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「没頭すれば心が軽くなる」ー 洋輔が教える、今こそ始めたい“手芸”という癒し
編み物を筆頭に多くの人が関心を寄せる手芸ブームは、動画配信やSNSの普及でより身近になり、今年から始めようと考える人も多いだろう。
編み物やミシン縫いなどさまざまなジャンルがある洋輔なかで、「刺繍」や「キルト」には憧れつつも難易度の高さを感じる人もいる。そんな私たちが感じる「壁」を取り払ってくれるのが、手芸家の洋輔さんだ。
洋輔さんはハワイアンキルトの第一人者・キャシー中島の息子であり、モデル・俳優業の傍ら手芸家・デザイナーとしても活躍している。NHK番組「すてきにハンドメイド」などで、すでに知る人も多いだろう。
洋輔さんの鮮やかな作品はどのように生み出されるのか。今回は、彼の経験とともに手芸と刺繍の魅力について語ってもらった。
PROFILE

洋輔(ようすけ)
1999年に俳優としてデビューしたのち2010年に休業し、渡仏。「エコール・ルサージュ」でオートクチュール刺繍、「エコール・ド・サンディカ」で服飾全般を学び、帰国。2017年に自身のブランド「KATSUNO」を設立。同年4月よりNHK Eテレ「すてきにハンドメイド」のMCに就任。各メーカーとの製品コラボや全国各地の講演会・講習会など手芸家の枠を超え、タレント・デザイナーと多岐にわたり活躍中
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褒められたことがきっかけになったクロスステッチ
テンポよく針を動かし、次々と作り出される洋輔さんの作品には、思わず手芸に挑戦したくなる魅力がある。
動画でも手芸についてさまざまな情報を発信している洋輔さんだが、手芸との出会いはいつだったのだろうか。
「僕が手芸と出会ったのは小学校5年生のときです。母親から刺繍キットをもらったのがきっかけでした。そのキットは姉2人と僕の3人に渡されたのですが、僕だけが全部作り上げることができたんです。
クロスステッチのキットだったのですが、少し飽きてきたと思ったときに、周りから褒められたりアドバイスをもらったりすることが多かった。針と糸を使って何かを作ると褒められるという感覚は、その時に覚えましたね」
あのキャシー中島さんも認めるほど、手芸は洋輔さんに向いていた。気がつくと、いつの間にか作品が完成していたという。
しかし意外にも、本人にとって最初の手芸は「楽しい!」といった感覚ではなかったそうだ。
「どちらかというと、『無』に近い感覚です。僕の場合、楽しい! と思ってしまうと逆に嫌いになる可能性もあるので、フラットに取り組むのが合っているのだと思います。
手芸キットは決まったデザインを完成させるので、色塗りやパズルの感覚に近くて、全然嫌だとは思いませんでした。疲れると少しネガティブになりますが、それでも褒められると頑張れるので、気がついたら完成していたんです」
文化服装学院と人生の道標になったフランス留学
ただ小学生のときに刺繍とは出会ったものの、その後は特に手芸にハマることはなかった洋輔さん。手芸を再開することになったのは、文化服装学院がきっかけだった。
「役者を目指していろいろ活動していた時期でもあったので、あまり関心が向かなかったですね。手芸をまた始めたのは、大学をやめたいという相談を両親にしたときに、文化服装学院に入学するという条件を出されたことがきっかけでした。
後から知ったのですが、母の中では何か手に職をつけさせたいという思いがあったようです。その『何か』につながるヒントが手芸にあるかもしれないと考えていたらしくて。最初は服飾を学ぶことには興味がなかったのですが、子どもの頃に刺繍で褒められた経験があったので、クロスステッチなどには興味がありました」
文化服装学院では、刺繍も学べる帽子デザイン科を専攻し、それまでまったく帽子に興味がなかったのにも関わらず、一気に帽子作りの楽しさにのめり込んだという。
「刺繍だけではなく、デザイン画を描くのも楽しくなって、最終的には帽子職人になりたいと考えるほどになりました。でも、卒業のタイミングで大きな舞台の仕事が入ってしまい、結局中退で断念してしまったんです。
ちょうどその時に姉(長女・七奈美さん)が亡くなり、いつまでも続くと思っていたものが、突然崩れ去るという経験をしました。そのことがきっかけで固定観念が全部なくなり、どう生きていきたいのかを真剣に考えたときに浮かんだのが“留学”でした」
留学を両親に相談したときに条件として出されたのが、語学以外に「手に職」になるものを学ぶことだった。こうして再び洋輔さんは「刺繍」と向き合うことになる。

「フランスではエコール・ルサージュという、オートクチュールの刺繍を学ぶ学校に入学しました。フランスでは日本の専門学校と違って、カリキュラム以外のことはできません。決められた内容の中でさまざまな技法を学びました。
次第に自分の刺繍を作りたいと思い、フランスのファッションデザイン専門学校を受け直しました。最初はフランス刺繍を1年で学んで帰国する予定でしたが、結局トータルで5年間学びました」
洋輔さんにとってのフランス留学は、刺繍の技法以外にも多くのことを学べた経験となったという。芸術の都と称されるパリだが、色彩などの影響も受けたのだろうか。
「色彩に関しては、やはり母の影響が強くて、ハワイアン・キルトの華やかな影響を受けていますね。ですので、僕の作品はどうしてもカラフルな感じの作品が多くなります。
フランスで影響を受けたのは、生き方や自分というものに対する見つめ方です。留学していろいろな国の方に出会うことができたので、手芸の勉強をしに行ったのですが、人生勉強をして帰ってきたようにも思います」
自分に合う手芸は必ずある
SNSやYouTubeで洋輔さんの作品を見て、今年は手芸に挑戦してみたくなった人も多いだろう。特に黒やグレーを多用したシックな色使いのものは、男性でも取り入れやすい雰囲気だ。キルトのワークショップは女性に人気のイメージが強いが、その垣根も徐々に薄れているという。
「もちろん、ワークショップは初心者の方も男性の方も大歓迎です。人に教えるようになってから気がついたのですが、意外と僕は教えるのが得意で、特に男性に教えるのが上手だと自分では思っています(笑)。
僕は手芸に関しても、男性脳と女性脳があるのではないかと思っています。男性は縫うときに、こうすることによってどうなるかという原理を知りたがります。その原理さえ知ってしまえば、男性でも手芸の細かい作業や上達も早いと思います」
僕は手芸に関しても、男性脳と女性脳があるのではないかと思っています。男性は縫うときに、こうすることによってどうなるかという原理を知りたがります。その原理さえ知ってしまえば、男性でも手芸の細かい作業や上達も早いと思います」
また、人には必ず自分の特性に合う手芸があると洋輔さんは話す。自分が不器用だと思っている人にとっては、心強い言葉だ。
「僕は人間のDNAの中には、物を作り出す力があると信じていますね。手芸にはさまざまな要素がたくさんあります。
たとえば、ソーイングの場合は縫い順というのがあるので、組み立てるのが好きな人は得意なはずだし、刺繍は色塗りが好きな人にとても向いています。
ビーズ刺繍はパズル好きの人に向いていますし、手芸もいろいろなジャンルがあるので自分に当てはまる手芸が必ず1つはあると思います。自分にしっくりはまる手芸を見つけるまで探し続けてほしいですね」
最近は手芸がデジタルデトックスになることも注目されている。スマホから離れて何かに集中することで、瞑想効果に近いものが得られるそうだ。日々の生活の中で息抜きとして手芸をすると、余裕ができて心が軽くなるという。

「僕自身も嫌なことなどは手芸に救ってもらうことが多いですね。手芸をすると時間があっという間に過ぎるので、嫌なことも没頭しているうちに案外忘れちゃったりします。
手芸はやれば必ず身につきますし、気がつけば完成して達成感も得られるので、今後も手芸を始める人が増えるとうれしいですね」
洋輔さん曰く、1990年頃はキルト元年とも呼ばれ、キルトがブームになった時代だという。そして、平成の時代を経て、キルト業界もまた見直されてきている。その動きは現在の手芸ブームだけでなく、サステナブルやSDGsにも繋がり、まさにこれから盛り上がる業界になっていくことだろう。
デジタルデトックスにもなり、エコにもなる手芸。今年から、新たな趣味として始めてみるのもいいかもしれない。
Text by Tajimax





