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2023.09.19

Levi'sの謎ライン「RED」とは何か? コレクター集団が超解説

リーバイス 。言わずと知れたジーンズの世界的ブランドだ。
1853年に創業し、1873年に現在のジーンズの原型を完成させる。アパレルの一大ジャンルの原点であり、歴史そのもの。これほどファッションに影響を与えたブランドは今後生まれ得ないのではないか。
それゆえリーバイスは複雑怪奇と言えるファッションの楽しみを生み出してきた。素材、染め、縫製、セルビッジ、リベットなどのディテール一つひとつからジーンズの魅力は宇宙的な広がりを持って世界の愛好家を熱狂させている。501XX、大戦モデルなどのヴィンテージ、最新のデザイナーズコラボ、別注や店舗限定販売を集め続けるコレクターはある意味でリーバイス自身よりもリーバイスを知っている。
なかでも超がつくほど謎の多いラインがある。それが「リーバイス ®️レッド」通称「RED」だ。本記事ではコレクター集団「REDの会」に取材を実施。実物を多数紹介しながら、公式情報が存在しないジーンズの深みへと潜ってみた。
※記事内画像はすべて「REDの会」提供

Levi’s公式もアーカイブ不可能?「謎のデニム」

「RED」は1999年にスタートしたリーバイスの特殊なシリーズである。毎シーズン新作が発表されていたが2009年にリリースを停止。その後断続的に復活・復刻があり、最新リリースは2022年だ。日本のリーバイス公式サイトには現在(記事執筆時)も2021年AWコレクションのページが存在するが、ラインそのものの説明はほぼ書かれていない。
しかしその製品群は一着一着が驚くべき多様性を持っていると「REDの会」は話す。
「『RED』は主に1年(SS、AWシーズン)ごとにデザインテイストがまったくと言っていいほど変わるのです。しかも毎回きわめて実験的なジーンズが発表されてきました」
公式では情報がアーカイブされていないのか。
「詳細は不明ですがアーカイブ不可能なのではないかと思います。数冊の非売品のプレスブックがありますが、そこにもすべてのモデルは掲載されていません。というのもリーバイスは各国に現地法人があり、それぞれが独自に『RED』を企画してきました。宣伝も販売網も国ごとに全然違う。そのため全体像を把握できないのではないかと」
アーカイブという概念すらない時代から続く巨大なグローバルブランドだからなのか。そこで「REDの会」は自らREDの年表を作ろうとしている。
「私たちは各メンバーが100着以上の『RED』を所有していますが、それでも全種類を把握できているとは考えていません。いまだに新しい個体が発見されることがある。まだ見たことのない『RED』があるんです」

驚異のコレクターネットワーク

取材に参加した「REDの会」メンバー
取材に参加した「REDの会」メンバー
「REDの会」は現在9名。うち女性1人を含み、リーバイス関係者はいない。製品や情報はどのように集めているのか。
「販売当時の『RED』は生産数と取扱店が非常に限られている希少性も特徴でした。国内遠征は当たり前。スペインに『RED』を扱う有名店があり、そこへ寄るために新婚旅行の行き先をスペインにしたメンバーもいます。それでも当時は売れ残ってセールになっていることもありました。もちろん買い占めるわけですが(笑)」
モデル名:「1ST COAT」(リリース:1999年) 『RED』がデビューしたロンドンコレクションのプレスサンプル
モデル名:「1ST COAT」(リリース:1999年) 『RED』がデビューしたロンドンコレクションのプレスサンプル
「ほとんどのモデルが販売終了した現在では、フリマアプリ、オークション、古着屋のサイトを掘ります。1時間ごとにメルカリを見ているメンバーもいます。情報収集はリーバイスの店舗スタッフから話を聞くこともありますが、ウワサ程度です。有用なのは主に個人ブログやSNS。国内外でリリースを発見すればすぐにメンバーでシェアし、Instagramで海外のコレクターや関係者と繋がり情報交換することも。『RED』はユーロ圏発祥であるため海外ガチ勢の情報は特に濃いですね」
上:T2 JACKET/下:WINGS(2008年)
上:T2 JACKET/下:WINGS(2008年)
国境を超えた草の根活動だ。メディアの取材記事はないのだろうか。
「ほぼ存在しません。2021年に海外のジーンズ専門メディアで1度だけ『RED』のデザインリーダー(リッキー・コフ氏)のインタビューが行われ、英語記事を発見したときは湧きに湧きましたね。それ以外ではストレートに『RED』の歴史を取材した記事はありません」
中心的なデザイナーはリッキー・コフ氏とマイルス・ジョンソン氏と言われるが、2人ともメディア露出を控え「RED」を語ることを避けてきた。マーケティング視点で見ても異質であり、コレクターたちに挑戦しているようにも思える。
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