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2022.12.14

微量の電気によって筋肉を刺激 EMSを利用したトレーニングは本当に効果的なのか?

従来リハビリテーションの分野で使用されていたEMS(Electrical Muscle Stimulation)が、フィットネス分野で活用されるようになった。EMS機器による電気刺激と、自ら体を動かす随意運動を組み合わせることで、短時間で効率的なトレーニングができるという。
EMSプラス随意運動によるトレーニングのメリットとはどのようなものなのか、筋肥大にも脂肪燃焼にも効果的なのか。日常的に運動をしてこなかった人が取り入れても問題はないのか、アスリートや日々トレーニングをしている人がEMSを活用する方法はあるのだろうか。EMSを活用したフィットネスシーンをリードしている「SIXPAD(シックスパッド)」のブランドマネージャーを務める、熊崎嘉月さんに話を聞いた。
まずは、EMS機器の電気刺激によって、筋肉が動く仕組みを確認しよう。
「人間が運動をするとき、脳からの指令が運動神経を通り、運動神経から電気が流れて、流れた電気が筋肉の筋線維を刺激して筋肉を動かします。電気刺激(EMS)は皮膚の表面から電気を流すのですが、そうすると、運動神経は脳から指示を受けたのと同じように筋肉を動かすのです」

低負荷・短時間で速筋を鍛えることができる

 筋肉は大きく、持久力に優れて筋肥大がしにくい遅筋(赤筋)と、瞬発力やパワーに優れ筋肥大しやすい速筋(白筋)に分けられる。簡単に言えば、短距離走や投擲競技の選手が発達しているのが速筋なのだが、EMSは速筋を優先的に鍛えることができるのだという。
「随意運動で速筋にアプローチするとなると、最大筋力の75%程度の負荷をかける必要があると言われていますが、EMSを活用すれば最大筋力の15%程度の負荷で速筋を刺激することができます。これには、電気を流す対象物が太いほど抵抗が少なく、電気が流れやすくなるというオームの法則が関係しています。速筋と遅筋では、前者の方が筋線維の神経が太いのですが、そのため抵抗が少ない速筋に優先的に電気が流れて刺激されるのです」
通常では高重量のウエイトトレーニングなどを行わなければアプローチしづらい速筋を低負荷で刺激できるのは、EMSの大きな魅力だろう。膝などの関節に不安がある人や高齢者でも、筋肥大が見込める速筋のトレーニングにチャレンジしやすしいということになる。
EMS機器による電気刺激と随意運動を組み合わせたトレーニングを、SIXPADでは“ハイブリッドトレーニング”として提案している。
「EMSは筋肥大しやすく糖を消費する速筋に優先的にアプローチし、自分で行う随意運動は脂肪を燃焼する遅筋に優先的にアプローチします。そのため、ハイブリッドトレーニングは、筋肥大を目指したい方と脂肪燃焼をしたい方のどちらにも有効です。
これは論文化もしていますが、随意運動のみのバイクトレーニングとEMSを掛け合わせたものを比較すると、後者の方が、血中乳酸値が最大で約25%、酸素消費量が最大で約17%高いというデータが出ました。つまり、EMSを活用したハイブリッドトレーニングの方が短時間で高い運動効果が得られるということです」
EMS機器による電気刺激と随意運動を組み合わせるのが、SIXPADが提案しているハイブリッドトレーニング
EMS機器による電気刺激と随意運動を組み合わせるのが、SIXPADが提案しているハイブリッドトレーニング
筋肉は速筋と遅筋に分かれている。速筋に優先的にアプローチできるのがEMSの特長
筋肉は速筋と遅筋に分かれている。速筋に優先的にアプローチできるのがEMSの特長
とはいえ、電気刺激ならば何でもいいわけではない。SIXPADの製品では、主に20Hz(ヘルツ)の周波数を採用している(トレーニング内容によって4Hzなども推奨している)。20Hzとは1秒間に20回、0.05秒に1回の割合で、電気刺激を送るということ。筋肉は刺激を受けると収縮して張力を発揮し、次の刺激に備えて態勢を整え、また刺激を受けると収縮する。このサイクルを繰り返せる上限が0.05秒なのだという。
たとえば、50Hz、80Hzという周波数だと、筋肉の準備が間に合わず、結果的に効果は落ちてしまう。周波数が高ければ良いわけではないのだ。
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