手仕事の温もりと、ファッションの最前線をつなぐ小さな輝き――ビーズ。その可能性を追い続けてきたのが、広島に本社を構える老舗メーカー・
トーホービーズである。昭和26年の創業以来、国内外のデザイナーや職人から愛され、いまや世界各国のビーズアーティストたちを支える存在となっている。
大量生産やトレンドの変化が加速するなかでも、「一粒のビーズに込められた美しさ」を守り続ける姿勢は変わらない。近年では、アパレル産業やアーティストとの協業、若手クリエイター支援など、ビーズカルチャーの新たな可能性を拓く活動にも積極的だ。
今回は、トーホービーズの代表・山仲巌さんに、伝統のものづくりと現代のビーズ刺繍カルチャーの接点、そしてこれからの未来について話を伺った。
戦前から続くビーズの歴史と、トーホービーズの歩み
手芸ブームで再び注目を集めるグラスビーズの世界。昔も今も、量販店では欠かせない定番アイテムであり、一粒一粒から生まれる創作は、多彩な表現の舞台を広げている。私たちが日常で目にするグラスビーズの生産を手がけてきたトーホービーズは、どのような歴史を歩んできたのだろうか。「第2次世界大戦が始まる前のころまでは、グラスビーズを使う職人さんがたくさんいたんです。ただ、戦争が始まるとビーズの需要はすっかりなくなってしまいました。戦後の少し落ち着いたころ、私の祖父や数社が改めて立ち上がり、もう一度ビーズづくりを始めたのが最初のきっかけですね」