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ポロシャツの起源にして頂点:なぜラコステの「L.12.12」は時代を超えて愛され続けるのか?

2025.07.30
夏、それはポロシャツが着たくなる季節だ。
ライフスタイルウエアとして市民権を得たこの服の起源を辿っていくと、LACOSTE(ラコステ)の「L.12.12」に行き着く。
世界中の人々に愛され続けるポロシャツの中のポロシャツ。誕生から現在まで、その栄光の軌跡を辿ろう。

「L.12.12」の誕生秘話

今をさかのぼること1928年、プロテニスプレイヤーのルネ・ラコステ氏がフランス国際大会(現在の全仏オープン)の決勝戦に姿を現した。その姿を目にした観衆は、びっくり仰天したという。
フランスが誇る世界チャンピオンが着ていたのは、ニット素材でできた半袖のシャツ。それはルネ氏がポロ競技[1]の選手たちが着ていた半袖シャツをヒントにして開発した衿付きのシャツだった。
ルネ・ラコステ氏の当時の写真 (c) Archives Lacoste. Fonds Jacques Brugnon
1920年代のテニス界は服装に関して保守的で、細かいルールが定められていた。そのため、選手たちはコットンの布帛(ふはく)でできたダブダブの長袖のシャツを着てプレーしていたという。
周囲の戸惑いをよそに、ルネ氏はその試合で最高のパフォーマンスを見せつけた。躍動する肉体にフィットしたシャツに、他のプレイヤーたちの視線も釘付けになった。批判の声も上がったものの、構うことなく着続けた。
そのシャツは「Polo Shirts(ポロシャツ)」と呼ばれ、テニス界に急速に広まっていった。
「L.12.12 ポロシャツ」 17,600円(税込)
1933年にルネ氏はLACOSTE(ラコステ)を設立し、ポロシャツの販売を開始する。これがブランドの代名詞である「L.12.12」だ。
日本では「エル・イチニ・イチニ」と呼ばれているが、正式な読み方は「エル・トゥエルブ・トゥエルブ」。
「L」はラコステの頭文字で、最初の「1」は「素材」を、次の「2」は「半袖」を指す。最後の「12」は、試行錯誤の結果、ルネ氏がようやくOKを出した試作品の番号を示している。

テニスウエアに革命を起こした天然のハイテク素材

ボディに使われているのは、プチピケと呼ばれるコットン100%のニット素材だ。
これはルネ氏が友人の実業家、アンドレ・ジリエ氏と開発した素材で、日本では鹿の子とも呼ばれる。きめが細かくて肌触りがよく、丈夫で伸縮性にも優れた素材は、テニスウエアとして申し分ないものだった。
当時の選手たちが着ていた布帛のシャツは、熱がこもりやすく、同時に汗をほとんど吸収しないという欠点があった。そのため、汗冷えがひどく、ルネ氏もよく風邪を引いていたという。その点、プチピケは通気性に優れ、汗もしっかり吸収する。
鮮やかな発色もラコステのプチピケの特徴。洗濯を繰り返しても色褪せがしにくい
ラコステの代名詞というべきプチピケには、現在も厳選された素材が使われている。
糸の原料となるコットンは繊維長が35mmを超える超長綿。なかでも最高ランクに位置付けられるアメリカ産のスーピマコットンを使用する。
さらに2本の糸を撚り合わせた双糸を使用することで、単糸で編んだ鹿の子よりも強度や耐久性を向上させている。そのため、型崩れがしにくく、キレイな状態が長続きするのだ。
また、編み機の針の懐(ミシン針が編地に入る位置の周辺スペース)が深く、かつ針のカーブが強いため、表面にくっきりとした凹凸が生まれるのも特徴のひとつ。この凹凸によって肌への接触面が減ることで、汗をかいてもサラサラとしたタッチが持続する。

ワニマークを採用した理由

ラコステのポロシャツと聞いて、真っ先に思い浮かぶのが左胸のワニだ。
数々のエピソードが残るワニのエンブレム
このワッペンが最初につけられたのは、ブランドの設立年である1933年のこと。ユニフォームの胸にシンボルマークをつけること自体が革新的だったという。
なぜワニなのか?
その理由は、食いついたら離さないプレースタイルから、ルネ氏がワニの異名をとっていたことに由来する。
最初のワニのデザインは、ルネ氏の友人であるデザイナー、ロベール・ジョルジュ氏が描いたスケッチがもとになったという。

最初のワニのデザインのお写真

(c) Droits reserves
その後、約90年間にわたって、デザイナーたちの手によってワニのエンブレムは少しずつ色や姿を変えながら、現在へと受け継がれている。エンブレムのワッペンはワニの縁取りの色と同じ黒い糸で縫い付けること、ワッペンの幅は3cmというのが創業以来のルールである。

上品さと機能性が同居したディテールワーク

ディテールをチェックしよう。
左右の裾には動きやすさを高めるためのサイドスリットが設けられている。さまざまなブランドに模倣されたこのスリットの長さは20mmと定められている。
前立て部分のボタンには、高級ドレスシャツに使われる天然の貝ボタンを使用。ボディの色によって、白蝶貝と黒蝶貝が使い分けられている。
上の前立ては、右胸の見頃の方へ2mm程度横に出るように設計されている。こうすることで、一番上までボタンを留めた際に体を動かしても、下の前立てが見えることがない。
そのほか、肩の裏側がテープで補強され、衿には立体感をキープする特殊な縫製が施されるなど、目につきにくい部分も作り込まれている。
そんなラコステ・クオリティを支えるのが、日本の技術力だ。
日本で販売されている現行モデルを生産するのは、秋田県横手市にあるラコステの専門工場。ここでは、フランス・トロワにある自社工場の精密な仕様書をミリ単位で守りながら、約30もの工程がほとんど手作業で行われている。

多彩なカラーリングも「L.12.12」の魅力

意外なことに、発売から20年近くの間、カラーバリエーションはホワイト1色のみだった。その理由は、テニスコートは紳士淑女たちの社交の場であり、汗ジミが目立たない白い服を着ることがマナーとされていたため。
1951年にようやくネイビーやレッドが加わり、その後、シーズンのトレンドに合わせてカラーパレットが追加されていった。
現在、カラーバリエーションは40色以上にものぼる。
ホワイト、ネイビー、レッド、ラコステ・グリーンと呼ばれる深い緑色を加えた6色が常時展開されるレギュラーカラー。今シーズンはオンライン展開で26色、店舗で16色がラインナップされている。
すでに持っているのに、ついつい買い足したくなる。シーズンごとに加わるニューカラーや多彩なカラーバリエーションにコレクション心が刺激されるのだ。 

アイビーブームをきっかけにカジュアルウエアに

では、テニスウエアとして誕生したL.12.12は、どのようにしてファッションへと昇華されたのか?
運命の転機は1960~80年代にかけて起こったアイビールック、プレッピースタイルブームにある。
このブームをきっかけに、カジュアルウエアとしてもブレイクを果たした。
昨今は古着ブームを追い風に、人気が再燃しているという。
また、現代のトレンドを踏まえたスタイル展開やコラボ企画によって、ヒップホップやグライムなどの音楽シーン、スケートボードといったスポーツカルチャーに浸透したことで、Z世代のファンも獲得している。
「L.12.12 ライト ポロシャツ」 17,600円(税込)
今シーズンは現代の厳しい暑さに対応する「L.12.12. ライト」という新モデルがリリースされた。
このモデルには、コットン100%のプチピケよりも軽量で、かつ通気性に優れたポリエステル混の新素材が使用されている。
当初は物議を醸すほど革新的なテニスウエアだったL.12.12は、誕生から90年余りが経った今、オンオフ問わず着られる上品カジュアルの代表選手となった。ルネ・ラコステ氏が守り抜いた、動きやすくて心地いい服を求める心は、時代を超えたCommon Senseなのだ。

《註》

[1]馬に乗って行う団体球技の1種。世界でもっとも古い歴史をもつ競技のひとつ。

Text by Ryota Osujo

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