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黄ばみ問題とサヨナラ! 数十回着ても“新品のような白さ”が続くタンジェネットの「チャンプTシャツ」

2025.06.15
気に入った白の無地Tシャツを着続けていたら、色が変わってしまった。そんな経験を持つ人は少なくないだろう。
やはりTシャツは消耗品なのだろうか? 「tangenet(タンジェネット)」に限っていえば、答えは「ノー」だ。
同ブランドが作り上げた「チャンプ Tシャツ(CHAMP T-SHIRTS)」には、特殊な生地と加工によって、汚れが落ちやすく、かつ黄ばみにくいという特性が付与されている。
新品のような白が持続する魔法のようなTシャツは、どのようにして生まれたのか。生みの親である同ブランドデザイナーが誕生秘話を語る。

PROFILE

吉屋 充(よしや みつる)

tangenet デザイナー

2003年にオンワード樫山に入社。メンズブランドのデザイナーとして活動後、2021年に独立し、タンジェネットをスタート。ほかにも、日本のものづくりの魅力を発信するために多彩なデザイン活動を行う。

ブランドコンセプトは、洋と和の融合

タンジェネットは2021年にデザイナーの吉屋 充さんが設立したブランドだ。
「ブランド名の由来は『tangent(接点)』、『gene(遺伝子)』、『network(繋がり)』を組み合わせた造語から。人と人とが接点を持ち、繋がることで実現するモノづくりを通して、日本素材の技術や遺伝子を届けることを理念としています」
ブランドを立ち上げる前、吉屋さんは大手アパレル会社に勤務し、メンズブランドのデザイナーとして活動していた。
「在職中は、毎シーズン日本全国の生地の産地を巡って、いろいろなものづくりに携わりました。そうした経験を通じて、日本産のテキスタイルのクオリティは世界でもトップクラスであることを確信しました。洋服を通して、和のものづくりの力を知ってもらうことがブランドのミッションのひとつです」

型崩れしにくい高密度のジャージー素材

ブランド設立年に発売された「チャンプ Tシャツ」は、tangenetの存在を世に知らしめた看板商品だ。そもそもなぜ、白の無地Tシャツに注目したのだろうか?
「チャンプ Tシャツ」 13,200円(税込)
「昔から、白い無地Tシャツというプロダクトが無性に好きなんです。永遠の定番であり、老若男女誰が着ても格好よく見えますから。
ただ、どんなに気に入っているものでも、1、2シーズン経つと黄ばみや汚れが気になって、結局捨てることになる。
数ある洋服の中で、もっとも廃棄サイクルが短いであろう白い無地Tシャツを長く着用できるようにしたい。そんな思いから生まれたアイテムです」
「チャンプ Tシャツ」は、まさに日本の技術力の結晶だ。
「ボディには広撚(ひろねん)株式会社という福井県のテキスタイルメーカーに作ってもらった生地を使っています。
広撚は、生地の企画・製造・販売を行うテキスタイルメーカーだ
一般的なTシャツには天竺編みというシングル編みの生地が使われますが、このTシャツにはモックロディというダブル編みのジャージーを使っています。
ハイゲージのダブル編みを得意とする同社が手がける高密度のジャージーは、丈夫で型崩れがしにくく、ジャケットやパンツにも使われるものです」
丈夫な理由は特殊なポリエステル糸にもあるという。
「生地の強度と収縮安定性を高めるために、コットンにポリエステルをブレンドしています。
『T400』という東レの伸縮性に優れたポリエステル糸を使っており、この糸が仕上げ時の熱セット(熱風や蒸気を加える工程)によってギュッと凝縮するんです。すると、形態安定性が高まって、洗濯によるねじれやヨレが発生しにくくなります」

「はじく」と「吸う」という相反する加工技術を融合

では、核心ともいうべき「持続する白」はどのようにして実現したのか?
吉屋さんは愛知県に本社がある東海染工株式会社に協力を依頼した。
「東海染工さんは、染色技術加工において国内有数の技術力を持つ会社です。同社の技術者の方々と試行錯誤しながら、約1年半かけて特殊な加工を施した生地を開発しました」
白が持続する秘密は、画期的なハイブリッド加工にあるという。
「撥水加工と吸水加工という、相反する2種類の加工を組み合わせているんです。撥水加工は水だけでなく、皮脂や食べ物の汚れが繊維の中にしみ込むのを防ぐことができます」
開発段階では、吉屋さん自身が醬油やラー油、ソースなどを垂らして洗濯するという実験を繰り返しながら、加工の精度を高めていったという。
一方、黄ばみには吸水加工がものをいう。
「汗や皮脂が生地の奥までしみ込むと、洗濯しても落ちにくくなり、時間が経つと黄ばみの原因になります。でも、この生地は撥水加工で汗や皮脂が繊維の中に入り込むのを防ぐとともに、吸水加工でしっかり水を吸収することで、洗濯時に水と一緒にきれいに落ちるようになっています」
黄ばみにくさにはエビデンスもある。
「生地物性を調べる第三者機関で、黄変の度合いなどを検査しました。
生地に光を照射して強制的に黄ばませるイエローイング法という試験では、ハイテク素材が使われたスポーツウエアと同等の黄ばみにくさがあると判定されています」
ハイブリッド加工は着心地の面にもメリットをもたらす。
「撥水加工だけだと、汗まではじいてしまい、生地が汗を吸い取らなくなります。すると、汗が肌に残ってベタついたり、蒸れて不快になってしまうんです。
その点、この生地は汗を吸う吸水加工もしてあるので、さらっとした着心地が続きます」

着物をヒントにした水平肩線設計

チャンプ Tシャツは、あくまで“ファッションアイテム”である。
「デザインに関しては、シルエットからディテールまで、私の理想をかたちにしました」
着想を得たのは、1950年代に生産されたチャンピオンのTシャツだという。
「この時代のチャンピオンのTシャツは、総じて腕ぐりが大きく、肩のラインが水平で、傾斜がないのが特徴です。
腕の運動量を高めるための工夫ですが、こうした設計は私の好きな着物に通じるところがあり、シンパシーを感じました」
着物のエッセンスは随所にちりばめられている。
「着物のような羽織る感覚を大切にしたかったので、アーム幅、身幅ともにワイドにし、加えて肩線や袖、身頃も着物にならって直線に設計しました」
肩線を水平にすると、肩の生地の分量が増える。着用時にはその生地が身頃に落ちてくることで、着物のような独特のドレープが生み出される。そのため、白の無地Tシャツとは思えないくらい、独特の存在感を放つのだ。
「一枚で着ても絵になるTシャツを目指しました。個人的には裾をパンツにタックインして、少しブラウジングさせる着こなしが好きですね」
発売以来、着実に売れ行きは伸び、年によっては夏前に完売してしまうことも。
ファッション業界での評価も高く、多くのスタイリストやバイヤー、エディターたちに愛用されている。
「生地づくりは福井県で、縫製は徳島県、加工は岐阜県で行っています。加えて生地自体も希少なため、大量生産はできないのですが、これまで1,000枚以上ご購入いただきました。リピート率も高く、自社のオンラインショップでは、5回もオーダーしていただいたお客様もいらっしゃいます」
今季発売された派生モデルの「ジョッキー ポケットTシャツ」 13,200円(税込)
「チャンプ Tシャツ」は長く着用できるのもうれしい。
「着用と洗濯を繰り返す実験を約2ヶ月にわたって70回行いましたが、目立った変化は見られませんでした。
週1回の着用なら、単純に70週以上はもつ計算になります。もし、1年のうち約5ヶ月間、週1回着用すると、約20週間となるので、3年強はもつはずです。着用シーンや汗の量など条件は異なるので、あくまでも参考数値にはなりますが、実際に試して実感いただければと思います」
目先のトレンドに流されることなく、気に入った服を大切に着続けたい。「チャンプ Tシャツ」は、そんなスタイルを持つ大人の理想を叶えるTシャツなのだ。

Text by Ryota Osujo

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