【第2回】人間国宝・前田昭博の白磁との出会いと陶芸家としての覚悟
2025.12.08
【第2回】人間国宝・前田昭博の白磁との出会いと陶芸家としての覚悟
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父親が版画をする姿を見て、芸術の世界に興味を持ち始めた幼少期の前田昭博さんは、その才能を遺憾なく発揮してきた。大学に入学し、本格的に陶芸の技術を学んでいく日々が始まった。
第2回では、大学で陶芸に触れ、生業となる白磁との出会いを追いかける。何もかもが初めてだった前田さんにとって、陶芸実習は苦労の連続だったというが、それでも卒業する頃には陶芸の魅力にどっぷりと浸かっていた。白磁を極めるという覚悟はいかにして生まれたのか。

初めての轆轤挽き

大学で陶芸を専攻すると、避けて通れない技術のひとつに轆轤(ろくろ)成形があった。陶磁器の制作においては、これがすべての要となる。これまで図画工作や絵画に取り組んできた前田さんは、轆轤に触れるのが初めての経験だった。

「初めはなかなか轆轤をうまく挽くことができなかったんですよ。諦めようかと思ったくらいですから。でも、課題を提出しないと進級できませんから、必死になって取り組みました。そうするうちに、少しずつその楽しさがわかってきました」

一度コツを掴めば、あとは練習するのみだった。毎回の課題が楽しみになるほど、前田さんは轆轤挽きに惹かれていったという。大学の講義では基礎的なものしか学ばなかったが、3年生の夏には、高さ30cmを超えるほどの壺も挽けるようになっていた。

「僕は田舎から出てきたので、お金もなかったし、友達付き合いも得意じゃありませんでした。ですから、実習室でひたすら轆轤に向き合っていたら、いつの間にか上手になっていたんだと思います」

黙々と目の前の轆轤に向き合っていると、運命的な出会いが前田さんに訪れた。

見た目以上に力加減が難しい面取り作業
見た目以上に力加減が難しい面取り作業