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始まりはパタゴニア創業者との出会い:フリースの元祖ポーラーテックの技術力とは

2024.12.24
アウトドアブランドのパタゴニアと言えば、「シンチラ」を思い浮かべる人も多いのではないだろうか。いわゆるフリースの代名詞となった商標で、すべてのフリースはここから始まったと言っても過言ではない。
しかしながら、このフリースがポーラーテック(POLARTEC)というファブリックメーカーの技術によってもたらされたことを知っている人はどれほどいるだろうか。
今回、ポーラーテックの日本代理店であるSCTジャパンの蓮沼啓介さんに、フリースの開発に至るまでの経緯、そして多様な種類のフリースを展開するポーラテックの技術力を伺った。

PROFILE

蓮沼 啓介(はすぬま けいすけ)

株式会社SCTジャパン セールス&マーケティング部
2019年に入社し、ポーラーテックのエージェント業務を担う。

フリース開発秘話

ポーラーテックの歴史を教えてください。
1865年に、ポーラーテックの前身となるモールデン・ミルズという紡績工場がアメリカのボストンで誕生しました。
 
ボストンは非常に寒い地域で、当時はウールを使ったアメリカ軍のコートや家具用のファブリックを作っていました。第2次世界大戦後には、ポリエステル繊維も扱うようになります。
1950年代には、ファッション業界でフェイクファーが大流行し、モルデン・ミルズ社もその製造で、業績を上げていきました。
モールデン・ミルズ社の風景
フリースの開発はどういった経緯だったのでしょうか。
フリースはパタゴニアの創業者であるイヴォン・シュイナードとモールデン・ミルズとの偶然的な出会いから始まります。
 
イヴォンはアウトドアクライマーでもあり、濡れてもすぐ乾く化学繊維に注目していました。そこで奥様のマリンダがロサンゼルスの卸売りセンターでフェイクファーを見つけて購入したらしいです。
そのフェイクファーを使って、イヴォンはセーターを作り様々な条件でフィールドテストを行いましたが、毛玉になったり、見た目が不格好だったりと問題はありましたが、素材自体は非常に暖かく濡れてもすぐに乾く優れたものでした。
そこでしっかりとアウトドアでの使用に耐えうるものが欲しいということから、モルデン・ミルズ社に開発を依頼しました。
当時のフリースの開発秘話などは残っていますか。
これまでなかった素材を開発するため、いくつもの基準をクリアしていくのは大変だったようです。
 
「シンチラ」も幾度かの試作品を乗り越えてできたものでした。初期にはフェルトを化繊で作ったものを開発し、それを製品化したらすごく好評だったようです。
 
そこから開発がさらに進められて、両面起毛のフリースができました。チンチラ(ビロード)のような肌触りと美しい光沢感があり、そこにシンセティックの言葉をかけあわせて「シンチラ」という名称が誕生しました。
1985年に登場した「シンチラ」

ポーラーテックの技術力とは

ポーラーテックのフリースの特徴を教えてください。
軽量で暖かく、通気性に優れているという特徴があります。それを可能にするのが、創業以来のノウハウの蓄積です。
 
たとえば、軽さを出すには編地を工夫しなければなりません。ポーラーテックは丸編みの機械を使いながら、編地を適度にあまく編んでいます。それにより糸と糸の間に隙間ができるので、その分だけ生地が軽くなりますし、通気性が確保されるので、蒸れも感じにくくなります。
 
また暖かさの点では、起毛がポイントです。単に起毛をかけるのではなく、針の硬さや角度、回転するスピードなどを調整しています。そうすることで、毛足の長い嵩高のある起毛が実現でき、空気を滞留させることで保温効果を高めています。
はっきりとわかる起毛
ポーラーテックは衣服を3つに分けて開発していると聞きました。
ポーラーテックの強みとして、「レイヤリングシステム」を自社で完結できることです。大枠3つのレイヤーを想定していて、それぞれに適した生地を開発しています。
 
第一に、ベースレイヤー。いわゆる肌着のように、直接肌に触れる衣服に使用される生地があります。こちらは吸水速乾性、通気性、抗菌防臭等の効果がある生地です。
その次に、インシュレーションという保温性を重視したカテゴリーがあって、フリースはここに該当すると考えてください。
最後にアウターに該当するウェザー・プロテクション。ここには透湿防水機能をもった素材が当てはまります。
具体的な商品を教えてください。
ポーラーテックには1つの生地カテゴリーのなかに、複数のスタイルが用意されています。たとえば、インシュレーションでもよりアウターを意識したフリースもあり、「ウィンドプロ」という素材があります。
「ウィンドプロ」の素材感
こちらは通常のフリースと同じような軽さと保温性を実現していますが、他の商品と比較して4倍もの防風性があります。この防風性を実現しているのが編み目で、ギチギチに編むことによって防風性を高めています。また、シェルのようにメンブレンが入っているわけではないので、しっかりと通気性は確保できているのが特徴です。
他にも特徴的なフリースはありますか。
「サーマルプロ」というものがあります。こちらはポーラーテックの生地のなかでも、意匠性に特化したものを指します。
機能は通常のフリースと変わらないのですが、ボアフリース、セータールックやリブルックといったデザイン性に富んだ生地カテゴリーとなります。
「ボアフリース」は素材面からも肌触りの良さがうかがえる
これだけ種類が豊富なのは、他社の製品を意識してのことですか。
ポーラーテックは自分たちが必要だと思うものを開発するというスタンスです。
またパタゴニアなどのブランドと共同開発も行っています。ブランドとのコミュニケーションの中でよりアイデアがブラッシュアップされることもあるようです。
素材の研究開発、フィールドテストを繰り返すことでより快適な衣服内環境を実現することがポーラーテックの目標なのです。

ポーラーテックが見据える今後の展開

今後の商品開発について教えてください。
ひとつはアクティブ・インシュレーションという、活動時に適度な保温性を保ちながら、蒸れやオーバーヒートを防ぐという素材開発に力を入れていることです。
ポーラーテックの代表的な素材にアクティブインシュレーションの元祖である「アルファ」があります。通常のフリースよりもさらに甘く編んでいるもので、向こう側が透けて見えるくらい薄くなっています。
生地の向こう側が透けてみえる「アルファ」
元々米軍の特殊部隊向けに開発された生地になりますので、その性能の高さはお墨付きです。
現在アウトドアウエア業界で「アルファ」は熱烈な支持があり、ランニング用のベストなどにも用いられています。また暖冬といわれている現在では、ダウンの代わりにアルファを使ったアウタージャケットも製品化されています。
もうひとつは、サステナビリティを重視した開発です。ポーラーテックはリサイクルポリエステルを使用したフリースを30年以上も製造しています。今後、この流れはより加速していくと思います。
たとえば、PFASフリーという有機フッ素化合物を使わない撥水剤を使用したり、防菌防臭加工にはミント由来の成分を使っています。
また植物由来ということでは、セルロースや麻であるヘンプを使った商品開発にも力を入れています。
PFASフリー素材による環境への配慮
機能性がしっかりと発揮できることが前提で、そこにサステナブルの概念を加えるというのが開発に対する姿勢です。
今後も、機能性と環境配慮という両輪で商品開発を進めていきますので、現在の衣類の常識を超える画期的な商品の登場を心待ちにしていてください。

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