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ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックがまもなく開幕! 代表ウエアに見るアシックスの技術力

2026.02.05
いよいよ2月6日、ミラノ・コルティナ2026オリンピック冬季競技大会が開幕する。世界と戦うTEAM JAPANをサポートすべく、オフィシャルスポーツウエアを担当するのがアシックスだ。
この日本代表選手団オフィシャルスポーツウエアには、アシックスが長年培ってきた知見と最新技術が詰め込まれている。一枚のウエアに秘められた技術力を、開発を担当した大堀 亮さんに聞いた。

PROFILE

大堀 亮(オオホリ マコト)

株式会社ASICS

アパレル総括部 開発部

デレゲーションプロダクトチーム マネージャー

アシックスが冬季オリンピックのミラノ・コルティナ2026冬季オリンピック・パラリンピックTEAM JAPANオフィシャルスポーツウエアを担当するのは、2018年の平昌大会以来、8年ぶりとなる。一方で、夏季オリンピックでは長年にわたり代表ウエアを手がけ、衣服内環境をいかに快適に保つかというテーマで研究・開発を重ねてきた。

夏季オリンピックの知見を冬へ。選手の快適性を上げるボディサーモマッピング

その蓄積の中で生まれたのが「ボディサーモマッピング」だ。人体の部位ごとの体温変化や発汗量などを分析、可視化し、衣服内の温度や湿度をより快適に保てるよう設計に落とし込んでいく。今回、アシックスはこのボディサーモマッピングを、夏季オリンピックとは真逆の環境条件となる冬季オリンピックに適用した。
「我々の研究拠点である『アシックススポーツ工学研究所(ISS)』では、人体のどの部分で熱が発生しやすく、どこで汗をかきやすいのかを継続的に研究してきました。この分析結果を応用すれば、冬季の衣服内環境も快適さを保てると考えました」
ポディウムジャケットには、選手の芯の強さを表現した「RYUSUI」グラフィックを採用
近年、世界的な気温上昇により、夏季大会ではウエアによる暑熱対策が最大の課題となっていた。一方、冬季大会では事情が異なる。極寒の環境下では保温性が最優先されるが、同時に競技中やウォームアップ時による発汗が、汗冷えにつながるというリスクを生む。
「冬季スポーツでは保温性に加えて湿度のコントロールも重視されます。体が冷えやすい部分をどう保護するか、そして汗からの湿気をいかにうまく利用するかが、今回の開発のポイントでした」
暖かすぎれば発汗量が増えて汗冷えにつながり、寒ければコンディショニングに影響が出る。相反する機能をいかにバランスよく成立させるか。その答えとして開発されたのが、屋外競技用の「ポディウムジャケット(アウトドア)」だ。

ダウンをチューブ状に配置するという新たな試み

特徴的なのが、体幹部を中心としたダウンの使い方だ。寒さを感じやすい前身頃と後身頃にはリサイクルダウンを配置した。だが「ダウンを多く入れすぎると、暖かくはなりますが、嵩張り、動きにくくなってしまう」という問題があった。
そこで考案されたのが、身頃にチューブ状のダウンパックを縫い付けるというものだった。チューブ構造にすることでダウンの偏りを防ぎ、必要な部位に必要な量だけ配置することが可能になった。
チューブ状にすることでダウンの偏りを減らし、軽さと動きやすさも実現した
「キルティング構造だと、動いているうちにどうしても中のダウンが移動して、狙っている部分を効果的に暖めることが難しいという問題がありました。チューブ状にしてステッチで押さえることで、ダウンの偏りを防ぐだけでなく使用するダウン量も抑えられ、軽く動きやすいという着心地のよさにもつながりました」
外観からは重量感があるように見えるが、実際に袖を通すと驚くほど軽い。それでいて包み込まれるような暖かさをすぐに実感することができる。
この心地よい保温性に貢献しているのが、チューブ間の空間である。体から放熱された、デッドエアと呼ばれる暖かい空気がここに滞留し、空気層ができることでさらなる保温力を生み出している。
背面上部のスリット内側に通気のための穴が施されている
一方で、汗をかきやすい背中の中心部にはベンチレーションのための細かな穴が施されており、適度に湿気を逃がし、快適性を担保している。
「寒くないのかとよく聞かれますが、ISSの人工気象室で検証を重ね、風や冷気が侵入することはないとの結果が出ています。また数値のみならず、実際に着用した状態でトレッドミルで運動をして、体感として得る情報も検証しています」
アスポーツの知見や現場からの声を受けてアシックスと、JOC(公益財団法人日本オリンピック委員会)、JPC(公益財団法人日本パラスポーツ協会日本パラリンピック委員会)が共同で開発

素材を組み合わせることにより、湿りやすい環境での保温性を担保

冬季オリンピックでは雪や氷によりウエアが湿ることも多い。
「ダウンはぬれるとロフトが落ち、保温性が低下します。雪が降ったり、雪面に腰を下ろしたりする状況を考えると、ぬれても性能が落ちにくい化繊素材を使うことも必要です」
表地には防水透湿素材が使用されている
そのため比較的温度の影響を受けにくい身頃の下部や袖、フード部分にはリサイクルポリエステルの化繊綿を採用した。ボトムスも同じく、中綿にはシンセティック素材を使い、冷えやすい腰回りはレイヤード構造を用いることで、効率的な保温性を実現している。
ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピック・パラリンピック冬季競技大会​TEAM JAPAN オフィシャルスポーツウエア
こうした構造設計は、サステナビリティにも結びついている。今回の代表ウエアの開発では、「パフォーマンスとサステナビリティの両立」がテーマのひとつとして掲げられている。チューブ状のダウン構造は軽量化や可動性の向上だけでなく、資源使用量の削減、天然素材への依存の低下にもつながっている。
ファスナーのストラップには廃材を使っていることがわかるよう粒が残されている
「ほぼすべての素材がリサイクル資源となっていますが、それだけでなく、必要な部分に必要な素材を、必要な量だけ使うという考え方は、環境負荷の低減においても重要だと考えています。
またカーボンフットプリントにおいても、タグにCO2排出量を明記することで透明性を高めています。当社はシューズとアパレルの両軸でこの取り組みを進めていきたいと考えています。

カプセル化したマイクロファイバーを封入した新感覚フリース素材

冬季オリンピックではフィギュアスケートやカーリングなどの室内競技も多い。これらの競技には、また異なる機能性が求められる。
「インドアに関しては、アウトドアほど寒くはありませんが、それでも氷上の競技などでは冷気にさらされることが多いのです」
そこで採用されたのが、起毛のないさらりとした肌触りと、表面の細かな格子構造が特徴のフリース素材だ。
「この格子ひとつひとつにカプセル化したマイクロファイバーを封入しています。それぞれのカプセルが暖気を抱え込むため、薄手であっても優れた保温性を発揮します。一方で格子の間は緩い編み地になっているため、湿気を適度に外に放出しやすくなっています」
インドア向けのフリース素材
カプセル化にはもうひとつの利点がある。従来の課題であったマイクロファイバーの脱落を標準的なフリースに比べ約8割も抑制し、使用中や洗濯時に発生する環境負荷を低減することにもつながっている。
素材のみならず、選手の快適性を保つため、他にも細部にわたり細かな配慮がされている。たとえばグローブ着用時や、パラアスリートでも操作しやすいポケットのストラップ、グローブをしまえるほど高い収納力のポケット、直感的に操作できる裾のストレッチコードといったものだ。アスリートのストレスを極力排除しようという気配りが至るところに見られる。
グローブをつけたままでもストレッチコードを操作でき、裾を絞ることができる
「日本代表選手団オフィシャルスポーツウエアは選手やスタッフが自ら選んだものではありません。だからこそ、快適で、不具合のないものづくりをすることが我々のミッションだと考えています」
この大会で得られた知見や、世界最高峰の舞台で磨かれた技術も、やがて形を変え、いつの日か私たちの冬の装いへと還元されていくはずだ。その日を心待ちにしたい。

Text by Junko Hayashida

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