニオさんに見せることができた。縁が形になったと思えて、うれしかったですね。
TAPPEIさんのタトゥースタジオにはいろいろなおもちゃが並ぶ
いまTAPPEIさんは31歳で、敬愛しているというキース・へリングが亡くなった年齢でもあります。これからどんなことに挑戦したいですか。
これからもタトゥーを続けながら、アニメーション作品もつくりたいですね。キースがいま生きていたらアニメをつくるような気がするんですよ。それから、子どものころから遊んでいることの延長なのかもしれませんが、遊園地のような空間をつくってみたいと思います。

絶対に二次流通しないアート

タトゥーは近年、ファッションのひとつとして身近な存在になってきたと感じます。
まず、いまでもタトゥーは人生において多少ならずリスクだと思うんですよ。それでもタトゥーを入れたい、所有したいという気持ちをすごく大事にしなくてはいけないと思うんですね。
もちろん、周りの人が入れてないから自分は入れたい、それで特別な気分になりたい人も多いと思います。ただ最近のタトゥーは、これまでのイメージをちょっと超えて広がってきている気はしますね。僕のアトリエにファーストタトゥーを入れるために来るお客さんも増えてきました。年齢層は若い世代の方がほとんどですが、僕より年上の方も多くなっています。
皮膚の上だからこそできる表現としての、タトゥーの魅力とは何なのでしょうか。
自分の体の上にあって、一生残る。でも自分が亡くなったら消えてしまう。先ほど話した「お守り」のような価値があると思います。それから、タトゥーって日が経つにつれてちょっとだけ味が出てくるんですよね。育っていく、子どものような感じもあります。
タトゥーは本物のアートだと思うんです。タトゥーアーティストの作品でありながら、値段がついたり誰かに売られたりすることもない、自分の体そのものなんですよね。鏡に映ったときに、自分の体にタトゥーがある。説明はしにくいけれど、この感覚はもう本当に特別なんです。

《註》
[1]原宿にあるセレクトショップ
[2]「SWAGGER」「PHENOMENON」「MISTERGENTLEMAN」を立ち上げた、ファッションデザイナー。2021年没

Text by GANTAN

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