Fashion Tech News symbol
2023.12.22

アパレルデザインの未来を切り拓く、TFL×Style3Dが見せる新たな展開

リンクをコピーしました
2023年7月、日本初のファッションテック専門スクール「東京ファッションテクノロジーラボ(略称:TFL)」は、中国のアパレル3DCGトータルソリューション「Style3D」の日本市場における販売代理店契約を締結し、グループ企業の株式会社FMBにて販売代行を開始した。
Style3Dとは、中国のLinctex社(リンクテックス)が開発・提供するソリューションで、他のアパレル3D CADと比較して、利用者の専門性に左右されないさまざまなシーンで活用できるUI/UXが特徴だ。では、具体的に他のツールとは何が違い、どのような将来性があるのだろうか。
今回は、株式会社TFLのグループ会社である株式会社FMBの井手 文弥さんに、Style3Dの特徴や他ツールとの違い、今後の展望について話を伺った。
PROFILE|プロフィール
井手 文弥(いで ふみや)
井手 文弥(いで ふみや)

株式会社FMB セールスマネージャー・デジタルファッションプロデューサー
明治大学商学部卒。株式会社三越伊勢丹入社。主にメンズ領域で買い付けやイベント企画・PR・オウンドメディアなどを経験。2019年からルビー・グループ株式会社にてWEBディレクションを担当。2023年6月より現職。

CADだけでなくトータルソリューションを提供

Style3Dは、中国全土だけでなく、ヨーロッパやアジア圏を中心にグローバルに展開している。コアとなる4つのプロダクトがあり、各プロダクトは独立した商品として展開され、用途に応じて組み合わせて利用することが可能だ。
以下、4つのコアプロダクトの概要をまとめたものとなる。
①Style3D Studio:モデリング作業を行うソフト
②Style3D Fabric:ファブリック(生地)データの作成や編集を行うソフト
③Style3D Cloud:作成したデータを管理・共有するクラウド上のプラットフォーム
④Style3D Market:約50,000点のアセットを無料で利用できるマーケットプレイス
他の3DCGソフト(Blender、Maya、3dsMaxなど)との違いとして、衣服の3DCG製作に特化しており、3DCGでの表現が特に難しいとされる、ドレープやしわの入り方などの生地の重力下での動きをシミュレーションすることができる。
また、Style3Dとそれ以外のアパレル3DCADソフトの違いについて、「Style3Dは、サプライチェーンにおける川上から川下まで対応可能なトータルソリューションであり、ファッション産業におけるエコシステムです」と井手さんは教えてくれた。
従来のアパレル3DCADソフトは、サプライチェーンにおける川上の「企画」部分の課題解決に焦点を当てたソリューションと言えるが、Style3Dは「企画・生産・販売」といったサプライチェーン全体のトータルソリューションを提供しているのが特徴のひとつである。

トータルソリューションの活用により効率化のメリットも

Style3Dのコアとなる4つのプロダクトはサプライチェーンにおける「企画」部分に該当するが、前述の通り「トータルソリューション」を打ち出しているため、それ以外にもさまざまなサービスを提供している。
たとえば、「Mix Match」と呼ばれる、サイネージでの重ね着も含めたリアルタイムのクロスシミュレーションを実現したサービスが挙げられる。
このサービスは現時点では開発途中だが、前述したStyle3D Studioで作成したプロジェクトを書き出し、Style3Dの他サービスと連携することで活用が可能となる。
MDとしてはスタイリングやカラーコーディネートの確認や検証、また将来的に販売の現場では、お客さまが試着をせずに、自由に展開されている商品の組み合わせを検討することができるサービスとして、拡張していく可能性を秘めている。
©︎Hideyuki Seta
©︎Hideyuki Seta
また、直近トレンドとなっているAIを活用した「iCreate」と呼ばれるタブレッド用のアプリケーションサービスも提供していて、AIによる画像生成や生成した画像からの編集機能などを取り揃え、アパレルに特化した内容となっている。これまで様々なリファレンスを探してデザイン考案をしていたデザイナーにとって、助けになるかもしれない。
©︎Hideyuki Seta
©︎Hideyuki Seta
「このように、Style3Dは幅広いサービスを展開していて、さまざまな領域のアパレル関連企業にご活用いただけます。
たとえば、生地・繊維企業であれば、生地見本をデジタル化してメーカー企業へ提案するために、ブラウザ上で確認可能な二次元バーコードを配布したりサイネージを使ったり、ブランドであれば、デザインを決めるプロセスの際にAIによる画像生成でインスピレーションを得たりすることが可能です。
ファッション業界における全シーンで使える点、自社の領域や必要に応じてサービスを選択して利用できる点が、Style3Dの強みだと感じています」
サプライチェーン全体で同じソリューションを利用すれば、情報が統合され、より効率的なアパレル製品の生産・販売が可能となるだろう。
現状のStyle3Dのソリューションはサプライチェーンにおける「企画」に活用できるものが中心だが、今後は「生産」「販売」の部分のサービスを順次拡大していく予定とのことだ。
1 / 2 ページ
この記事をシェアする
リンクをコピーしました