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中国製カシミアへのこだわりと妥協なき探究の「Extreme Cashmere」、アムステルダム本社でその本質に触れる

2025.02.09
ジェンダーレスかつサイズレス、誰にでも似合うカシミアニットウエア「Extreme Cashmere(エクストリーム カシミア)」。オランダ発のこのブランドは、設立から9年を経た今も変わらぬ理念を貫き、その着心地のよさから日本でも確かな支持を集めている。
アムステルダムの中心地に構える、17世紀の建物を改装した本社で設立者サスキア・ダイクストラ(Saskia Dijkstra)は、「たったひとつのモデルからスタートしました」と、2016年の設立当初を振り返った。
彼女が目指すのは、価格のために品質を妥協したり、色や形に制限を与えることなく、「境界なくみんなにカシミアニットウエアでドレスアップしてもらうこと」。ブランドの原点と成長を振り返りながら、本社にてその魅力を探った。

無限なまでのバリエーションを誇るカシミアニットウエア

ひとつのモデルからスタートした「Extreme Cashmere」は、現在100を超えるカシミアニットウエアのバリエーションを展開している。たとえば、クルーネックセーターのカテゴリーだけで現在(2025年1月時点)27モデルを揃えている。
編みの種類、リブの太さ、丈の長さ、オーバーサイズからタイトフィットまで、微妙なシルエットの変化が異なる表情を生み出す。それぞれのアイテムには独自の魅力があり、まさに理想のカシミアニットウエアを見つけられる宝庫といえる。
「シルエットが重要」だと語るサスキアは、継続する定番モデルを基本とし、季節ごとに提供すべきアイテムを精査してコレクションを制作する。
春夏・秋冬に2回発表するコレクションは、“シーズン”ではなく“エディション”というタイトルで発表するのも、同ブランドのシーズンレスかつタイムレスというコンセプトを表す特徴のひとつだ。
シーズンレス、タイムレス、ジェンダーレス、サイズレス。あらゆる境界を取り払った「Extreme Cashmere」は、カシミアニットの素材の限界さえも超えていく。
クロスしたベストやチューブトップから、ストラップレスのドレス、トートバッグ、スカートまで、通常はカシミア素材では作られないアイテムに挑戦し続けている。
それらはラスト(錆)、デザート(砂漠)、エッグシェル(卵の殻)といったスタイリングが組みやすいニュアンスカラーから、蛍光ピンクや冴えわたる空のようなブルーまで、多彩なカラーパレットで日常を彩るよう構成されている。
各アイテムのカラーバリエーションを示した、洋服の袖口や裾に手刺繍された旗を模した小さなタグがブランドのシグネチャーだ。
また、カシミアを長持ちさせるための正しいケア方法を記した表示タグも、ブランドを象徴するアイコンとして定着している。
このタグは取り外すことを想定して縫い付けられているが、ファンの中にはあえて外さず付けたまま着用する人もいるのだそうだ。

“中国製カシミア”にこだわる理由

サスキアがもっとも重きを置いているカシミアの品質については、彼女のキャリアを振り返るだけでも十分な説得力がある。「Joseph(ジョセフ)」や「Jil Sander(ジル サンダー)」などのブランドの製造プロデューサーとして、中国でのカシミア生産における25年の経験を誇る。
「ブランドが存在する理由、そして製品が優れている理由は、私たちが一緒に働く人々のおかげです」と、彼女は胸を張る。
「Extreme Cashmere」は、中国内モンゴル自治区の山岳地帯に生息するヤギから採取した、最高品質で長持ちするカシミアのみを使用。非常に長い冬と、短期間の酷暑の夏という気候により、ヤギが冬毛を脱ぐと首と腹部から世界最長とも称されるカシミア繊維が採取できるという。
長いカシミア繊維のおかげで、ブランドの製品は耐久性があり毛玉になりにくい。加えて、密度が高く重量があるのも他のカシミアニットウエアとの違いで、一日着用すればその保温性の高さを十分に実感できる。
緩めに編み、素材の使用量を少なくすればすればその分原価を抑えられるが、「Extreme Cashmere」は決して品質に対しての妥協を許さない。
生産は原材料の産地である中国で一貫して行われており、その卓越した品質は2024年10月にローンチした“Made in China”キャンペーンで見事に表現された。
これは“中国製”というネガティブなイメージを逆手に取った試みであり、サスキアが30年近く信頼を築いてきた地元パートナーへのラブレターでもある。同時に、「Extreme Cashmere」の品質を支える生産背景を、世界中のファンに伝えるメッセージとなった。
キャンペーン撮影では、サスキアの中国の仲間たちや、街で出会った一般の人々がモデルとして起用された。
これは他の都市でのキャンペーンでも同様で、ニューヨーク、ソウル、東京のストリートを舞台に、一般の人々が纏う日常のスタイリングを切り取った広告写真は、その自然な魅力で大きな反響を呼んでいる。

ブランドの精神性を表す本社と欠かせない日課

広告写真やルックブック、SNSでの発信では、ニットウエアの重ね着による斬新なスタイリングを展開。素朴で年配向けという従来のカシミアのイメージを一新し、モード性の高いファッションアイテムとして若い世代の支持を集めている。
この有機的な成長を支えているのが、ブランドの新しいコミュニティの形成だ。
ブランドの中核を担うのは20〜30代を中心としたスタッフたち。アムステルダムの運河沿いに位置する本社は、自然光が降り注ぐ大きな窓と開放的な高天井を特徴とする空間で、デザイン、マーケティング、セールス、コミュニケーションの各部門から成る約20名の従業員が在籍している。
17世紀頃に女学校の校舎として使用されていた歴史ある建物の本社内は、チームごとに分かれたオフィススペースと、ストア兼ショールーム、従業員全員が収容できる大きなダイニングスペースとキッチン、地下には製品のアフターケアのために顧客のカシミアニットウエアを洗濯・リペアを行うランドリースペースが設けられている。
もっとも強い印象を残すのは、真っ赤な壁に染まった広々としたダイニングルームである。大きな暖炉を備えたこのスペースでは、在中するシェフによる料理が提供され、従業員全員で一緒にランチを取るのがブランドにとっての儀式のような日課だという。
「カシミアニットウエアは、カシミアを専門とするブランドで購入するべきなんです」
従業員やゲストと食卓を囲む和やかな席で、サスキアはそう語った。パンはパン屋で、野菜は八百屋で購入するように、専門店への信頼を生み出すことがものづくりの基本だと説く。
ひとつのモデルからスタートした「Extreme Cashmere」は、現在世界中の300店舗以上で取り扱われており、昨年末にはニューヨークで期間限定ストアを開くなど、着実にビジネス規模を拡張させている。
「これからやるべきことは、まだまだたくさんあります」とサスキアは意欲を見せる。「ニューヨークでは、サイズレスというコンセプトに戸惑い、すぐに店を出てしまうお客様もいました。ブランドの認知度を高める必要性を痛感する一方で、カシミアという素材の可能性そのものを伝えていく重要性があると、改めて実感できました」と続けて教えてくれた。
本質に忠実であり続け、ものづくりに真摯に向き合う「Extreme Cashmere」が、ボーダーレスに世界へと広がっていくのも、そう遠い未来ではないだろう。

Text & Photo by ELIE INOUE

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