JA/EN

AI検索

関連ハッシュタグ

Articles

浜崎あゆみ、FRUITS ZIPPERを虜にする衣装デザイナー・齋藤ヒロスミが生み出す“魅力を引き上げる衣装”

2025.02.24
トップアーティストのステージ衣装から、テーマパーク、CM、イベントの衣装まで手がける齋藤ヒロスミさん。日本の歌姫「浜崎あゆみ」や、新進気鋭のアイドルグループ「FRUITS ZIPPER(フルーツジッパー)」の衣装も担当する衣装デザイナーだ。
こだわりの詰まった素材を使い、豊かな発想力で作り上げられる華やかな衣装は、着る人に自信を与え、見る人々を魅了する。アーティストからの支持も厚く、その実力は折り紙つきだ。
齋藤さんは、衣装デザイナーとしてどのように道を切り拓いてきたのか。これまでのあゆみや、仕事の裏側を伺った。

PROFILE

齋藤 ヒロスミ(さいとう ひろすみ)

東京のクラブカルチャーでパフォーマーとして活躍する中、幼少期から始めた小原流生け花の感性を生かし、独学で衣装製作を開始。浜崎あゆみ、氷川きよし、渡辺直美、蜷川実花監督 映画「xxxHOLiC」「Diner」、日本を代表するテーマパーク、さらには アニメ「ワンピース」のアイスショーや、東京2020パラリンピック競技大会閉会式 衣装統括を担当するなど、幅広く活動。 近年は「情熱大陸」、雑誌「装苑」などで衣装デザイナーとして特集されるなどメディアからも注目されている。

衣装作りが人生の転機に

子どもの頃から、変わったものや派手なファッションが好きだったという齋藤ヒロスミさん。高校生の頃には、原宿系や海外のアンダーグラウンドファッションに強く関心を持つようになる。
大学進学を機に都内に住むようになった頃から、クラブに頻繁に出入りするようになった。その理由を、「年齢も役職も異なるさまざまなクリエイターがいて面白かったから」と齋藤さんは話す。
「人見知りな私にとって、派手な服装はコミュニケーションツールのひとつでした。言葉で自分の思いを伝えられなかったとしても、クラブでは独特なファッションをしているだけでセンスに共感してもらえたり、『面白い服だね』と話しかけたりしてもらえたんです。そんな環境に、居心地のよさを感じていました」
派手な服装を追求するうちに、衣装を自作するようになる。大学では経営学部に所属しており、服飾は独学でのスタートだった。当時、クラブで頻繁に開催されていた「ハロウィンの仮装コンテスト」の優勝を総なめにしたことを機に、衣装デザイナーとしての活動幅を広げていった。
齋藤さんがイベント用に製作した衣装
齋藤さんは、派手な衣装やフェティッシュでダークな世界観を表現する衣装を得意とする。ただし、単に派手というわけではなく、足し引きのバランス感覚に優れている点にも注目してほしい。空間を意識したデザインは、幼少期から習っている生け花で培われたものだという。
「私の衣装はかなり派手なのですが、ただ足し算をして作るのではありません。何を一番に魅せたいのかを考え、相乗効果が生まれるように必要な要素だけを足していきます。“派手だけどコンセプトが伝わりやすいデザイン”ができるのは、生け花で培った“間引く”という考え方のおかげだと思っています」

タイトなスケジュールでも、最後までできることをする

短納期での依頼も多いが、「その場での対応力を試されることは刺激的で楽しい」と齋藤さんは言う。現在、衣装デザインを担当しているアイドルグループ「FRUITS ZIPPER」からは、1ヶ月で20〜30着のオーダーがくるときもあるそうだ。
スタイリストやプロデューサーから衣装イメージの相談を受けたら、すぐにデザインを描いて提案する。スピーディーに対応していくために、相談を受ける前からいろいろなアイディアを常に考えているという。
FRUITS ZIPPERが昨年の日本レコード大賞に出演したときに着用した蝶々をイメージした衣装も、以前から温めていたデザインのひとつ。「大きな舞台で着るために」ととっておいたもので、所属会社が掲げる「新たなステージに羽ばたいていくように」というテーマともぴったりだったことから採用に至った。
蝶々をイメージして制作された衣装/©ASOBISYSTEM CO., LTD.
この衣装は、ツイードの生地やスパンコールなどさまざまな生地を10種類以上使い、150パーツほどの切り替えをいれて作った大作だ。1着作るだけでも膨大な作業量となるが、メンバー全員分となると7着必要なため、全部で1,000パーツ以上もあったという。
パターンを引く人、パッチワークをする人、装飾をする人、小物を作る人など、約20人の職人で手分けをし、24時間態勢で製作を進めた。
「アイドルの衣装はテッパンの可愛く見えるバランスがあり、既視感のあるデザインになりがちなので、いかにインパクトを持たせるのかが重要だと思ってます。オーソドックスな形だけど、よく見たら分かる細かいディテールをこれでもかというほど詰め込んでいます。
彼女たちなら絶対に着こなしてくれる確証があるので、アイドル衣装ではなかなか採用されないようなトリッキーなデザインも積極的に組み込み、日々新しいデザインを考えています。また、よく使われがちな素材で作ると特別感がなくなってしまうので、他のアーティストがまだ使っていないような素材を、オリジナルで製作したりしています」
FRUITS ZIPPERがツアーで着用したロングドレス/©ASOBISYSTEM CO., LTD.
ベテランのアーティストともなれば、長年の経験から素材を見る目が養われている。素材を提案する際には、一般的な素材では心を動かすことができなくても、特別な素材であればひと目見ただけで即採用してもらえることもあるそうだ。
齋藤さんが衣装を手がけている浜崎あゆみさんは、素材に対する感度が高いアーティストの1人だ。浜崎さん本人が素材からこだわり、衣装の仕上がりにも最高のクオリティを追求する。ショー本番の中で、衣装に変更が加わることも度々あるという。
昨年行われた、浜崎あゆみさんの中国公演の衣装/撮影:嘉茂雅之(lris)
「昨年行われた中国公演では、チャイナ服をイメージした衣装の依頼を受けました。100枚以上デザイン案を描き、いただいた細かなリクエストを反映しながら仕上がりのイメージを共有していきました。浜崎さんは、作業を進めながらクオリティを追求していく方なので、衣装のデザインが最初のフィッティング時と本番とでまったく別物になっている、ということもあります。
ショーの当日に衣装を修正することも少なくありません。中国での1日目の公演後、2日目を迎えるまでの間や、公演中の衣装チェンジの合間に修正をするなど、秒単位で仕事を進めることもあります。時間に追われて大変なこともありますが、その姿勢があってこそ、最高のステージが生まれると思います。私は“着る人が納得するような衣装を仕上げること”が正解だと考えているので、本番直前まで正解に近づけるように試行錯誤しています」
齋藤さんは、衣装を近くで見たときの素材の上質さや作りのよさも重視する/提供:エイベックス・マネジメント株式会社

着る人の魅力を衣装で引き上げる

ショーを作り上げる際には、アーティストやパフォーマーはもちろん、衣装や照明、音響などたくさんの人が携わる。ステージ上ですべてのクリエーションがうまくリンクしたときの感動は、何にも変え難い喜びに変わる。齋藤さんは、衣装デザイナーの魅力を次のように語る。
「もともと素敵なアーティストやパフォーマーが、衣装を着ることによってさらに素敵になる。人と衣装の魅力、さらに全体のクリエーションがうまく掛け合わされたとき、深い達成感を覚えます。最近はSNSを通じて、ショーや番組で衣装を見た人の感想もダイレクトに私たちへ届きます。衣装に込めた裏のメッセージを読み解いたコメントなどを見つけると、とてもうれしいです」
今後は、「制約のない純粋な創作活動にも挑戦したい」と齋藤さんは意欲を見せる。また、次世代の育成にも熱い思いを持っているそうだ。
「衣装デザイナーを目指す人が、だんだん減ってきているように感じています。大変な仕事ですし、越えなければならない壁も高いのですが、乗り越えると一生物の経験や技術が身につき、終わりのないものづくりへの本当の醍醐味がスタートします。
天才的なセンスの持ち主もいますが、多くの場合は地道な経験の積み重ねが大切です。最近は即結果を求める傾向もありますが、ゆっくりでも着実に技術を磨き、失敗と成功を重ねることで必ず花開くときが来ると思います。諦めないで、ものづくりに携わり続けてくれるとうれしいです」
衣装デザイナーという仕事に対し、熱い思いを持つ齋藤ヒロスミさん。これからも、細部にまでこだわった華やかな衣装で、着る人の魅力を引き上げ、見る人々を魅了することだろう。

ヘッダーキャプション画像右:©ASOBISYSTEM CO., LTD. /画像左:©AMG

Text by 奥山 りか

Tags

この記事はいかがでしたか?

シェアリンクをコピーしました

Related Articles

Related Database