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2024.01.25

「MOONSTAR(ムーンスター)」150年の歴史と未来を担うスニーカー「810s(エイトテンス)」

昨年150周年を迎えた「MOONSTAR(ムーンスター)」。その長い歴史を振り返ると、足袋作りにはじまり、その技術が現在の定番商品「810s(エイトテンス)」へ繋がっている。
今回はMOONSTARのルーツと810sの定番アイテムについて、株式会社ムーンスター ライフスタイル企画課 柴田将喜さんと、マーケティング課 横田ちなみさんにお話を伺った。

はじまりは『つちやたび』という足袋作り

まずはMOONSTARの150年の歴史から振り返っていきたい。創業から今日の名門シューズブランドとなるまでを横田さんにお話しいただこう。
「創業者は倉田雲平(くらたうんぺい)という人物で、1873年(明治6年)『つちやたび』という屋号で、室内で履くための座敷足袋作りからスタートしました。その足袋を縫製するためのミシンを輸入するのですが、1920年にミシン会社の方が来社された際に持参していただいたアメリカ製のキャンバスシューズを見て、『ゴム底を足袋の底につけることで外でも履けるのではないか』という発想が生まれたそうです。
それが実現し、地下足袋が誕生するのは創業から50年が経った1923年のことです。そして1925年には運動靴(紐付きキャンバスシューズ)やゴム長靴の製造も開始していきます。座敷足袋、地下足袋、運動靴、ゴム長靴とラインナップがどんどん増えていった時代でした」
創業者の倉田雲平氏
創業者の倉田雲平氏
1922年(大正11年)地下足袋第1号ソール
1922年(大正11年)地下足袋第1号ソール
地下足袋と運動靴の広告、1920年代(大正時代)のもの
地下足袋と運動靴の広告、1920年代(大正時代)のもの

アメリカで展開された「ミスタースニーカー」

座敷足袋以外にもさまざまな履きもの作りを展開していくなか、1950年代にはスニーカーが中心的な存在に移り変わっていったという。
「戦時中は日本軍のブーツを作ったり、戦後は南極観測隊の靴を作ったりと事業がどんどん広がっていくなか、1952年ヘルシンキオリンピックでマラソン日本代表選手への商品提供を行いました。この出来事がターニングポイントとなり、翌年にバスケットシューズを発売。その後もテニス、ゴルフ、野球、サッカー、登山といった各スポーツへの展開を強化していきます。
1950年代はスポーツシューズで発展した時代だったそうです。そして1960年代に入ると、アメリカ、ヨーロッパをはじめとする各国に輸出を実施し、アメリカで発売した『ミスタースニーカー』は全米に布靴ブームを巻き起こしました。
現在でも地下足袋はスニーカー工場と同じ場所で作り続けているのですが、やはりこのぐらいの時代からスニーカー展開の規模がどんどん大きくなっていきました」
戦後使われていた南極観測隊のブーツ、MOONSTARのロゴも入っている
戦後使われていた南極観測隊のブーツ、MOONSTARのロゴも入っている
MOONSTAR製のブーツを履く南極観測隊
MOONSTAR製のブーツを履く南極観測隊
アメリカで発売されたミスタースニーカー
アメリカで発売されたミスタースニーカー

歴史を継承する「FINE VULCANIZED」というライン

MOONSTARのスニーカーを語るうえで「ヴァルカナイズ製法」の話題は避けては通れない。このヴァルカナイズ製法について、ここからは柴田さんにお話を伺っていこう。
「ヴァルカナイズ製法とは、加硫と呼ばれる硫黄を加えたゴム底と靴本体を接着し、釜に入れ熱と圧力をかける製法のことで、国内では現在、この製法で靴作りをしている工場はわずかとなり、自社に工場があってしっかりと生産ラインが組まれている環境となるとさらに希少になると思います。
この昔から続くヴァルカナイズ製法の靴を現在のMOONSTARでは『FINE VULCANIZED(ファイン ヴァルカナイズド)』というラインで商品展開しています。アイテムが豊富にラインナップされるなか、1960年代に生産していたトレーニングシューズを現代に再現した『GYM CLASSIC(ジム クラシック)』というモデルが、MOONSTARのルーツを感じられるアイテムだと思います」

810sというこれからのスタンダード

現在もっとも話題の810sというラインを紹介してもらおう、長い歴史の中でさまざまな靴作りで培ったノウハウを持ったMOONSTARだからこそ、実現したプロダクトが揃ったラインとなっている。引き続き柴田さんにお話しいただいた。
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