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人体研究が生んだ“身にまとうテーピング”! ワコールのスポーツタイツ「CW-X」の技術とは?
スポーツタイツは脚を締めつけるもの。そんなイメージを持つ人は少なくない。しかし、ワコールのコンディショニングウエアブランド「CW-X」が目指してきたのは、単なる着圧ではなく、テーピングの発想をウエアに落とし込むことだった。
“身にまとうテーピング”と形容されるCW-Xのスポーツタイツは、人の走りや動きをどう変えるのか。開発に携わった株式会社ワコールの伊藤美稚子さんに、その設計思想と技術について聞いた。
PROFILE
伊藤 美稚子(いとう みちこ)
株式会社ワコール
マーケティング本部 開発ブランド統括部 CW-Xブランド 商品企画課 課長
ワコール入社後、ウイングブランドで商品開発や新規ブランドの立ち上げなど、インナーの商品企画に幅広く携わる。2016年よりCW-Xの商品企画を担当し、現在に至る。

“身にまとうテーピング”はコンプレッションウエアと何が違うのか
スポーツタイツと聞いてまず思い浮かぶのは、脚をギュッと締めつける感覚だ。筋肉のブレを抑えながら、運動時の体を支える役割を持つ。そんな機能は理解しているつもりだった。ところが実際にCW-Xを着用して走ってみると、その印象は変わった。強い圧で脚を押さえ込むというより、骨盤まわりや脚の動きが自然に安定するような感覚だ。走っているうちに余計な動きが減り、体の使い方がすっとまとまる。取材時にインプレッションを伝えると、伊藤さんはこう答えてくれた。
「CW-Xは、体を押さえつけたり、無理に力を引き出したりするものではありません。体の動きに追随しながら関節や筋肉をサポートし、より動きやすい状態へ導くことを目指しているんです」
研究所員の家族がスキーでひざを負傷した際、テーピングによる応急処置で無事に下山できたという。この経験をきっかけに、「テーピングの原理を、専門知識がなくても、より手軽に多くの人が体感できるようにしたい」という発想が生まれ、タイツの開発が始まった。約3年の開発期間を経て、1991年にCW-Xが誕生した。
「CW-XのCWはコンディショニングウエアの略で、Xは未知数や無限の可能性を意味します。今でこそコンディショニングという言葉が一般化しつつありますが、私たちは1991年からその考え方で商品を作ってきました」

ワコールだからできた、体に一番近い機能設計
テーピングの発想をウエアに落とし込む。その実現を支えているのが、ワコールが長年培ってきた人体研究とインナーウエアづくりの知見だ。その研究を担うのが、1964年に設立されたワコール人間科学研究開発センターである。これまでに延べ4万5,000人以上の人体データを収集する形態研究をはじめ、美・健康・快適という価値を追求する感覚生理研究や、身体の動きを分析する動態研究にも取り組んでいる。
動態研究では、「動作やフォームといった身体の外側の動き」と「骨格や筋肉といった身体の内側の動き」の両面から分析した。その研究成果は、CW-Xの開発にも生かされている。
「ワコールにはガードル(補整下着)作りの技術があります。伸縮性のある素材開発や部位ごとに強弱をつける技術、肌あたりを少なく快適な状態に縫製する技術といった下着メーカーならではの知見がこのタイツにも生かされています」
下半身を丸ごと見る。ジェネレーターモデルの技術
今回取り上げる「GENERATOR MODEL(ジェネレーターモデル)」は、腰から脚までをフルサポートするモデルだ。「CW-Xでは、下半身の動きにおいて股関節がもっとも重要だと考えています。このモデルは、その股関節をコアとして、太もも、ひざ、ふくらはぎに加え、腰やおしりまでサポートするモデルです」
CW-Xのいう“身にまとうテーピング”とは、生地全体を均一に締めつけるものではない。筋肉や関節の動きに沿って、ウエアの中にサポートラインを組み込む設計だ。筋肉に沿ったラインは運動時の筋肉のムダな動きを抑え、関節部に配備されたラインは動作時の関節の安定性を高める。それらの働きによって、運動時のカラダの負担軽減や疲労軽減をサポートする。

走る、止まる、蹴る、切り返す。ジェネレーターモデルはおしりまわりのサポートによって中殿筋の働きをサポートし、切り返し動作時の下半身の安定、さらに、股関節・おしり・太もも・ひざ・ふくらはぎを連動して支えることで、ランニングのような反復動作から球技のような多方向の動きまで、幅広いスポーツに対応できる設計となっている。

実際に着用して走ると、おしりや骨盤まわりが自然に安定するような感覚があった。脚だけが前に出るのではなく、骨盤から脚が動いていく。強い圧で固定されているわけではないのに、動く際の体の軸がブレにくくなるのだ。
さらに今回取り上げる「ジェネレーターモデル クール」は、暑い時期の着用を想定したモデルである。全面にメッシュ素材を採用することで熱やムレを逃がし、暑い季節でも快適に着用できるよう設計されている。
いかに薄く、軽く、通気性に優れたメッシュ生地で暑い時期でも快適に着用できるモデルを実現することが、開発における大きな課題だった。
「メッシュ生地で下半身をフルサポートするには、第一に生地強度の問題がありますし、サポート力、ベース生地部とサポートライン部の着圧の差をどのように出すかも難しい。
涼しさと機能を両立させるために、かなり苦労しました」
そこで鍵となったのが、繊維・素材メーカーのセーレン株式会社が開発した加工技術「VISCOMAGIC®(※)」だ。1枚の生地の中で、部位ごとにパワーの強弱を切り替えられるのが特徴である。
「VISCOMAGIC®では、まずパワーの強い生地を編み立て、そこに特殊な処理を施すことで、部分的にパワーの弱い箇所を作ります。つまり、1枚の生地の中でパワーの強度を切り替えられるため、別布を縫い付けなくてもサポートラインを作ることができるんです」
さらにこのモデルでは、縫製を主要な部分に絞ることで、縫い目による厚みやごわつきを抑えている。それが、着用時のフィット感の良さにもつながっている。

科学で裏打ちされたコンディショニング思想
商品化にあたっては、生地そのものの物性・機能性試験に加え、実際の着用時におけるサポート性能まで段階的に検証している。「まず生地の段階で、スポーツに適した弊社品質基準に則り、寸法変化・破裂強さなどの物性面と吸汗速乾性、紫外線遮蔽性などの機能性面を確認します。
この素材は1枚でパワー切り替えをしているので、伸長回復性を含めたパワー設定もしています。そのうえで製品を作り、ひざの負担軽減や疲労軽減がきちんと実現できているかを実際着用し、走ってもらい、客観、主観評価を行っています」

CW-Xが見据えるのは競技の現場だけではない。「カラダを動かすすべての人」を支えるコンディショニングウエアとして接点を拡大していく。
「体に負荷がかかる場面は、スポーツシーンだけにあるわけではありません。配送業、介護職、農業、漁業など、体を資本に働く人たちにも活用してほしいです。実際にそういった業種で働くユーザーも増えつつあります」
コンプレッションウエアではなく、あくまでコンディショニングウエア。CW-Xの“身にまとうテーピング”という発想は、人体研究と素材技術を組み合わせることで、1枚の生地にサポート機能を組み込むコンディショニングウエアを実現した。
(※)VISCOMAGIC®はセーレン(株)の加工技術/商標です
Text by Ryota Osujo







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