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「健康な人を病から遠ざける方法の1つに“美容”がある」YA-MAN(ヤーマン)と東大が共同開発した新技術の可能性

2024.11.24
美容機器や化粧品で知られるヤーマン株式会社は、もともとは精密電子機器メーカーとしてスタートした企業だ。その豊富な工学的知見をいかし、独自の「表情筋研究所」を設立していることは、以前Fashion Tech Newsでも紹介した。
今回は、ヤーマンの表情筋研究所と東京大学大学院医学系研究科皮膚科学教室が共同で研究を行い、今年論文発表された「CERTECを搭載するデバイスを用いた顔面の老化に対する効果検証」について取材を実施。同教室において美顔器の技術を対象とした初めての臨床研究であり、本論文は『Journal of Cosmetic Dermatology』に掲載され、話題となった。
老化の概念を覆すような、この画期的な新技術「CERTEC(サーテック)」について詳しく話を伺った。

PROFILE

山﨑 謙太朗(やまざき けんたろう)

ヤーマン株式会社
表情筋研究所 所長

PROFILE

佐藤 伸一(さとう しんいち)

国立大学法人東京大学大学院医学系研究科皮膚科学
教授

PROFILE

吉崎 歩(よしざき あゆみ)

国立大学法人東京大学大学院医学系研究科皮膚科学
特任准教授

老化した状態をもとに戻す方法

ヤーマンと東京大学で共同研究開発された「CERTEC」は、どのような技術ですか?
山﨑CERTECは「Cell Energy Regeneration Technology」の略で、熱刺激と電気刺激を両立させたヤーマン独自の新技術です。この刺激を「熱電気刺激」と呼んでいます。
美容技術には、熱、電気、超音波、光という4大エネルギーがあります。そのうちの2つの要素を同時に与えることで、より高い美容効果が得られるのではという仮説を立て、その効果を検証したのが今回の論文です。
CERTECは、RF(ラジオ波)よりも表情筋に近いところで熱電気刺激を肌に与え、しわやたるみに効果を発揮します。論文では、CERTECが顔の皮膚の弾力性を効果的に改善し、しわやたるみを減少させ、血流を促進し、顔全体の見た目の若返りに寄与することを発表しました。
熱刺激と電気刺激を同時に出すというのは、どのような現象なのでしょうか。
山﨑肌は刺激が細かくなると感知できなくなり、代わりに熱として感じます。これは「感知電流の周波数特性」というものです。
たとえば、1秒間に1回腕を叩いた場合、何回叩かれたかわかりますが、1秒間に100回、1000回叩かれた場合はわかりにくく、叩かれる感覚だけが残ります。
これが10万回、100万回と増えると、叩かれる感覚よりも温かさを感じるようになります。
CERTECはこの特性を利用して、1つの電極から熱と電気のエネルギーを同時に出力し、同じ箇所に熱と電気両方の刺激を与えることを目指して開発されました。
CERTECはリバースエイジングを叶える技術とのことですが、リバースエイジングとは何でしょうか。
佐藤一般的には老化とはもとに戻せない生理現象と認識されていますが、ここ5年で老化の研究は飛躍的に進化し、老化現象はもとに戻せる可能性があるということがわかってきました。これがリバースエイジングの概念の背景にあります。
皮膚の老化メカニズムについて説明しましょう。
皮膚の細胞はある程度成長すると分裂が止まり、老化細胞としてその場に留まります。この老化細胞が蓄積されることで老化が進行するのです。
このメカニズムから、老化細胞を減らせば老化した状態をもとに戻せると考えられます。
また、老化細胞は有害物質を出して周りの細胞を老化させてしまいます。
こうしたことから、老化をもとに戻すには2つの方法が考えられます。
1つ目は、老化細胞からでる有害物質を早く排出させることです。リンパの流れをよくすることで、老化細胞をできるだけ早く排出できます。
CERTECの血流促進効果で老化細胞の排出が期待できます。
2つ目は、皮膚細胞の生まれ変わりを促進することです。CERTEC®により血流が改善し、新陳代謝が高まるため、その効果が期待できます。これにより、リバースエイジングの実現が可能と考えられています。
今回のCERTECの臨床試験では、リバースエイジング効果を科学的に測定したとのこと。どのように測定されたのでしょうか。
吉崎本試験は、30~59歳の健常な女性24名を対象に、ハーフフェイスでの効果比較を8週間かけて実施しました。 具体的には顔の半顔にはスキンケアとCERTECを搭載したデバイスを使用し、もう一方の半顔にはスキンケアのみで比較するというものです。 このハーフフェイスの手法は、肌質などの個人差のバイアスを限りなく減らして製品を評価するもっとも厳しい試験方法の一つといえます。  
今回の臨床試験結果では、肌のハリ、ほうれい線、たるみの改善効果が示唆されました。日々継続してCERTECの技術を使用することが有用であると確信させる結果が得られ、リバースエイジングを実証する新たな技術として期待が持てるものとなりました。
今後も研究を続け、生活の向上に資するリバースエイジングのエビデンスを積み重ねていく必要があると感じています。

美容領域は科学的なエビデンスが少ない

CERTECは、ヤーマンと東京大学大学院医学系研究科皮膚科学教室との共同論文にて発表されましたが、共同研究に至ったきっかけを教えてください。
山﨑東京大学大学院からお声がけいただき研究をスタートしましたが、ヤーマンとしても医学的な知見をもつ外部の専門家を求めていたところでした。
双方の研究に対するビジョンや思いが共通していたこともあり、今回の共同研究に至りました。
佐藤私たちは難病の研究を進めてきましたが、一般の方にも研究成果を届けたいと考え、美容研究に領域を広げました。
医療分野ではエビデンスに基づいて治療法を選択しますが、美容領域はエビデンスが少なく、一般の方がどの製品を選べばどのような効果が得られるのか、ほとんどわかっていない状況にあります。
そこで美容分野に科学的エビデンスを導入し、自身にとって最適な製品を選べる環境を提供したいと考え、ヤーマン社にお声がけしました。
吉崎健康な人を病から遠ざける方法として“美容”も有効です。
美容を研究し、エビデンスを積み重ねることは、人々の活力を高め、健康寿命を延ばすことにもつながります。
また、皮膚には神経や血管が多く存在し、皮膚への美容的アプローチが健康にも良い影響を与えられると考えています。美容への関心が高まれば、“皮膚は健康を映す鏡”という認識も広まり、肌の状態から健康を意識する行動につながるでしょう。
ヤーマン社と東京大学大学院の共同研究にはどのような魅力、強みがあるとお考えですか?
佐藤ヤーマン社はもともと精密機械メーカーで、技術面で信頼できる会社です。
ヤーマン社と当教室が共同研究することにより、皮膚科領域に電子工学的なアプローチを導入でき、医学と工学の融合が実現しました。
このようなアプローチは美容分野では非常に珍しく、先駆的かつ最先端の研究になると考えています。
吉崎共同研究といっても、実際には一方がもう一方に研究を丸投げして監修だけを行うといった、形だけのものも多いです。しかし、私たちはお互いの強みを生かし、対等に研究を進められています。
私たちは医学部に所属していますが、実は医者が研究でできることは限られており、新しいことに取り組む際には工学的な手法が必要となります。
長年、医工連携の研究を続けてきましたが、ヤーマン社と連携するにあたって本社を訪問したところ、まるで東大工学部かと思うほどの機器が揃っており、一般的な美容メーカーとは一線を画す企業だと感じました。
ヤーマン社との共同研究を通じて、健常な方も皮膚の悩みを多く抱えていることを知り、私自身の視野が広がりました。日常臨床についても患者さんの困りごとをより深く理解できるようになったと感じております。

医療応用の可能性と今後の展望

CERTECは持続的に血行をよくする効果があるとのことで、美容だけでなく医療への応用の可能性はあるのでしょうか。
山﨑まだできたばかりの技術なので医療への応用事例はありませんが、可能性はあります。ただ、医療応用には多くの臨床試験や認証が必要でかなり高いハードルがあります。
まずは美容の分野での活用を目指していきます。
今後の展望についてお聞かせください。
山﨑今回の論文ではCERTECの熱電気刺激による外形的効果は検証できました。
今後も当教室との研究を継続し、細胞や遺伝子レベルでの効果検証も行っていきます。新たな発見があると確信していますので、また論文でご報告できればと思います。
「老化はもとに戻せない」という一般的概念を覆す新技術CERTECの、今後の研究結果や応用の発表が待ち遠しい。

Text by 継田 理恵(美容家/ライター)

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