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2024.01.19

アリス・ポッツ:バイオテクノロジーと汗の結晶による ファッションアクセサリー

ファッションとバイオテクノロジーが融合する分野において、アリス・ポッツはその革新的なアプローチで注目を受けている。ロイヤル・カレッジ・オブ・アートを卒業し、アテネのオナシス財団でレジデンスを経験した彼女は、バイオマテリアルの専門家だ。彼女のユニークな手法はファッション業界だけでなく、Vogue Germany、i-D、Dazed、WIREDなど多くのメディアからも注目を受けている。今回、アリス本人に彼女にの生い立ちや汗の結晶を作るに至った経緯について、話を伺った。

科学への関心

ファッションとバイオテクノロジーを結びつけるアリス・ポッツは、双子の兄弟と共に育ち、横浜を含む様々な文化的背景の中で育った背景を持つ。もとより科学と数学に強い関心を持っていたものの、その後テキスタイルとファッションへと進路を変更し、科学と芸術の交点で卓越したキャリアを築き始めたそうだ。振り返って、「子供時代、私は少し迷っていました...科学に引き寄せられる一方で、テキスタイルの魅力にも惹かれていました。テキスタイルはまるで第二の皮膚のように感じられたんです」とコメント。
アリス・ポッツ<br>photo by James Stopforth
アリス・ポッツ
photo by James Stopforth
そしてロンドンで、ファッションアクセサリーについて学び始めた。2016年にロイヤル・カレッジ・オブ・アーツに入学した当時、バイオマテリアルに関する講義はなく、全てが手探りだったそうだ。ある晩、パブでプロダクトデザインの友人らがバイオマテリアルに関する課外活動プロジェクトの話をしているのを耳にして、すぐプログラムのコーディネータに電話をかけ、参加できないかと頼み込んだそうだ。
「何百万年も何千万年も培われてきた世界と、その完璧な設計レベルが生物学に由来しているということは、驚きでした。植物が成長する方法、私たちの体を自律的に意地する方法、人間がそれを再現することは決してできません。だからこそ私にとってバイオテクノロジーの世界に入るということは、自然の生物学的素材が持つ最高のデザインのプラットフォームを使って、私たちが身につけるファッション製品をどのように向上させるかということでした。単に材料を買ってきて作るのではなく、分子レベルでファッションに立ち向かおうとしているようなものでした。」

汗の結晶

@Bradley Ingram
@Bradley Ingram
課外活動のプログラムへの参加を起点に、彼女は生分解性素材の開発に着手し始めた。なかでも、INPerspireプロジェクトは、彼女のキャリアにおいて画期的な取り組みとして位置づけられる。
INPerspireプロジェクトで彼女は、人々の汗から得られた結晶で飾られた通常の野球帽を、非凡な芸術作品に変えた。このユニークなプロジェクトには、合計8人の背景やライフスタイルの異なる参加者を迎え、6週間に渡って同じ野球帽を被ってもらったという。ポッツは、「このプロジェクトは、個々の本質、彼らのライフスタイル、身体性を捉え、それを触れることのできる視覚的な形に変えることについてだった」と指摘する。
このプロジェクトを通じて彼女は、形成される汗の結晶の種類が、食生活、ライフスタイル、性別などの個人的な要因によって顕著に異なることを発見したという。これらの結晶の微妙な相違点はクロマトグラフィーを使用してさらに分析され、実際に6週間後の野球帽は、汗の個人個人の生物学的な構造を反映したユニークな結晶構造を形成している。
@Evie Hodgkins
@Evie Hodgkins
実際に結晶を作るには、多量の汗が必要であるため、彼女はアスリートとコラボレーションすることが多いという。作品を作るにあって、参加者には6週間毎日、汗をかいて、収集することが求められた。そうして収集された汗は、純度の高い塩の粉を抽出するために、蒸留プロセスに似たろ過をのプロセスを踏む。「例えば香水をたくさんつけている人が汗をかくと、古い皮膚がたくさん出てきます。また、皮膚には天然の油分も含まれています。こうした余分なものをろ過のプロセスで取り除くのです。」そうして精製された汗は、製品上で結晶構造として有機的に成長するように、「接着剤や接着材は使用せず」、独自の方法で再統合される。
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