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2023.06.08

“着るコラーゲン” 魚の鱗を活用した天然の繊維「FILAGEN(フィラジェン)」を開発、日本市場にも展開

2019年、長年繊維業に従事していた現代表のSteve Hwangや、コラーゲン繊維を開発したタイ企業、糸や生地の開発、生産を担う中国・台湾企業が共同し、韓国で創業したフィラジェングローバル。主力商品として「着るコラーゲン」とうたう繊維「FILAGEN(フィラジェン)」を展開して注目を集めている。
近年、欧米やアジアで広がりを見せるなかで、日本においても少しずつ導入が始まっているFILAGEN。そこで今回、フィラシジェングローバルの日本展開を担当しているエージェントの宮坂健さんに、FILAGENとは何か、その機能や今後の展開までを伺った。

魚の鱗から採れたコラーゲンを活用

FILAGENとは、ブナ木材のチップ(パルプ)と魚の鱗から採れたコラーゲンペプチドを原料として配合することで生まれた天然由来の繊維だ。2009年にタイのGEP Spinning社が開発し、その後の研究開発と試験を経て2017年に特許を取得し、グローバル展開を開始した。
そもそも、なぜ魚の鱗にあるコラーゲンに注目したのだろうか。
「台湾では、サバヒー(ミルクフィッシュ)という魚が、一般的によく食べられているのですが、それにより、当然その鱗や皮、骨といった部分が大量に廃棄されていました。
そこで、『これらを何か有効的に活用できないのだろうか』とGEP Spinning社が研究に乗り出しました。タイの会社である同社がこの台湾の魚の鱗に注目したのは、代表が台湾人の研究者だったことによります
魚の鱗のコラーゲン自体は、過去に化粧品やコラーゲンパックに活用されるなど、いくつかの分野で実用され、広がりを見せていました。
そのなかで、『コラーゲンを繊維に混ぜたら面白い商品が出来るのではないか』というアイデアから、実験がスタートしました。
実は、開発当時はSDGs的なリサイクルを第一の目的としてはいませんでした。あくまで大量廃棄でコラーゲンがたくさん手に入ることから、それを用いたビジネスを立ち上げることがスタートでした。それが結果的に地球環境への貢献にもつながることになりました。
研究開発を通してナノテクノロジーにより、FILAGENには保湿性や抗菌防臭、抗紫外線、肌の快適さなどの機能を持たせることが可能となりました。またFILAGENはすべて天然の素材でできているため、肌にも地球にもやさしく、さまざまな機能を後加工した他の素材との差別化にもなっていると言えます」

FILAGEN開発と展開にあたっての工夫とは

FILAGENを開発し、実際に繊維として展開するにあたって、どのような工夫や苦労があったのだろうか。
「当初、いくつかの会社がカプセル型コラーゲンを様々な繊維と組み合わせたり、コーティング加工を試みたりしましたが、洗濯などによりコラーゲンが脱落するといった問題を解決できませんでした。FILAGENはナノテクノロジーによりこれらの問題を解決しましたが、次にFILAGENが持つ機能を発揮しながらも、経済性を維持し、消費者の手に届く価格を実現するバランスが一番大変な問題で、その試行錯誤に時間を費やしました。
現在、原料段階では通常のコットンの5割ほど高いのですが、商品化できる価格まで抑えられています。また、繊維の表記としてはレーヨンとなりますが生地強度として日本の繊維基準に対して問題ない水準に到達しています。こうした研究開発を踏まえ、2019年に会社を立ち上げ全世界に展開することになりました。
ただ、ちょうどこの時期からコロナ禍となり、展示会にも出展ができなかったため、2022年にコロナがある程度落ち着いた段階で、世界各地に私のようなエージェントを立てて販売を開始しました」
また、海外と比べて日本での展開はやや遅れてのスタートになったという。そこには、日本の厳しい基準に対応する必要があった。
「FILAGENにはシルクのような特有の光沢感と柔らかさがありますので、海外ではその見た目の美しさや肌触りを第一に評価いただくことが多いです。さらに、コラーゲン繊維という付加価値に強い関心を持ってもらえるため、商品化の話が一気に進みます。
しかし、日本は付加価値がある場合には、まずはそれを裏付けるデータなどの証明が必要となるビジネススタイルであるため、製品化に時間がかかります。それが、日本での展開が遅れた大きな理由ですね。現在は各機能試験をクリアしたデータを取得しています」
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