音響システムの進化は目覚ましい。ノイズキャンセリングイヤホンや骨伝導対応のイヤホン、サウンドバーの登場は、私たちにまったく新しい音楽体験を提供してくれた。もはや、これ以上の技術的進化はないのではないか。そんな思いすらよぎってしまう。
だが、安心してほしい。そんな疑念を払拭する新たなスピーカーがある。それが産業技術総合研究所(以下、産総研)の吉田学さんが研究を進めている「ファブリックスピーカー」だ。その名の通り、布から音が発せられるもので、SFのような世界が現実になりつつある。 今回、吉田学さんにこの「ファブリックスピーカー」の研究プロジェクトについて概要をお聞きした。
PROFILE|プロフィール
吉田学
1999/4-2001/3(財)科学技術振興事業団 戦略的基礎研究推進事業(CREST)特別研究員
2001/4-2009/9 (独)産業技術総合研究所 光技術研究部門 入所 任期付研究員
2009/9-2012/6 (独)産業技術総合研究所 フレキシブルエレクトロニクス研究センター 主任研究員
2012/7-2013/6 (独)新エネルギー・産業技術研究開発機構(NEDO) 電子・材料・ナノテクノロジー部 主任研究員
2013/7-現在 現職
2017/10-現在 埼玉大学大学院 連携教授 兼任
センシング研究から新たなスピーカーの模索へ
産総研とは、どのような研究機関ですか。
産総研は、日本に3つしかない特定国立研究開発法人のひとつです。本部である東京、つくばに加え、全国12ヶ所に研究拠点を配置しています。 産業界との共同研究や民間企業、大学、公的機関との連携に力を入れていることが特徴ですね。研究分野としては大きく7つありまして、約2,200人の研究者が在籍しています。私が所属しているのは、「エレクトロニクス・製造」という領域の「センシングシステム研究センター」になります。