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なぜ“風を通すのに水を弾く”ことができたのか? モンベル「クール パーカ」が挑んだ課題
一般的に相反するとされる通気性と撥水機能の共存や、淡色での高いUVカット性能という技術的ハードルに対して、なぜ彼らは妥協なき開発に踏み込んだのか。
今回、株式会社モンベルの榎本渓さんへの取材を行い、同製品の機能設計とその徹底したこだわりを調査した。
PROFILE

榎本 渓(えのもと けい)
株式会社モンベル
広報部
昨年度まで大阪の企画部でウエアの商品開発に携わる。 好きなアクティビティは縦走とパックラフト。夢は犬と一緒に登山すること。
「アウター」としての使命と、相反する機能の共存
同社の機能素材「ウイックロンクール」シリーズの中では、パーカー形状のアイテムにのみ撥水加工が施されている。その背景には、アウターとしての明確な役割があった。Tシャツなどのアンダーウエアであれば吸水速乾性が求められるが、一番外側に羽織るパーカには、当然ながら別の機能が必要となる。「パーカーは基本的に一番外側に羽織る、いわゆるアウターとして使われることが多いアイテムです。『クール パーカ』も、水辺でのレジャーからカヤックなどのパドルスポーツで活用されるお客様が多くいらっしゃいます。そのため、水辺で使う上で、撥水という加工を施しています」
この性能を裏付けているのが、社内の充実した検証環境だ。大阪本社の企画部には外部試験機関と同等の試験機が揃ったラボがあり、開発中に適宜通気度などを測定できる環境がある。体感としての涼しさと、数値としての通気度、その両軸を自社内で綿密に確かめられることで、相反する機能の共存を実現することができた。
淡色でのUVカットと、軽さが生むジレンマ
夏のウエアにおいて欠かせないのが紫外線対策だろう。「クール パーカ」は、UV-A、UV-B全波長の遮へい率平均で90%以上という高い数値を誇る。しかし、これを白色などの淡色生地で達成するのは技術的に容易ではない。濃色に比べて光を通しやすく、熱を集めにくい淡色は、一般的にUVカット率が低くなるからだ。性能の出しにくい色番は生産を見送るという選択肢もあるなかで、同社はあえてその道を選ばなかった。夏に着たい涼しげな色合いをユーザーに提供するため、生地の開発とテストを行い、この数値を満たした。
「夏だからこそ、涼しげな色の服が着たいというニーズは大きいだろうと考えました。 淡いブルーや淡いグレーといった色をしっかり打ち出していきたいという声が社内でもあり、淡い色やうすい色も排除しないことを心がけました」
機能とデザインの両立へのこだわりは、生地の重量の微細な調整においても発揮された。メンズの平均重量で191g、ウィメンズでは160gという驚異的な軽さを実現しつつも、単に軽量性を追求すればいいというわけではない。軽く薄くしすぎればアウトドアウエアとしての耐久性が落ち、着用時にハリのない質感になってしまう。
開発の過程では、徹底的なフィールドテストが行われた。そうした試行錯誤の末に、耐久性と軽さ、そして服としての質感を損なわない絶妙なバランスが導き出された。より激しい運動を伴うシーンには、さらに薄手の「ウイックロン クールライト」を用意するなど、ユーザーの用途に応じた緻密なラインナップ展開も行っている。
着心地を支える細部へのこだわり
肌へのストレスを減らすための細やかな配慮も、着心地のよさを決定づける重要な要素だ。縫製には生地の段差を抑えるフラットシーマーを積極的に採用し、運動時の擦れを防いでいる。生産工場においても、社内の厳格な基準に基づく品質管理が徹底されており、安定した製品供給を支えている。
また、多様な体型に対応するためのパターン設計にも注力してきた。たとえばレギューラーサイズでは窮屈に感じる方にもフィット感を体感してもらうために、ゆったりとしたRサイズ(リラックスサイズ)を展開している。


さらに、手の甲を覆うサムホール仕様など、日焼けを防ぐ細部のデザインは幅広いユーザーから支持を集めてきた。

「クール パーカ」が生んだ開発ノウハウ
「クール パーカ」で培われた通気性と撥水性、紫外線対策のノウハウは、現在も新たな製品開発へと受け継がれている。その象徴のひとつが、全色・全商品でUPF50+を達成した新ラインナップ「UVテクト」シリーズだ。
日焼けを防ぐという絶対的な目的を満たしつつも、風を通し、過酷な暑さの中でも快適に着続けられるという同社のアイデンティティは、新製品の中にも確かに息づいている。
通気性と撥水性という相反する機能を両立させた「クール パーカ」は、現場の声をもとに課題を一つひとつ解決してきたモンベルのものづくりを象徴する一着といえる。














