Fashion Tech News symbol
Fashion Tech News logo
2023.05.22

100年以上昔と変わらぬ編み方で「made in CANADA」をつらぬく「gym master(ジムマスター)」のスウェット

カナダの「gym master(ジムマスター)」というスウェットブランドを知っているだろうか。定番とされるインポートスウェットブランドが生産国をアジアや南米に移すなか、昔ながらのスウェット作りを今もカナダで続けている。今回は、ジムマスターの日本代理店である株式会社グランド・ワンの吉川昌輝さんに、ブランドの歴史やカナダ製の定番アイテムについてお話を伺った。
「創業は1916年、カナダのノバスコシア州ウィンザーという街で始まりました。当時は『NOVA SCOTIA TEXTILES(ノバスコシアテキスタイル)』というアンダーウエアなどの工場であり、gym masterというブランドはまだ存在していませんでした。創業から100年以上を経て、現在では老舗メーカーとして知られています。
gym masterは、アスレチックウエアとして展開されたブランドですが、その名前からもわかるように、ジムで着用することを想定しているとされています。また、カナダは寒冷地域であることから、消防士の防寒用のインナーとしても使用されていたという伝承が残っています」

1時間に1メートルしか編めないスウェット生地

1980年代~1990年代のgym masterを知る人は生地の話をする。まずはその歴史ある生地づくりからお話を伺っていこう。
「最大の特徴として、トンプキン機と呼ばれる編み機で作られたスウェット生地が挙げられます。この生地は古い編み機で作られ、1時間に1メートルしか編めないため、大量生産には向いていません。しかし、今でもこの編み方で生地を作り続けており、柔らかい9オンス生地で裏地は起毛のあるものが一般的です。
また、軽量かつ暖かいという特徴を持っています。さらに、縫製はフラットシーマと呼ばれる4本針ステッチで縫われています。この4本針ステッチは、1950年代頃からヴィンテージスウェットと呼ばれる製品に多く使われていましたが、1970年代からは徐々にフラットシーマ仕様の製品が減少していったとされています。しかし、gym masterは昔ながらの縫製方法を変えずに製品を作り続けています」
1980年代のカタログ
1980年代のカタログ

普遍的なラグランスリーブ

希少性の高い生地について伺ったところで、次はディテールについても聞いていこう。gym masterといえばラグランスリーブが印象的だがそれだけではないようだ。
「ディテール的に、クルーネックもフーディーもすべてにおいて、ラグランスリーブなのが昔からの特徴です。サイズ感はややタイトめで、当時のスウェットとしてはスタイリッシュだったと思います。着心地の軽さも当時からの特徴の1つなのですが、昔の北米のスウェットは生地が分厚くて重さがあって、ボックス型シルエットのものが多かったと思うので、gym masterは画期的だったのかもしれません。
そんなディテールですが、長い年月をかけてシルエットは少しずつ変わってきていますが、少しバランスを変えてきただけで、アームや身頃が細いという特徴はgym masterの個性なので大幅に変えてはいません。
このレトロ感といいますかヴィンテージっぽいシルエットや首の形状などは、オーセンティックなシルエットを崩さないようになっています。パーカーやスウェットパンツの白い紐や、スウェットパンツの細身なシルエットで股上が深い感じも昔のままです。
1990年代は比較的昔のアメカジ的なスタイルで、タイトな着こなしをしていた人が多かったと思いますが、最近はオーバーサイズというかワンサイズ上ぐらいで選ぶ人が増えています。長い歴史の中で、その時代時代でマッチする着こなしをしていただいて構わないと思います。それだけ長く愛用されているブランドだということだと思います」
編み機同様こちらもおそらく1980年代のカタログ
編み機同様こちらもおそらく1980年代のカタログ
1 / 2 ページ
この記事をシェアする