大学で陶芸を専攻すると、避けて通れない技術のひとつに轆轤(ろくろ)成形があった。陶磁器の制作においては、これがすべての要となる。これまで図画工作や絵画に取り組んできた前田さんは、轆轤に触れるのが初めての経験だった。
「初めはなかなか轆轤をうまく挽くことができなかったんですよ。諦めようかと思ったくらいですから。でも、課題を提出しないと進級できませんから、必死になって取り組みました。そうするうちに、少しずつその楽しさがわかってきました」
一度コツを掴めば、あとは練習するのみだった。毎回の課題が楽しみになるほど、前田さんは轆轤挽きに惹かれていったという。大学の講義では基礎的なものしか学ばなかったが、3年生の夏には、高さ30cmを超えるほどの壺も挽けるようになっていた。
「僕は田舎から出てきたので、お金もなかったし、友達付き合いも得意じゃありませんでした。ですから、実習室でひたすら轆轤に向き合っていたら、いつの間にか上手になっていたんだと思います」
黙々と目の前の轆轤に向き合っていると、運命的な出会いが前田さんに訪れた。