前職で「SHELTECH®」を開発された同社代表の松井善孝さんに、「AIR✕AIR」の特許申請中の技術と、この素材のもたらす繊維業界の未来について語っていただいた。
PROFILE|プロフィール

松井 善孝(まつい よしたか)
1997〜2010年:名古屋の旭屋で製品部として商品開発、素材開発のイロハを学ぶ。
2010〜2022年:入社当時は縫製工場であった皿海衣料にて製品の縫製と素材調達の流れを学びながら、他社と差別化できる生地開発を推進。2012年より取締役として、同社の経営サポートを担当。
2022年4月〜現在:株式会社MIRAISOZAIを立ち上げ、遮熱性の高い、快適性を追求した新しい生地・糸の開発を行っている。
機能性を高めても、スポーツライクにならない素材感松井さんが株式会社MIRAISOZAIを設立したのは、日本の優れた繊維工場の技術が失われつつあることへの強い危機感があったからだった。ファッション業界では、ポリエステルやナイロンといった合成繊維には特有の機能性が求められ、主にスポーツウエアで利用されてきた。しかし、機能性を付与すると独特の光沢感が生まれてしまう欠点があった。
「私たちが目指したのは、機能性を追求しつつも、まるで上質なコットンのような自然な風合いと肌触りを実現することでした。ファッションアイテムとして、違和感なく日常に溶け込める素材を追い求めてきたのです」
この高い目標を達成するために、既存の製法にとらわれない新しいアプローチが求められた。それは、合成繊維が持つ機能的なポテンシャルを最大限に引き出しつつ、同時にその弱点とされてきた風合いの課題を克服するという、非常に高度な技術を要するものだった。