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1990年代の空気が漂う──「Gerry Cosby(ジェリー・コスビー)」の“いま”
1990年代初頭、アメカジ、HIP HOP、スケート、スポーツミックスなど、ファッションのスタイルが多様化しはじめた時代に、「Gerry Cosby(ジェリー・コスビー)」と書かれた大きなロゴが入ったベンチコートやボンバージャケット、スウェットシャツを街でよく見かけた。「昔、Cosbyの服を持っていた」という人も多いのではないだろうか。
そんなGerry Cosbyを紐解くと、アイスホッケーをルーツに持ち、アメリカ・マサチューセッツ州を拠点とするスポーツエクイップメントブランドであることがわかる。
今回は、Gerry Cosbyの歴史をたどりながら、ブランドの現在を紹介していく。1990年代の“Cosbyブーム”をリアルタイムで知る世代はもちろん、その後の世代にもぜひ知ってほしい内容だ。
創業者ジェリー・コスビー──プロアイスホッケー選手としての原点
Gerry Cosbyというブランド名も、「Gerry Cosby and Co. Inc.(ジェリー・コスビー社)」という社名も、その名前は創設者であるジェリー・コスビー氏に由来している。彼のルーツをたどることで、ブランドの成り立ちが見えてくる。ジェリー・コスビー氏は1909年、アメリカ・マサチューセッツ州に生まれ、プロアイスホッケー選手として活躍した。若い頃に地元マサチューセッツのチームの練習ゴールキーパーとして参加するよう依頼されたことからキャリアをスタートした。
その後、USA代表チームのゴールキーパーに選ばれ、1933年にプラハで行われたワールド・チャンピオンシップゲームに出場し、アメリカ史上初となる金メダルを獲得した。こうして、ジェリー氏はアメリカ歴代のベストゴールキーパーの一人として称される存在になった。
その後もイギリスのリーグでMVPに選出され、さらにボストンやニューヨークなどのNHL(ナショナル・ホッケー・リーグ)チームでもキャリアを積み重ねた。

スポーツエクイップメントブランド「Gerry Cosby」の誕生
創設者ジェリー・コスビー氏のルーツがわかったところで、ブランドとしてのGerry Cosbyがどのようにはじまっていったのかを見ていこう。1939年、ジェリー氏はニューヨークにあるNHLの1チームから依頼を受け、6ダースのホッケースティックを手配した。この出来事がきっかけとなり、ホッケー・エクイップメントブランド「Gerry Cosby」を立ち上げることになる。
その後、彼のビジネスは拡大を続け、世界中のスポーツチームに向けたアスレチック用品を扱う存在へと成長した。販売にとどまらず、ジェリー氏はホッケー用品やスポーツウエアのデザインも手がけ、優れた手腕を発揮していく。
そして1958年には、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンに店舗を構えるまでに成長し、その店はスポーツ用品、特にオーセンティックチームジャージが揃う「the place to go(行くべき場所)」と呼ばれる人気のスポットとして知られるようになった。

ブランドは成長を続け、アイスホッケーのユニフォームやエクイップメントバッグ(ダッフルバッグ)だけでなく、ファン向けのレプリカ・ホッケージャージをどこよりも早く企画し、デザインからアイテム開発に至るまで、幅広い領域で手腕を発揮していった。
また、NFL選手用に特別開発したショルダーパッドのデザインは、“かつてない最高のもの”として高く評価され、NFLや大学チームのプレイヤーが現在でも使用しているという。
アメリカではNFL関連のアイテムが人気を博し、日本ではスポーティーでカジュアルなラインナップが大流行した。振り返ってみると、多くのアイテムにアイスホッケーを背景としたデザインワークが色濃く反映されていたことがわかる。

時代を超えて受け継がれるGerry Cosby──創業者の意志と現在の取り組み
1996年、ジェリー氏は87歳で亡くなった。その後、息子であるマイケル・コスビー氏がGerry Cosby and Co. Inc.の代表に就任する。同社はジェリー氏の時代から現在まで、出身地であるマサチューセッツ州シェフィールドに本拠地を置き、製品のデザインと製造を続けている。ジェリー氏の思いを受け継ぐように、アメリカの大学やプロチームをはじめ、世界中の国々へスポーツ用品・エクイップメントを提供し続けている。


近年のGerry Cosbyの広がり
ジェリー氏とブランドのヒストリーがわかったところで、ここからは近年の日本、そしてアジアでのGerry Cosbyの展開を見ていこう。2013年には「BEAUTY&YOUTH UNITED ARROWS(ビューティー&ユース ユナイテッド アローズ)」が別注のボストンバッグを販売し、その後も「SHIPS(シップス)」や「JOURNAL STANDARD(ジャーナル スタンダード)」など、さまざまなセレクトショップが別注アイテムを展開した。
さらに2021年には、セレクトショップ「MIN-NANO(ミンナノ)」のオーナー・中津川吾郎氏がデザインを手がけ、「BEAMS(ビームス)」のエクスクルーシブラインとして「Gerry Cosby A+C(ジェリー・コスビー エープラスシー)」を発表した。
このコレクションは大きな反響を呼び、ブランドの新たな注目度を高めるきっかけとなった。

さらに、日本での展開においては、かつてのアーカイブをモチーフにしたアイテムが人気を集めている。古着ブームの追い風もあり、クラシックな雰囲気を持つプロダクトが幅広い層から支持されている。

アメリカ本国では、定番スポーツウエアとバッグ事業を継続的に成長・発展させ、マサチューセッツ州をはじめとした各地域で小売り販売の拡大に力を入れている。
一方、日本では別注やコラボレーションを中心に、話題性の高いアイテムを企画・展開している。
1990年代に起きたGerry Cosbyブームには、ここまで見てきたように壮大なヒストリーが背景にあった。今後の日本、そしてアジアでの展開にも注目していきたい。


















