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2024.01.16

自然から育みへ:AIZOME Textilesの健康へのアプローチ

シカゴを拠点に日本とドイツにオフィスを構える日系繊維スタートアップAIZOME Textiles(アイゾメ・テキスタイルズ、以下AIZOME)は、シーツや枕カバーなどの寝具製品の製造・販売を専門としている。これらの製品は、GOTS認証のオーガニックコットンに加え、日本の伝統的な藍染に根ざした染色技術により、合成化学物質を一切使用せずに作られている。今回、当社の共同設立者であるマイケルとミサ・メイに話を聞く機会を得た。

AIZOMEのはじまり

AIZOMEのストーリーは、ある深い個人的な経験から生まれた。共同設立者であるマイケルは、彼の母親のがん闘病中に、彼女が織物に含まれる合成染料によって引き起こされる深刻な皮膚反応に苦しんでいるのを目の当たりにしたのだ。当時を振り返って、「病弱な母の介護をしながら、従来の織物の染料が母の肌に悪影響を及ぼすのを目の当たりにし、ほとんどの織物に驚くほど一般的に使われている石油化学染料の隠れた健康被害を知ることになったのです」と語る。
この発見に突き動かされ、マイケルは日本に移住、パートナーのミサと出会い、彼女とともに繊維産業の新たな挑戦に乗り出した。マイケルの医学研究の専門知識と、藍染という古代の技法に彩られた日本の豊かな伝統を生かし、ふたりは植物由来の染料のみで着色された新しいテキスタイルの開発に着手した。
マイケルはこう説明する。「オーガニックというラベルにもかかわらず、従来の寝具は石油化学合成着色料に頼ることが多い。AIZOMEは、主に植物、時には鉱物など、純粋な天然素材を使用することにこだわっています。私たちは、繊維製品が特に敏感肌の人に与える影響の大きさを痛感しています。アメリカでは、年間約25%の人が慢性的な皮膚疾患に悩まされています。繊維製品の表示には透明性がなく、基本的な繊維の含有量、原産地、お手入れ方法しか記載されていないのが普通であるため、農薬やホルムアルデヒドのような潜在的に皮膚を刺激する物質の存在が隠されている。私たちは透明性を追求し、石油由来の製品を一切使用しないことで、繊維業界におけるユニークな存在として差別化を図っています。」
AIZOMEは天然素材へのこだわりで際立っている。石油化学染料を使用する一般的なオーガニック寝具とは異なり、AIZOMEは植物由来の染料を使用し、なかでも特に藍を使用している。この戦略は、定期的な廃水検査とともに、プラスチックやその他の有害な化学物質に関連する有害物質が製品に含まれていないことを保証している。敏感肌のためにデザインされたAIZOMEの寝具は、健康志向のライフスタイルを象徴している。
同社の染料選びのアプローチは、単なる見た目の美しさにとどまらない。それぞれの染料は薬効を考慮して選ばれ、その製品の持つ健康への効果を高めている。たとえば、藍は抗菌作用があることで有名で、さまざまな伝統薬に使われてきた歴史がある。ローズ・ルビアイスは、血液循環を整える植物として知られるマダーから染められている。つまり、AIZOMEの寝具は単なる装飾品ではなく、「healthcare you can wear(身体に纏うヘルスケア)」なのだ。

伝統とテクノロジーの融合: AIZOME ULTRA™

2018年、AIZOMEは、洗濯による色落ちや薬効成分の損失といった藍染生地の限界を克服する、AIZOME ULTRA™技術を発表した。染色工程で52.5Hzの超音波を利用することで、染色液中に微細な気泡を発生させ、藍成分の結合を高める。この技術により、環境負荷や水の使用量を最小限に抑え、高品質な製品を大量生産することができる。
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