

キャンプは、一定の状態が続くアクティビティではない。設営で体を動かし、遊びで汗をかき、焚き火の前で止まり、やがて眠る。この“動く→止まる”の切り替えの中で、服が常に快適であることは非常に重要だ。
キャンプ女子として知られる森風美がフィールドで実際に身に着けながら、その機能と実用性を検証する連載、キャンプ女子・森風美の「キャンプ服の実力」。第2回は、マウンテンハードウェアの「エアメッシュ」シリーズ。Octa®(オクタ)素材を採用した中間着を取り上げる。
PROFILE

森風美(もり・ふうみ)
1994年生まれ。幼少期からアウトドアに親しみ、慶應義塾大学在学中にソロキャンプの世界へ。フィールドでの実体験を軸にギアやウエアを選び、女性の視点からアウトドアの楽しみ方を発信。モデル・執筆・PRなど幅広く活動中。
“脱がなくていい”という新しい快適さ

キャンプでは、暑くなれば脱ぎ、寒くなれば着る「レイヤリング」で体温を調整するのが当たり前だ。しかし、その都度衣服を脱ぎ着するのは意外と手間がかかる。そんなキャンプの常識を、マウンテンハードウェアの「エアメッシュ」シリーズは軽やかに塗り替えてくれる。
「着ていて一番思ったのが、“脱がなくていい”ということでした。動いても蒸れないし、止まっても寒くならないので、気づいたら一日中着替えずに過ごしていました」

この“着続けられる感覚”こそが、採用されている機能素材オクタ最大の特徴だ。脱ぐか着るかの二択ではなく、身に着けたまま過ごせる。その違いが、キャンプ時間をより自由にしていく。
軽さと構造が分ける、通気と保温の境界線

オクタは、帝人フロンティアが開発した特殊な機能繊維だ。繊維の中心が空洞になった中空構造と、そこから放熱と蓄熱を担う8本の突起が伸びる独特な断面をしている。
「ストローみたいに中が空洞になっているそうなんです。汗をかいてもぬれにくいのに、ちゃんと暖かい。なんだか不思議な感覚でした」

その不思議さの秘密は、表裏でまったく異なるテクスチャにある。表面はレイヤリング時の摩擦を抑え、熱を逃がしやすくしたフラットな組織。対して、 肌に接する裏面は温かな空気を蓄えるボリュームのある起毛層だ。
この「フラット」と「起毛」のコントラストが、相反するはずの通気と保温の共存を構造的に支えている。

「汗をかいてもベタつかず、湿気が外に逃げていく感じがありました。肌面にぬれた感じが残らないのがいいですね。驚くほど軽いので、ずっと着ていても疲れを感じないんです」
オクタは水分を吸って保持するのではなく、空気層に分散させて外へ逃がす。その結果、濡れた感覚を残さず汗冷えも防ぐ。フリースのような厚みはないが、着るとしっかり暖かい。このギャップが、従来の中間着との違いを際立たせている。
登山やトレイルランニングといった“動き続けるシーン”で評価されてきた素材だが、“動く→止まる”を繰り返すキャンプでも、その性能はしっかり生きてくる。むしろ、状態が切り替わる場面が多いからこそ、その恩恵を体感しやすいのだ。
“動く→止まる”は変わるのか? 4つの視点で検証
動いているときと、止まっているとき。この差を1枚で埋められるのか? 森さんが、4つの視点から検証した。検証1|朝夕の冷え込みと睡眠への対応

朝夕の冷え込みや就寝時は、体温変化が特に大きい場面だ。
「風を通す素材なので、これ1枚だと寒いんですけど、インナーとして着ているだけでしっかり暖かいです。特に驚いたのが寝るとき。風を通さない素材だと寝袋の暖かさがうまく体に伝わらなくて冷えることがあるんですが、これは通気性がよいので寝袋の暖かさがダイレクトに伝わる。寝間着としても最高でした」
検証2|動いたときの蒸れにくさ

設営などで汗をかいたあとに冷える「汗冷え」はキャンプの大敵だ。
「設営や愛犬の散歩で少し汗ばんだんですけど、ウエアがぬれる感じはありませんでした。汗が溜まらず外に逃げるので、冷え戻りもなかったですね。一日を通してドライでいられるのは、キャンプではかなりのストレス軽減になります」
一般的な中間着では、汗を吸ったあとに気化熱で体温を奪われがちだが、このウエアはそういった懸念を感じさせない。結果として、不快感による着替えの必要がなくなるわけだ。
検証3|脱ぎ着の回数が減るかどうか

オクタを採用したウエアの真価は、動いても止まっても“ちょうどいい温度”をキープしてくれるバランス能力にある。
「体温をうまく逃がしてくれるので、アウターを脱ぐことはあっても、これ自体を脱ぐことはなかったです。インナーなのに1枚で着ても違和感がないのもいいですね。体のラインを拾いすぎないゆとりがあるので、サイト内を歩いても気になりません」
このウエアの本質は、“脱ぎ着で調整する服”ではなく、“着続けることで熱のバランスを保つ服”であることだ。
検証4|フリースや中綿との違い

従来の中間着との使い分けについてはどう考えるべきか。
「とにかく軽くて動きやすい。一方で、火には弱いので焚き火のときはアウターが必須ですし、風も通すのでシェルとの組み合わせが前提。フリースや中綿が『じっとしていても暖かい』のに対し、オクタは『動いても蒸れずに暖かい』のが得意な素材。レイヤリングのハブとしてこれほど使い勝手のいい一枚はありません」
細部に宿る“使い続けたくなる理由”

森さんが「これいい!」と特に気に入ったのは、ストレスを感じさせない細かな使い心地のよさだった。
「サムホールがすごく使いやすくて、袖を戻したときにスッと指が通るんですよね。肌触りも本当に気持ちよくて、ずっと着ていたくなる感じでした。抗菌・防臭機能もついているので、長く着ていても安心感があります」
直接肌に触れるものだからこそ、肌触りのよさは最優先事項。防臭機能も相まって、泊まりがけのフィールドワークには心強い味方になる。
気分で変えられる“リバーシブル”の楽しさ

さらに、その日の気分で表情を変えられるリバーシブル設計も面白い特徴だ。
「裏返すとカラーの印象がガラッと変わって、スウェットや古着のような風合いになります。表側はアクティブな印象ですが、裏返すとキャンプらしいチルな雰囲気。一枚で二度おいしいというか、着こなしの幅が広がりますね」

テクニカルな表情と、カジュアルなテクスチャ。この二面性があるからこそ、キャンプ場だけでなく、行き帰りの道中や普段使いでも気負わず着回せる。
キャンプの“リズム”に合わせる服

キャンプは、動き続けるわけでも、止まり続けるわけでもない。設営で汗をかいたあとに休み、焚き火の前でじっとして、また少し動く。その間を行き来する“リズム”がある。
オクタの真髄は、そのリズムを乱さないところにある。風を通し、火にも強くないため、アウターとの組み合わせが前提になるが、それでも着替えの回数が減るだけで、キャンプは劇的に楽になる。
「こまめに着替えるのが面倒な人には、本当におすすめです。キャンプを拠点に登山や釣りに行く人など、動く時間と止まる時間の両方がある人には特に使いやすいはずです。荷物も減りますし、何より『今、何を着るべきか』をあれこれ考えなくてよくなる。一日を通して、本当に“ちょうどいい”服でした」
今回の検証の様子は動画でも公開している。実際の動きや体感の変化は、映像もあわせてチェックしてほしい。
Text by Tadayuki Matsui
Photo by Akinori Kawanishi
Original Movie













