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ザ・ノース・フェイスの 「アコンカグアジャケット」は ‶薄軽ダウン″の先駆者だ

2026.01.15
薄手で軽く、そして暖かい。ここ数年続いた暖冬も追い風となり、軽快な着心地と保温性を兼ね備えたダウンジャケットが冬のワードローブに欠かせない存在となった。いわゆる「薄軽ダウン」と呼ばれるこのジャンルの原型のひとつといえるのが、2002年に登場したザ・ノース・フェイスの「アコンカグアジャケット」だ。
冬季登山用のミッドレイヤーとして開発されたライトウェイトダウンは、結果的にインナーダウンという概念を浸透させる立役者ともなった。
2024年には新たにジップ・イン・ジップ機構が搭載され、ザ・ノース・フェイスのレイヤリングシステムに接続された。同ブランドのスタッフの多くが所有し、日常的に使い続けているというダウンジャケットの実力を、ザ・ノース・フェイスのデザインチームリーダーである佐々木継太さんとともに明らかにしていく。

PROFILE

佐々木 継太(ささき けいた)

ザ・ノース・フェイス デザイナー
アパレル企業を経て、2016年に株式会社ゴールドウインに入社。現在はライフスタイルカテゴリーのデザインチームを指揮する。

「ジップインジップアコンカグアジャケット(ブラック)」 37,400円(税込)

原点は極地遠征が想定された最高峰ラインのミッドレイヤー

2002年の秋冬シーズンにアコンカグアジャケットは登場した。
「当時のサミットシリーズのひとつとして、冬季登山やアルパインクライミングを想定した軽量ミッドレイヤーとして企画されたモデルです」
サミットシリーズとは、ザ・ノース・フェイスが展開する最高峰ラインで、極地への遠征や高所登山が想定されたプロ仕様の装備群を指す。
アスリートとの共同開発のもと、革新的な素材と技術が投入されたサミットシリーズ。過酷なフィールドテストを経て、性能が証明された製品だけにその名が冠される
「開発にあたって重視したのは3点でした。ベースレイヤーの上に着て、その上にハードシェルを重ねる、というレイヤリングを前提に、保温性、長時間行動に対応する軽さと動きやすさ、そしてバックパックに常備できる携行性を付与することに主眼を置きました」
2000年代初頭はインナーダウンという概念自体がまだ一般的ではなく、ハイロフトの羽毛が充填されたアウター専用のダウンジャケットが主流だった。
背面には水平キルティングを採用。ロフト感を抑えつつ、熱を効率よく保持できる
「当初は、『ダウンジャケットにしては薄すぎないか?』と危惧する声もありましたが、むしろこの薄さや軽さが好評を博し、年々ユーザーを増やしていきました」
結果、20年以上にわたって売れ続けるロングセラーモデルとなった。

遠赤外線を活用するクリーンダウン光電子®をインサレーションに

実際に袖を通してみると、たしかにバルトロライトジャケットやヌプシジャケットと比べ、格段に薄手で軽い。そのカギを握るのがインサレーションだ。
「このモデルには当初からクリーンダウン光電子®を採用しています。徹底的に洗浄されたクリーンダウンが持つ高いかさ高と保温性に光電子®の効果を加えることで、効率よく暖かさを保つことができます。実際、冬場の屋外で着用すると、じわじわと暖かくなってくるのを実感できます」
つまり、クリーンダウン光電子®を使うことで、インサレーションの量を増やすことなく十分な保温性を確保でき、結果として全体の薄型化と軽量化を実現しているのだ。
光電子®は着る人自身の体から放射される遠赤外線を活用して自然な暖かさを生み出す。直接伝わる熱ではなく、じんわりとした温もりを保つことで、暑すぎない快適な状態をキープできる
ファーストモデルの表地には薄手の15デニールのリップストップナイロンが使われていましたが、現行モデルでは、若干厚手の20デニールを採用している。
「単純に厚くしたのではなく、初代と同等の薄さと軽さを保ちながら、量産時の安定性や引き裂き強度、耐久性を向上させました」
表地にはC0という環境配慮型の撥水加工を採用。従来のC6撥水に比べ、環境負荷を低減しながらも、日常使用や行動中の小雨・雪に対応する十分な撥水性能が確保されている
本来はミッドレイヤーが想定されたダウンジャケットだが、アウター使いにも耐える機能的なディテールが随所に盛り込まれている。
「摩耗しやすい袖口や裾はナイロンタフタで補強することで、日常使いでの耐久性を確保しています」
袖口には手首のフィットを調整でき、冷気の侵入を防ぐ面ファスナーのアジャスターが装備されている(写真左)。裾部分にはシルエットを微調整できるドローコードが(写真右)。

アウターと連結できるジップ・イン・ジップ機構を搭載

登場以来、折に触れて改良が重ねられてきたアコンカグアジャケットだが、2024年秋冬シーズンには、現代の着こなしに合わせて再チューニングされたモデルが登場した。そこに新たに搭載されたのが、ジップ・イン・ジップ機構である。
これはインナーとアウターをジッパーで連結させ、一着のジャケットとして機能させる独自のレイヤリングシステムである。着脱の手間を減らし、気温や行動量に合わせた防寒環境を構築できる。
「ジップ・イン・ジップは、近年の気候変動に対応するため、ブランドとして力を入れている機構です。幅広いアイテムに搭載することで、着方の幅を広げています」
ジップ・イン・ジップ対応アウターの内側に固定するためのスナップボタン式の留め具。使わないときは収納できる
シルエットもアップデートされた。アームホールや身幅は、現在の標準的な体型やレイヤリングを想定して微調整が加えられた。若干ゆとりを持たせた身幅により、ミッドレイヤーとしてだけでなく、アウター的な着用もしやすくなった。
一方で、デザインに関してはほとんど変更は加えられていない。
「デビューした2002年の時点ですでに完成度が高く、キルティングの配置やステッチライン、着丈などに、ギアとしての合理性と視覚的なバランスが備わっていたからです」
過去には、異素材を組み合わせたテクニカルな派生モデルが作られたこともあったが、改めて原点を見直した結果、もっとも普遍性が高いのは初代のデザインだったという。
カラーバリエーションは全5色。先に紹介したブラックに加え、左からアスファルトグレー、フィズライム、クリアレイクブルー、クラシックカーキが用意されている

アウターとしても、ミッドレイヤーとしても使える万能モデル

アコンカグアジャケットは、バルトロライトジャケットのようなヘビーアウターとは役割が異なる。
「あくまでレイヤリングによって快適性を調整するミッドレイヤーとしての役割に重点を置いています。気温や行動量に合わせて着脱し、必要に応じてアウターと組み合わせることで、防寒の幅を広げます」
とはいえ、アウトドア専用というわけではない。都会の冬であれば、単体でもアウターの役割を十分に果たしてくれる
「軽くてかさばらず、パッカブルにも対応するアウターは、通勤や出張、旅先での移動など、屋内外を行き来するシーンで重宝するでしょう。すでにダウンジャケットを何着か所有している人にとっても、気温調整用のサブとして役立つはずです」
付属のスタッフサックに収納すれば、コンパクトに持ち運び可能
3万円台という価格帯も魅力的だ。単体でも、レイヤリングの一部としても機能し、かつシーズンをまたいで活躍する点を踏まえれば、その価値は数字以上に大きい。
「このモデルに関しては、思い切った進化よりも着実な継続の道を選んできました。時代に合わせたチューニングは施していますが、軸となる思想やデザイン、立ち位置は変わりません」
気候の揺れが大きく、着こなしが多様化する現代において、薄軽ダウンの先駆者であるアコンカグアジャケットの存在感はますます高まっていくだろう。

Text by Ryota Osujo

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