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【特殊メイクアップアーティスト・快歩】Forbes Japan「30 UNDER 30」に選出された若き才能、その原点と現在地に迫る
色鮮やかで、ちょっと奇妙だけど、覗きたくなる世界観。28歳の特殊メイクアップアーティスト・快歩(KAIHO)は、King Gnuやyama、きゃりーぱみゅぱみゅ、Official髭男dismなど名だたるミュージシャンへ作品を提供したことで注目度を高め、2024年にはForbes Japanが次世代を担う30歳未満の30人を選出する「30 UNDER 30」を受賞。さらに音楽フェス『LuckyFes'24』のクリエイティブディレクターを務めるなど、従来の特殊メイクのイメージを塗り替え、可能性を広げ続けている存在だ。
そんな快歩のルーツをはじめ、作品づくりをする際のこだわり、これから挑戦してみたいことなどについて語ってもらった。
PROFILE
快歩(かいほ)
愛知県名古屋市出身。名古屋市立工芸高等学校デザイン科卒業
amazing school jurで特殊メイク、特殊造形の基礎を学ぶ。
卒業後はatelier-ranaを屋号として独立。
特殊メイクを軸に、グラフィック、アートディレクション等、独自の世界観を追求した作品制作を行い、その感性を活かして、ミュージックビデオや映画、ライブなど様々なメディアにおいて幅広く活動する。特殊メイクのグロテスクなイメージをあえて制限し、色を効果的に使うことで、ポップかつリアルな独自の世界観を表現している。
2020年には、オーストラリアで開催された特殊メイクのコンペティション WBF 2020 World Championships special effects makeupにおいて、世界のTOP3に選出。
Forbes JAPAN 30 UNDER 30 2024「世界を変える30歳未満」30人 受賞
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原動力は「とにかく面白いことをしたい」という思い
幼い頃からモンスターや妖怪など空想上の生き物が好きだったそうですが、どういった部分に魅力を感じていたんですか?
見たことがないものを目にしたときの、ゾワゾワした感覚が大好きなんです。物心ついた頃から水木しげるさんの作品に憧れ、絵を描くのが大好きで、図工が得意な子どもでした。昔から人と違うことをしたいという思いは強かったですね。小学生のとき、昆虫をテーマに切り絵を作る授業があったんですが、みんなが枠の中に絵をきれいに収めるなか、自分だけ大きくツノがはみ出したカブトムシを作ったことをよく覚えています。
特殊メイクの道に興味を持ったのは、映画がきっかけだったそうですね。
はい。映画は子どもの頃からたくさん観ていたんですが、特にティム・バートンの『ビートルジュース』に影響を受けました。キャラクターとしてデフォルメされているのに、その空間に馴染んで確かに存在している……そんな感覚があって。特殊メイクというと、ゾンビなどのグロテスクなイメージを持っていたけど、「なんでもやっていい技術なんだ」と衝撃を受けました。

高校ではデザイン科に進み、卒業後は特殊メイクアップアーティスト・Amazing JIROさんの学校へ。JIROさんの教えで印象的だったことは?
JIROさんは特殊メイクの可能性を広げた方だと思っています。映画やドラマで使われることが主流だった特殊メイクの技術を、バラエティや広告、ファッション業界などにも活用できるようにした人ですね。素材にとらわれず、その場にあるものから発想を広げていく自由な作り方にも共感しています。そんな背中を見て僕も「枠を壊していこう」と思うようになりました。
特殊メイクアップアーティストというと、通常は映像作品などでオーダーされたものを作るお仕事が主流ですよね。快歩さんがそうではない道を選んだのはなぜですか?
活動を始めて間もない頃は、いくつか映画のお仕事なども担当させてもらったんですが、言われた通りに作ることに、自分としては面白味を見出せなかったんです。それで思い切って、自分の好きな作品づくりに振り切ろうと。つい数年前までは仕事も安定しておらず、4畳半の部屋で暮らしていたこともありますが(笑)、不安になったことはなかったですね。とにかく面白いことをしたい。その気持ちが最優先でした。
当時はコロナ禍で周囲の仕事が止まっていたので、「これはチャンスだ」と捉えて、とにかく作品を作ってはSNSで発信するという生活をしていたんです。
そうしていくなかで、ここ3年くらいの間に面白いことができる環境が整ってきました。またクリエイターとして世の中に知ってもらえる機会も増えたと実感しています。

大胆なデザインと繊細な技術のバランスがカギ
ブレない姿勢で続けてきたからこそ、花開いたんですね。特に転機となったお仕事は何でしたか?
さまざまにありますが、転機というとミュージシャンとのお仕事です。King Gnuの「It's a small world」(2018年)のMVでメンバーに特殊メイクを施したことに始まり、きゃりー(ぱみゅぱみゅ)ちゃんのMV、ヒゲダン(Official髭男dism)のグッズやMVなどから、僕を知ってくれた方がたくさんいると感じます。今年のOfficial髭男dismのツアー『Arena Tour 2024 - Rejoice -』では、会場にMVを再現したフォトスポットが設置されていたんですが、たくさんの人が自分の作品と一緒に写真を撮っている姿を見て、感慨深かったです。

では、これまでの作品の中で気に入っているものは?
『たちかわ妖怪盆踊り2024』のメインビジュアルです。「今まで見たことがない河童を作ろう」という意気込みで、自分でスタッフを集めて取り組みました。くちばし、甲羅、頭のお皿……という、従来の河童のイメージをどこまで崩せるか。おしゃれで、本当にいそうな河童を作りたいと思いました。

すごくスタイリッシュで、今までに見たことがない河童像でした。
とても好評でしたし、海外からも反響がありましたね。こだわったのは、生々しさです。どの作品でも同じですが、とことん削ぎ落としてモデルの素顔に近づけ、“本当にいそう”な存在に見せることを意識しています。この河童も、一部を除いては2mmくらいの薄いパーツを貼っているだけなので、ほぼ素肌なんですよ。下唇から顎まではモデル本人のままです。素顔に近いほうが、表情もリアルに出るんですよね。
あとはバランスも大事にしています。特殊メイクはパーツの造形ばかりに視線が行きがちなのですが、実際にメイクを完成させて全身で見たときに、顔だけ強調されないようなバランス感が重要です。
過剰に盛り過ぎるとダサくなってしまうので、「楽しくなってきたら一回手を止める」ことを念頭に置いています。
ちなみに、使用する素材はどのように集めているのでしょうか?
特殊メイクの素材は、基本的にアメリカから輸入しています。ただ材料にとらわれると表現の幅が狭まるので、自分の作品では何を使ってもいいと思っていて。カーテン屋さんで生地を探したり、服やウィッグを解体したり……古着屋にもよく素材を探しに行きますね。実際に存在しているものに見えるように、染めたりあえて汚したり、使用感を出すことも多いです。

快歩さんの作品は、とてもカラフルでポップなのも特徴ですよね。鮮やかな色彩感覚はどのように培われたのでしょうか。
最近気づいたんですが、実家が花屋だったことは、自分の大きなルーツなのかなと。自宅の横にお店があって、しょっちゅう行き来していたんです。親がブーケを作る際の色の組み合わせ方などを、日常的に見ていました。花って一見可愛いけれど、よく見ると少し気持ち悪かったり、グロテスクな部分もあるんですよね。可愛いだけ、きれいなだけのものは嘘っぽいと考えているので、僕の作品にも、可愛いようでキモい部分があると思います。

今後は海外での活動も視野に、特殊メイクの可能性を追求していく
一方で、快歩さん自身が着る服は落ち着いた色味のものが多いですか? 今日もシックな柄シャツを着ていますが……。
カラフルなのはあくまで頭の中の世界なので、自分がその中にいるのは恥ずかしくて。たまに撮影のときに「作品をかぶってください」と言われることもあるんですが、「絶対に嫌です」と断っています(笑)。ファッションは大好きですし、特殊メイクとの親和性は高いと思うので、ファッションショーなどももっと担当してみたいですね。
個人的には、自分の作品はGUCCI(グッチ)やCOMME des GARCONS(コムデギャルソン)、UNDERCOVER(アンダーカバー)あたりとマッチするんじゃないかなとイメージしています。
音楽フェス『LuckyFes'24』のクリエイティブディレクターを務めるなど、特殊メイクの世界にとどまらず、活躍の幅を広げていますね。
『LuckyFes'24』は本当にやりがいのある経験でした。ひたち海浜公園のあちこちに配置するオブジェや巨大バルーンを作ったり、木に装飾をしたり……。プロデューサーのDJ DRAGONさんが「好きにやっていい」と言ってくださったので、面白いものをどんどん追求していたら、予算を余らせることなく全部使い切っていました(笑)。
あの経験を通して、空間全体を特殊メイクの技術で飾るってめちゃくちゃ面白いなと、新しい可能性を見つけた気がしています。今後も街おこしなどに携わってみたいですね。

今後、海外へのアプローチは考えていますか?
アメリカで個展をやりたくて、視察に行こうかと思っていたところです。特にニューヨークとロサンゼルスの方が自分の作品に関心を持ってくれている実感があって、DMもよく来るんですよ。でも個展をやるには輸送などですごくお金がかかるので、スポンサーは随時募集しています!(笑)大切なのは、富や名声ではなく、とにかく自分が楽しめるか。ブレない芯を持って歩み、自分の道を切り拓き続ける快歩は、今後間違いなく、ワールドワイドな活躍を見せてくれるだろう。
Text by 岸野 恵加















