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はるな檸檬が描くファッション業界のリアル:話題の漫画『ファッション!!』をひもとく

2024.12.05
ファッションショーのランウェイやファッション雑誌のモデル、コレクションのデザイナーなど、傍からみたら輝かしい世界に映る。周りからの羨望の眼差しを向けられ、自分もこの業界で働いてみたいと思う人も多いはず。
でも、どんな業界にも裏側はある。そこでチェックしたいのが、漫画家のはるな檸檬がOUR FEELで連載している『ファッション!!』だ。ファッション業界で働く主人公が新人デザイナーと出会うことで、さまざまなゴタゴタや人間関係に巻き込まれていく物語となっており、ファッション業界の表と裏、人間の欲望や情熱がリアルに描かれている。
今回、はるな檸檬さんにファッション業界を漫画にした経緯をお聞きしながら、業界の華やかさとその裏側にある泥臭さについて漫画家目線で語っていただいた。

PROFILE

はるな檸檬(はるなれもん)

『ZUCCA×ZUCA』(講談社)でデビュー。主な著作は『タクマとハナコ』(文藝春秋)、『ダルちゃん』(小学館)ほか。現在、WEBマンガサイト「OUR FEEL」(シュークリーム)にて『ファッション!!』を連載中。

ファッション業界で働く人たちの面白さ

ファッション業界に興味を持ったきっかけを教えてください。
私は昔から宝塚歌劇が好きでファンコミュニティに入っていたんですが、そのコミュニティの中にファッション業界の人が多くいました。趣味を通じてファッション誌の編集者やフォトグラファーの友人も増え、一時期その子たちとルームシェアをしていたこともあるくらいです。
 
当時私は仕事に余裕があったので、合間を見て彼女たちのお手伝いもしていました。撮影に必要なブランドの洋服やアクセサリーを借りに高級店を渡り歩くこともありましたね。
いつかはファッションをテーマに漫画を描くだろうなという予感はありましたか。
描きたいなっていうのは、心のどこかにありました。あまりにも日常からかけ離れているというか、私がそれまでまったく知らなかった世界ということもあって、どのように表現したら読者の皆さんが面白がってくれるだろうと考えてましたね。
 
だって、私の周りのファッション好きの子は、本当にお金がなくて日々の生活がカツカツなのに、いきなり40万円もする毛皮のコートを買うんですよ。リボ払いにすると、この金額はなかったことになるんだよって言いながら(笑)。
本当に大丈夫?って心配になるような振る舞いをしていたので、ファッションが好きな人って面白いなって思うことは多かったですね。
そうしたファッション業界の面白さや異様さを伝えるために、『ファッション!!』を描き始めたと。
これまでのファッション漫画はモデルさんやデザイナーさんの苦悩を描くものが多いですが、そうではない切り口ができるなら私にも描く意味はあるのかなと思いました。

何でもやってみる精神

漫画ではファッションショーが行われる過程がリアルに描かれていましたが、実際にどういった取材をされているのですか。
ファッション業界で働いている知り合いに、何でもやるからって言いまわってお手伝いをさせてもらいました。取材をしているというより、ほとんどスタッフの一人のように振る舞っていたので、もしかしたら何人かの方は私のことをインターン生と思っていたかもしれないです。ファッションショーの受付をしながら、裏でちょこっと写真を撮らせてもらうなどして、取材を進めてきました。
このスタンスの原点は、私がアシスタントをしていた東村アキコ先生にあります。先生の元では何でもやる精神があって、それが染み付いていますね。
 
実際、当時は漫画のアシスタントだけでなく、イベントのスタッフもしましたし、なぜか踊ったこともありました。とにかく多岐にわたることをやらざるを得ないという状況だったのですが、それが思いのほか楽しかったかな。

舞台の裏側と人間の内面性

『ファッション!!』は現実のリアリティさと漫画としてのエンタメ性のバランスの取り方が絶妙だと思います。
これは今も模索していて、本当に難しいと思っています。
最初の3、4巻くらいまでは、自分でも何をしていいかわからない状態でした。エンタメをやりたいんだけど、リアリティも見せたいという。今も葛藤はありますが、だいぶ慣れてきたかなとは思います
取材の蓄積があるからこそ、判断が難しいところですね。
私が漫画で描きたいことは2つあります。
1つはファッション業界の裏話です。私が取材や話を聞いて、こんなにもファッション業界は面白さで溢れているのかという驚きを、もっと知ってもらいたいという思いがあります。すごく華やかそうに見えるけど、服以外興味ない人も多くて、あ、意外とコンビニおにぎりで満足するんだ、とか(笑)。
そして、もう1つは人間なんです。こちらの方が本当にやりたいことです。業界で働く人たちの考え方だったり振る舞いを通じて、実はどの業界にもあるような普遍的な人間の性とか業のようなものを描いていきたい。
登場人物の服装はどういった素材を参考にしているのですか。
明確にこのブランドというものはなく、ストリートスナップを参考にすることが多いですかね。街中の人たちの着こなしは、本当に参考になりますよ。ブランドのルックよりも自分なりに着こなしている人たちのほうが、人間味ある感じに描けるんです。
 
逆に一枚絵を描くときには、アンリアレイジだったりヴェトモンだったり、ショーのルックを参考にすることが多いと思います。ショーの非日常のルックは絵にした時に面白いものが多くて、ぶっ飛んだデザインの服は描いていて楽しいです。
アンリアレイジのショーを参考に描いたイラスト。『ファッション!!』Ⓒはるな檸檬/シュークリーム
ストリートスナップは、実際に街に出て撮られているのですか。
ファッションイベントとかで撮らせてもらうこともありますし、昨年は東急シアターオーブでジャンポール・ゴルチエのミュージカルがあって、それを観に来ていた観客の方々は大いに参考になりました。
 
ファッション好きの人たちって、とんでもない格好をしていると思われがちですが、そうじゃない人もたくさんいるんです。シンプルなんだけど、アクセサリーだけ尖っているとか。人によっていろいろパターンがあって、それぞれのセンスが垣間見えます。

漫画家視点で見えたファッション業界の実状

これまでの取材の中で、ファッション業界の問題に気づかれたことはありますか。
金銭的な問題が理由で、デザイナーを諦める人が大勢いることに衝撃を受けました。これって、才能とは関係のない話ですよね。若い人が育たなければ、ファッションに未来はないと思います。
この構造的な問題を一人の力でどうにかできるとも思いませんが、少しずつ変わっていくしかないのかな。若い頃に将来を期待されて賞を受賞した子も、数年経ってこのままじゃ生活できないからって別の道を歩むという話を聞いて、悲しくなりましたね。
『ファッション!!』Ⓒはるな檸檬/シュークリーム
漫画家の世界と比べてみて、どうですか。
私は漫画だけじゃないかって思うんですよ。本当の実力、つまり売れるか売れないかのみで評価されるので、どんなに無名でも売れさえしたら一躍大金持ちになるし、男女差もないと感じています。だから、24年組と言われる萩尾望都先生の時代から女性漫画家がたくさんいるんじゃないかな。
 
他の芸術と違って、どこかの流派に属しているとか、有名人だからとか、コネクションがあるとか、目に見えない力学とか忖度がない世界。それが漫画だし、希望のある職業だと思います。
この連載を通じて、自身のファッションに対する考えに変化はありましたか。
華やかでキラキラした世界というイメージでしたが、もっと泥臭くて、欲望に忠実な人たちも多かったですね。
表向きは華やかでも、裏ではものすごく人間臭いやりとりだったり、地べたを這うような努力だったり、すごく安い給料で服を縫っている人たちがいて、みんなで支え合うことでこの業界は成り立っていると痛感しました。
私自身もこの連載を通じて、展示会にも足を運ぶようになりましたけど、本当にいい服って袖を通さないとわからないんだなっていうのは経験して初めて知りましたね。
友達からも試着はタダだからって言われ続けていて(笑)、今では気になった洋服はまず試してみるようになりました。
Motohiro Tanjiの展示会にて。いろいろと試着して楽しむのが大切とのこと。
読者に向けてメッセージをお願いします。
ここまでファッション業界のエンタメやあるあるネタを描いてきて、そのリアリティさとの塩梅に悩んできましたが、ここからが本当に私の描きたかった人間の内面性の話になります。
描いている私もわくわくしていますし、皆さんからどういう感想が出てくるのかも楽しみにしています。ぜひ楽しんで読んでいただけたら嬉しいです。

ヘッダーキャプション:『ファッション!!』Ⓒはるな檸檬/シュークリーム

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