alexanderwang(アレキサンダーワン)、MISSONI(ミッソーニ)など、ヨーロッパを中心とする海外のファッション製品の輸入などを行う
三喜商事株式会社。同社はSDGsへの取り組みとして、スギやヒノキの間伐材を使用した「木糸(もくいと)」でつくられた服などを展開するブランド「Alveri(アルヴェリ)」をスタートした。
2023年1月15日より、クラウドファンディングのプラットフォーム
Makuakeでシャツなどを発売している。
そこで今回、同社の営業本部 オペレーション部 寺西良祐さんに、このプロジェクトを始めたきっかけや製品化における工夫やこだわり、今後の展開などについて聞いた。
SDGsを切り離した企業は成長できない
三喜商事株式会社は創業より68年、ヨーロッパを中心とする海外ファッションの輸入卸、小売りを専門に行ってきた。その中で2022年7月、新社長として熊谷嘉延氏が就任してから、事業領域をライフスタイル全般に拡大していくことになり、公募制のもと、社員が新規事業を考えることになった。寺西さんは当時について、「低迷しているファッション業界をどう打開していくのかを考え続けるなかで、SDGsを切り離した企業は成長できないという考えに行き着きました。そこで私を含む4人がチームを組み、SDGsと関わるブランドの立ち上げができないかと提案したことから、Alveriをスタートすることになったのです」と振り返る。
その後、どんな素材をもとに製品化を進めるか検討していくなかで、大阪府阪南市のメーカーである
和紙の布が、間伐材を再利用した100%の和紙から木糸という素材を開発していることを知ったという。そのとき、「われわれの1番の強みであるファッションと木系を掛け合わせたら、新しいものができあがるのではないかと考えました」と寺西さんは話す。
間伐とは、森林を守るために必要な伐採のことを指す。適切に間伐を行うことで木材価値が上がるだけでなく、生物多様性の保全機能や水源かん養機能(森林が水資源を蓄える働き)、土砂災害防止機能の向上につながるため、林業において必要な作業だ。
「間伐によって生まれた間伐材を利用することは、未来の自然を守ることにつながると考えました。素材としても、木糸は通気性に優れているだけでなく、軽量で、抗菌防臭性、紫外線防止効果があり、けば立ちにくく肌に優しいという特徴があります」
高級素材の衣服を取り扱ってきた知見を生かし木糸の製品をつくる
和紙の布では、糸から布まではつくっていたものの、製品化・ブランド化するまでには至っていなかった。マスクや靴下をつくったメーカーはあったものの、製品化して販売するまでには至らなかった。他メーカーが取り扱わなかった理由は、高いコストにあったという。その一方で三喜商事株式会社は高級インポート品を扱ってきた企業であるため、高級素材に抵抗がなく、むしろ得意分野であることも、製品化を後押しした。そして、数あるファッションアイテムの中で、木糸の特性を生かした服から検討が始まった。
「木糸は素材として麻に近い感覚があったので、ブラウスやシャツから取りかかるといいのではと思いました。麻も最初は少し固いのですが、着ていくうちに体になじんでソフトになっていきます。木糸もそれに近い特徴があります」
また、間伐材のスギとヒノキの掛け合い率によって色が異なることにも着目。オリジナル性が出ることもメリットと捉えた。今後は、たとえば九州のスギでつくった製品を同エリアで特別限定品として販売するなど、地産地消にも貢献したいという。
多色展開や海外進出を目指して
Makuakeでの販売はテストマーケティングとして捉えているそうだ。コンセプトが世に受け入れられるかどうか試したところ、目標予算を達成することができた。「応援してくださった方々は、木糸の服を着ることでSDGsを身近に感じてくれているようです」と寺西さんは話す。今後はカラフルな色展開を考えているという。ブルーベリー、パセリ、ワインなど、残った食材から色を 取って染める技術「のこり染」の技術を持つ企業と話を進めていて、フードロスの解消にもつなげていきたいとのこと。
また素材について、現在は木糸と綿を50%ずつかけ合わせたものを使っているが、コストを下げることができたら木糸100%を目指すことも考えている。そして、将来的には海外進出も目指したいとのことだ。
カラーバリエーションを増やし、海外進出も目指す「Alveri」のこれからに注目したい。