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1足約3000円のビーチサンダルブランド「ハワイアナス」はいかにして世界的なファッションアイコンとなったのか
ビーチサンダルは不思議なアイテムだ。
ソールとストラップという極めてシンプルなフットウエアであるにもかかわらず、人それぞれにこだわりがあり、『これでなくてはならない』という“贔屓”の一足があるのだ。
なかでもブラジル生まれの「Havaianas(ハワイアナス)」は、気持ちがパッと明るくなるようなカラーリングや天然ラバーが生み出す快適な履き心地が世界中の人々の心を掴んでいる。
1足約3000円のビーチサンダルは、いかにして国民的なプロダクトとなり、そして世界的なファッションアイコンへとなったのか?
ハワイアナスの日本代理業務を行うBenchmade株式会社の鈴木さんに話を聞いた。
PROFILE
鈴木 仁(すずき ひとし)
Benchmade株式会社セールス担当
ブランド名の由来は、ブラジル人が持つ楽園への憧憬から
ハワイアナスは1962年、ブラジル・サンパウロ州で誕生した。「Havaianas」はポルトガル語で“ハワイの人々”を意味する。「ハワイという名前には“楽園のような時間”を感じさせる響きがあります。当時のブラジル人にとっても、それは特別で親しみやすいものでした」

ブランドの原点となるのは、日本から移住した人々がブラジルにもたらした「草履」だ。稲わらと割竹で作られた草履は、通気性に優れ、足元に開放感をもたらす。
「ハワイアナスはこの草履に着想を得て、ブラジル産の天然ゴムを使った新しいサンダルを開発しました。ソールをゴムにすることで、耐久性や履き心地を高め、“ビーチサンダル”の原型とも呼ばれる形が生まれたのです」
1966年には、ハワイアナスの創業元であるアルパガタス社が特許を取得。正式にビーチサンダルのオリジンといえる存在となった。

ブラジル人の生活必需品となった国民的プロダクト
最初のモデルは、白いソールに青いストラップの一種類のみ。だが、1969年に製造工程中の偶然から生まれた緑のストラップが人気を集めた。
「この出来事をきっかけに、ブラックやブラウンなどの多彩なモデルが誕生し、ハワイアナスはブラジルの国民的ブランドとして定着していきました」
1980年代には政府が作成した「生活必需品リスト」にも登場。米、豆、牛乳と並び、「サンダル=ハワイアナス」が掲載されたことからも、その存在感の強さがうかがえる。

そんなハワイアナスがグローバルブランドへと飛躍したのは1990年代のこと。
「1998年にフランスで開催されたワールドカップを記念して、ストラップにブラジルの国旗が付けたハワイアナス コパをリリースしたところ、空前の大ヒットを記録しました」

これきっかけに、アメリカやイギリス、フランスといった海外市場に進出。1999年には日本にも上陸した。
足の裏に吸い付くようなフィットが心地いいゴムソール
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ハワイアナスがここまで人々に受け入れられたのは、その機能性にも理由がある。
「ハワイアナスの最大の特徴は、ライスシェイプと呼ばれる米粒のデザインが施されたラバーソールです。100%ゴム製のソールは、足裏に吸い付くような心地良い感触があり、高いグリップ力を発揮します。
この意匠は発売当時から変わらないデザインとなっており、特許も取得しています」
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足にフィットするよう丸みを帯びたストラップは、耐久性に優れたPVC(ポリ塩化ビニル)製だ。しなやかな素材感で長時間歩いても靴擦れが起きにくいという。
現在は、海外限定となるが、スタンダードモデル「Top」のデザインをベースにしつつ、履き心地をアップデートさせた『Top Max Comfort』も販売している。
「『Top Max Comfort』は、解剖学に基づいて設計された、快適性に優れたモデルです。踵部分にレリーフ(凹凸のデザイン)を施すことによって踵への衝撃吸収を軽減します。また、通常よりも幅広に調整したストラップがフィット感を高めています」
履き心地の良さを実現しながらも、約3,000円という価格を実現できているのには独自の生産体制が関係している。
「“誰もが履ける高品質なサンダル”という理念を元に、創業当時から一貫して垂直統合型の生産体制を築いてきました。
ブラジル国内に4つの製造拠点を持ち、すべての工程を自社管理することで、中間コストを抑えつつ、製品のクオリティを担保しています」
ブラジル以外にもスペイン、アメリカ、アラブ首長国連邦に拠点を設置することで、グローバルでも迅速に対応している。
ハイブランドとの協業で新たな価値を創出
近年では、ジャンルの垣根を超えたハイブランドとのコラボレーションにも力を注いでいる。「1999年にジャン・ポール・ゴルチエのショーで使われたことをきっかけに、ハイファッションの世界でも注目を集めるようになっていきました。以降、世界的なブランドやデザイナーとのタイアップも増えていきました」

2019年にはイヴ・サンローランとのカプセルコレクションを発表。

「クリエイティブディレクターのアンソニー・ヴァッカレロ氏の手がけたゼブラ柄のモデルが話題を呼び、翌年には第2弾の新コレクションを発表しました。このパートナーシップはハワイアナスがラグジュアリーセグメントに進出する契機となりました」
2024年にはドルチェ&ガッバーナとのコラボが実現し、レオパードやマヨリカなどイタリアらしい柄で彩られた限定モデルが登場。翌年にも、6型の限定モデルが発売された。

なぜ、このような名だたるハイブランドとの協業を始めたのか。
「ハワイアナスは、常にお互いに価値を与え合えるブランドとパートナーシップを組んでいます。
こうしたコラボは新しいオーディエンスにリーチし、グローバルなファッション市場におけるブランドの存在感を高める手段でもあると考えています」
LGBTQIA+支援や植樹などの社会貢献活動に尽力

ハワイアナスは、ブラジルを代表するブランドとして、社会や環境に配慮した取り組みにも力を入れている。
「環境的・社会的・経済的な価値を生むイノベーションを推進しながら、持続可能な成長を目指しています」
代表的な活動のひとつが、2020年にスタートした「プライドライン」だ。LGBTQIA+を支援するNPO「ALL Out」と連携し、売上の7%を毎年寄付している。
また、20年以上パートナーシップを続ける環境団体「IPÊ(エコロジー研究所)」には、1,000万レアル以上(日本円で2億5000万円以上)を寄付。30以上のプロジェクトを支援し、大西洋岸の森林で700万本超の植樹を実現してきた。
「2020年には、使用済みサンダルを回収・再資源化するプログラム「Havaianas reCICLO」も始動しました。現在は16カ国・350カ所以上に回収拠点を持ち、世界で累計40万足以上を回収してきました」
回収素材は、床材やタイヤ、家具などにリサイクルされるほか、鍋敷きやランチョンマットといったホームグッズとしても展開されている。
シンプルなサンダルをファッションへと昇華させた功績
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ハワイアナスの功績は、ビーチサンダルを生み出したことに止まらず、生活用品だったこの履きものをファッションアイコンに昇華させた点にある。
2023年には、「Break the rush(急ぐのをやめよう)」という新たなグローバルコンセプトを打ち出した。
「ハワイアナスを履いて走るのは難しい。ならば、あえて立ち止まって、一つひとつの瞬間を大切に過ごしてみては? というメッセージです」
このコンセプトは、タイムパフォーマンスや効率が重視される現代社会へのアンチテーゼといえるだろう。
履くだけで、ブラジルのビーチにいるように気持ちがくつろぎ、陽気な気分になれる。
ハワイアナスは人生を自由に楽しむためのフットウエアなのだ。
Text by Ryota Osujo















