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海外のヴィンテージマニアも称賛! 修復オーダーが絶えない「Blue Champion」の職人技とは?

2025.06.11
大切なものほど、日々のメンテナンスが欠かせない。
そのなかでも、“蘇らせる”という職人技で多くのファンを魅了しているのが、新潟市に店を構えるデニム専門リペアショップ「Blue Champion(ブルーチャンピオン)」だ。
国内外から修復の依頼が絶えない同店は、数少ないデニム専門リペア店として、ヴィンテージマニアの間で静かな熱狂を巻き起こしている。繊細な縫製で“どこを直したのか分からない”とまで言われる修復技術には、まさに芸術品のような美しさがある。なかでも炭鉱で発掘されたバラバラのデニムが見事に蘇る様子には、思わず息を呑んで釘付けになるほどだ。
今回は、日本でその技術を支える加藤さんに、リペアの原点と美学を伺った。

PROFILE

加藤 香苗(かとう かなえ)

1986年新潟市江南区生まれ
人気古着店で販売やリペアを担当し、リペアショップのオープンと同時に店長を務める。2024年に独立して「Blue Champion」をオープン

ヴィンテージショップの丈詰めから始まった、加藤さんのリペア人生

Blue Championの加藤さんは、もともと20年近くヴィンテージショップに勤務し、販売員からキャリアをスタートさせた。その後、お客さんのパンツの丈詰めを任されたことが、リペア人生の始まりだったという。
「服飾学校も出ていませんし、最初はまさか自分がリペアを担当するとは思っていませんでした。でも、やってみたらすごく楽しくて。独学で、ただひたすら毎日リペアしていましたね」
当時は情報も少なく、ネットで調べるにも限界があった。だからこそ、実際に古着やヴィンテージ品に触れながら、縫い方や素材感を“体で覚えていく”スタイルで日々取り組んだ。
「炭鉱から出てきたデニムを洗って復元するなんて経験、普通はなかなかできませんよね。あれは本当に貴重な経験でした」
炭鉱から回収されたバラバラの Levi's501XX 22モデル。 最初は泥まみれの状態で海外からのオーダーだったという
炭鉱から回収されたバラバラの Levi's501XX 22モデルが復元リペアされた状態
ショップでのリペアだけにとどまらず、個人依頼も徐々に増加。その勢いに乗って、やがて加藤さんは長年の勤めを経て、念願のBlue Championを独立オープンする。

予想を超えた反響──開店初日からの長蛇の列

Blue Championが新潟にオープンしたのは、2024年8月。加藤さんの予想に反して、初日から店前には列ができていた。
「正直オープンした段階でこんなに依頼が来るとは思っていなくて、新潟県内の方がポツポツ来るだろうなくらいに考えていました。
ところがオープン前からすでにお客さんが2、3人並んでいて後ろにお客さんがさらに並んで、DMやメールでも数十件とご依頼が入ってきていたため、とても焦ったのを覚えています(笑)」
今では納期はなんと約1年半以上待ち。それでも依頼が途切れないのは、加藤さんの技術への厚い信頼があるからこそだ。

技術を支える“糸”と“ミシン”への徹底したこだわり

そのこだわりは、使用する「糸」にも表れている。
烏城(うじょう)物産にオーダーしたスーピマコットン100%ミシン糸。オリジナルカタン糸やデニムリペア用の綿糸は小分け(お試し用)から販売も可能。一部在庫がないものもあるので気になる方はぜひお問い合わせを。
「岡山県の児島にある縫製糸メーカーの烏城(うじょう)物産というところで、デニムリペア用の糸を3色オーダーして作りました。
糸は、綿100%というところにもこだわっています。綿の糸が希少で手に入らないため、デニムのリペアにスパン糸を使っている方がほとんどだと思います。工場の廃業や、綿の糸の取り扱いから手を引いている企業も増えて、徐々に需要がなくなっているのが現状です。
そのなかでも、烏城物産はデニムリペア用の糸や綿100%の糸やデニム用のステッチ糸などを取り扱っているので大変ありがたいですね」
Blue Championで使用している糸もさまざま。デニムリペア用の糸だけではなく、 “ナス紺” なども置いてあるのは、ヴィンテージラバーの気持ちをよく理解している加藤さんだからこそ。
加藤さんのこだわりは、“糸の素材”だけではない。糸の色合いやその使い方にも、独自の工夫が込められている。
「色はミシンで縫って直していきます。本当に微妙な違いなのですが、デニムの色は1色だけではなく、その濃淡や色落ちを再現しながら自然に直すには、何色も使わなければいけません。
先に明るい色を入れてから暗い色を入れたり、逆に暗い色を先に入れてから明るい色を入れたりなど、状態に応じて順番も変わるのですが、デニムというのは色の落ち方がさまざまです。
ヒゲやハチノス、デニムの色合いが自然に仕上がるように、いろんな色をミックスしてミシンの糸をこまめに変えながら、色をぼかしていきます。ミシンの糸や縫っていく工程で元のデニムの状態を再現しているので、ミシンで塗り絵をしている感覚に近いですね」
また、Blue Championでは一つのミシンだけではなく、メインミシン、刺繍用ミシン、チェーンステッチ用ミシンなどを駆使してデニムのリペアが施されている。
「このブルーのミシンは、シンガーという職業用足踏みミシンで、1950年代から70年代ぐらいに作られたヴィンテージミシンになります。
右端に『Blue Champion』と記載されているのが、そのまま店名の由来になりました。
メインに使用しているのはドイツ製の『パフ2063』という機種で、タタキ縫いのリペアで使っています。あとはユニオンスペシャルというチェーンステッチのミシンも使っていますね。
裾上げ専用の『ユニオンスペシャル・43200G』という機種が有名なのですが、これは『33700』という機種で、裾だけでなくあらゆる箇所のチェーンステッチなども縫えて汎用性が高いので、重宝しています」

海外からもオーダー続々、デニムで世界とつながる

全国各地から依頼が届くBlue Championだが、近年は海外からのオーダーも増えているという。
「Instagramにデニムの復元をビフォーアフターで載せていたので、その反響は大きかったですね。主にヴィンテージのコレクターの方がよく見てくれています。
フランス、アメリカ、香港、シンガポールの方など、世界中からオーダーが来るようになりました」
1890年代のUnderhillのデニムジャケット(デニムブラウス)の背面の復元前
1890年代のUnderhillのデニムジャケット(デニムブラウス)の背面の復元後
海外のヴィンテージマニアも思わず唸ってしまうのは、加藤さんの繊細なデニムの表現力にある。ただリペア作業をするのではなく、デニム本来の絶妙な色合いを表現できるのは彼女だからこそできる技だ。
去年のオープンから次から次へとオーダーが絶えないBlue Champion。ホッと息をつく時間もままならないが、リペアをすることが大好きな加藤さんにとって、作業に没頭する時間がまさに至福の時だという。
「Blue Championは他のところで直せなかったデニムの依頼が来るような店なので、今後もそういった受け口になりたいという思いがあります。あとは、デニムの復元をここまでやっているお店はあまりないので、今後もこの道で勝負していきたいですね。
これからも、一人ひとりのお客さんに向き合って、丁寧にリペアを施していきたいです」
新潟県新潟市東区に工房を構えている
多くのデニムラバーが、自分の“宝物”を託してしまうのは、加藤さんが誰よりもデニムを愛し、手を尽くしてくれる人だからだろう。
仕上がりを待つ価値がある──。そう確信させてくれる店が、ここ新潟にある。

Text by Tajimax

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