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THREEが進める“香り研究”の最新事情:嗅覚がもたらす体と心への影響を追求

2025.02.03
香りで気分が上がったり、疲れが和らいだり……。ふとした瞬間に香りの恩恵を感じたことがある人は多いだろう。
その香りを深く掘り下げるために2022年に設立されたのが、THREEのホリスティック リサーチセンターだ。
センター長を務める佐井賢太郎さんに、設立の経緯や、最新の香り事情などについて話を伺った。

PROFILE

佐井 賢太郎(さい けんたろう)

株式会社ACRO THREE ホリスティック リサーチセンター センター長

本物のモノづくりにこだわることで独自性を確立

精油や国産原料にこだわり、日本を意識したモノづくりで2009年にローンチされるやいなや、瞬く間に人気ブランドとなったTHREE。なかでも精油の香りへの支持はブランド発足当時から高い。
「当時は類似ブランドも少なく、鮮度の高い価値提供ができていたのですが、そこから数年が経ち、似たようなデザインやコンセプトのブランドが出てきて、新鮮味という点では薄れてきていました。
正直、私たち自身も『自分たちのブランドにしかないものは何だろう』と話していたんですね。そのとき当時のボードメンバーが『我々は本物のモノづくりをしていて、本物であることがTHREEですよね』と言っていて。
当初は『本物って何だろう』って正直思っていたんですよ(笑)。でも役員にその問いをぶつけたところ『自分の言葉で、商品や開発のプロセスをきちんと表現できることが、本物のモノづくりをしている証しだよね』と返されたんです。確かに偽物を作っていたら、語れるストーリーは少ない。
そう考えて当時のTHREEを見渡すと、設立当初のように精油や国産原料について語れる人が少なくなっていたんです。
ブランドの哲学を発信していくためには、もっとできることがあるのではないか。可能なことに関しては、自分たちで研究・探究をし、自分たちの手足を動かすことが、語れるモノづくりにつながるんじゃないかということで、2022年にTHREE ホリスティック リサーチセンターを設立しました」
ホリスティック リサーチセンターは研究員、調香師、ホリスティックケアのスペシャリストの3部門に分かれている。
研究で得られた知見やエビデンスを基に、調香師は調香を行い、ホリスティックケアスペシャリストは日比谷にある「アロマリウム スリー」で顧客への精油の認知拡大に努めている。

メンバーは畑作りから精油の研究までをカバー

センターに在籍しているのはわずか7人だが、その活動は幅広い。メンバーは畑仕事から、抽出した精油の研究までも行う。
「現在、THREEは熊本に東京ドーム1個分、佐賀に東京ドーム1/5個分ほどの自社畑を持っていて、商品や研究に使用する植物を育てています。土を耕すところから行いますので、1年の約1/4は熊本か佐賀にいますし、畑からリモート会議に出席をすることもあります(笑)。
熊本・阿蘇にある畑では、社員が足を運んで収穫を行う
なかなか大変ではあるのですが、現地に雇用をもたらしたり、耕作放棄地を解決するために管理しにくい土地を借りたりするなど、社会や環境への配慮も重要な役割だと思っています。
現在は熊本と佐賀だけですが、植物の生育特性に合う土地、合わない土地がありますので、今後は日本全国に畑を広げていく予定です」
自社畑ではゼラニウムやジャーマンカモミールなどを生産
ホリスティック リサーチセンターでは、植物に関する研究、精油の抽出など製造に関する研究、そして精油が心・体・肌にどのような効果・効能を与えるかの研究の3領域を、大学などの外部機関とともに進めている。
「たとえば、愛知学院大学の心拍を専門とする先生とは、香りが交感神経や副交感神経、心拍にどのように影響するのかを研究しています。また福岡女子大学では、植物の生育環境によって香りの質がどのように変わるのかを研究しているところです」

心・体・肌に働きかける最新香り事情

実際、香りについてさまざまなことがわかってきているという。そこで佐井さんに外部研究も含め、香りの最新事情を教えてもらった。
「まず香りには鼻から入って脳に届く経路、口から入って肺に届く経路、そして肌に直接的に作用する経路があります。脳の分野では自律神経系と内分泌に働きかける効果が大きいのですが、一番面白い研究としては、香りと記憶が大きく結びついているということでしょう。
また、口から入った香りは、肺から血中へと取り込まれますので、体全体に効果が現れます。
あと、肌にも香りを認識する受容体があるのではないかという研究も進んでいます。たとえば、ある精油が含まれていると他のエキスや成分が肌に浸透しやすくなるというのがあって、その際香り成分が肌に直接的に作用しているのではないかと考えられています」
香りは現在世界中のさまざまな分野で研究が進められているが、比較的新しい研究分野であるため、苦労や試行錯誤も多い。
「苦労はいろいろあるのですが、植物の研究においては、植物は天気や周囲の環境など、さまざまなファクターに左右されるため、同じ条件のサンプルを採取するのは極めて難しいということです」
そう話す佐井さんが取り出したのが、2つのゼラニウムの精油。ひとつは他社品、ひとつは熊本の自社農園で育てたものから抽出したという。
実際に嗅いでみると、他社品は重く甘い香り、THREEのものは青みがあり軽やかで透明感があり、同じゼラニウムとは思えないほど、素人でも香りの違いがわかる。
「ただ、これはまったく同じ品種なんです。我々はGC-MSという成分解析にかけるのですが、同じ品種なのに香りだけでなく、成分までも変わってくるんです。
さらに香りは個人的嗜好がとても強いですよね。これだけ香りが違うと同じゼラニウムを使っていても、こっちは好きだけど、こっちは嫌いという人が出る可能性がある。
ただ、それぞれに良いところと悪いところがあるので、違いを認識して、その良さを際立たせることが精油の価値を高めることにつながると思っています」
自然の産物である以上、人間がブレをすべてコントロールすることは不可能だ。そこで、ただブレていると片付けるのではなく、それが心と体と肌にどう作用するのか定義づけることが重要だと佐井さんは話す。
「良薬口に苦しではないのですが、いくら良い作用があるからといって、心地よくない香りというのは、脳に悪影響を及ぼして、良くない結果になる可能性があります。そこをどう心地よく感じてもらえるのか。ひとつの香りを際立たせないブレンドを行うなど、そのあたりは調香師の腕の見せどころでもあります」
人の香りの嗜好性は、佐井さんが現在進めたいと思っている研究テーマのひとつだという。
「人間も含めた動物の香りの嗜好性は、先天的なものと後天的なものに分かれます。先天的なものは危機回避能力で、たとえば、この食べ物の匂いは危ないといったようなものです。
ただ人間は先天的なものよりも、後天的な香りの方が嗜好性に影響を与えていると言われています。つまり、我々が過ごしてきた環境や、嗅いできた匂いなどで嗜好性が決定されていくのではないかということです。
そう考えると香りの好き嫌いは、自分の人生の歩みを表しているかのように見えてきませんか? 使っている香りからどんな経験をして、どんな人生を送ってきたのかがうかがえるようになったら面白いと思っています」

精油や香りをさまざまな側面から研究し、新事実も徐々に解明されてきている。最新の研究結果はホリスティック リサーチセンターのホームページでアップされているので、ぜひチェックをしてみてほしい。

Text by Junko Hayashida

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