2023.01.21

繊維を培土に:スタイレム瀧定大阪の「PLUS∞GREEN PROJECT」

アパレル業界における廃棄物は深刻な問題としてある。だからこそ、さまざまな企業がいかにして廃棄を減らせるかに取り組んでいる。製造過程の見直しや古着の回収などがそこに含まれるだろう。

だが、昨今では回収した古着を再び衣類に再生するだけではないようだ。繊維専門商社のスタイレム瀧定大阪が取り組む「PLUS∞GREEN PROJECT」は、なんと衣類を培土に変えてしまうという。

今回、同社R&D部R&D室の坂本和也さんに、本プロジェクトの狙いだけでなく、衣服から作られる培土の魅力も伺った。

PROFILE|プロフィール
坂本和也(さかもとかずや)
坂本和也(さかもとかずや)

R&D部R&D室。1987年生まれ、和歌山県新宮市出身。2009年に瀧定大阪(現スタイレム瀧定大阪)に入社。12年間にわたりテキスタイル事業に携わり、2017年には社内の最優秀職員賞を受賞。2021年度よりR&D部R&D室にてPLUS∞GREEN PROJECTを担当。

繊維商社ならではのSDGs

はじめに、どのような事業を展開されているのでしょうか。

弊社は150年を超える歴史を持つ繊維専門商社で、テキスタイル、原料、アパレル製品、ライフスタイルの4つの分野で事業を展開しています。

とりわけテキスタイル事業においては、国内だけでなく、海外12拠点と連携しながら、弊社の強みであるテキスタイルの企画開発を世界各国で展開し、販売しています。

近年は、繊維産業を取り巻く問題を解決するため、サステナビリティへの取り組みも強化しています。環境や社会に配慮したテキスタイルやマテリアルを「ECOARCH®(エコアーチ)」と総称して、環境配慮、オーガニック、森林保護、リサイクル、動物保護の5つのカテゴリーを展開しています。

サステナビリティへの取り組みである「PLUS∞GREEN PROJECT」について教えて下さい。

こちらは、廃棄される衣類などのポリエステル繊維を培地としてリサイクルすることで、人々がサステナビリティに親しみを感じるライフスタイルの実現を目指すプロジェクトになります。

衣類のリサイクルだけなら、他の企業様も取り組まれていると思います。ですが、それを培地にして緑を増やすところまで展開したプロジェクトはありません。

というのも、このポリエステル繊維のリサイクル培地である「TUTTI®(トゥッティ)」は、アースコンシャス株式会社と近畿大学による長年の研究開発によるもので、最先端の技術の結晶となっています。

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ポリエステル繊維から生まれるTUTTI®

なぜ衣類の循環ではなく、「土」に注目されたのでしょうか。

長年着用したり、製造過程でロスを減らしていく努力は必要ですが、完全に廃棄をなくすことはできません。それならば、その廃棄される部分を可能な限り循環させていきたいという思いがありました。

コロナ禍の影響もあり、家庭に緑を置く習慣が広まってきたことに注目しました。皆さんのライフスタイルに合わせて自由に鉢植えをしていただければ、自然と緑が増えていきますから、特段意識することなく環境に配慮した活動に参加できると考えました。こうした思いから、ポリエステル繊維のリサイクル培地が誕生したのです。

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STYLEM AGRI LABOでは、どのような生育実験が行われているのですか。

この生育実験場は、私たち繊維専門商社だからこそ必要なものでした。

アースコンシャス株式会社が開発したリサイクル培地をどのように企画・販売していくかを考えたときに、お客さまの立場からしたら「服や生地を売る会社が、いきなり土を売り始めて信頼できない」となるのは火を見るより明らかです。

それならまずは自分たちからということで、淡路島の「パルシェ 香りの館」内にある「STYLEM AGRI LABO」で20種類くらいの野菜や果物を育て、TUTTI®
の生育能力や機能性に自信を持つことができました。

その後、ハーブの生育に転向し、株式会社淡路島パルシェをはじめとする淡路島の企業とハーブソルトや精油とアロマストーンのセットの開発を進めています。

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生育実験から見えてきたTUTTI®の特徴はどのようなものでしたか。

私自身も使っていますが、なによりも初心者の方に扱いやすいものとなっています。

その理由は、TUTTI®に天然繊維が含まれていないからです。ポリエステル繊維を中心に真珠岩パーライトや黒曜石パーライトで構成されているため、微生物やタンパク質による腐食が起こりにくく、水やりをしても泥水などで目減りしません。

実際に手にとっていただくとわかるのですが、TUTTI®自体の重さも非常に軽いです。大手の販売店さんの通常の培養土と比べて4分の1くらいですね。もちろん、微生物などが含まれていないので虫が寄ってくることもなく、インテリアグリーンの使用に最適化されています。

家庭で気軽に使用していただくとなると、こうした手軽さは重要ですし、長く使用していただける秘訣になってきます。

TUTTI®を購入していただいた方々からも、「サステナビリティやSDGsに興味を持つきっかけになった」「TUTTI®の利便性から家庭菜園を始めてみた」という声が届いており、当初の目標であった環境への配慮に関心を持ってもらうという点はクリアしたと思います。

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異業種との協働も視野に

計画されている商品開発やプロジェクトがありましたら、教えて下さい。

引き続き、当プロジェクトのコンセプトと回収からのアップサイクルの流れを重視しながら、異業種への展開を目指していきます。

たとえば、当社では「TUTTI® BOARD」という従来なら廃棄されてきた衣類などのポリエステル繊維をリサイクルしたフェルトのボードを作るプロジェクトを展開しています。すでに自動車などで用いられている素材ですが、こちらを建築業界にも展開しようという計画が進んでいます。

建築業界でもサステナビリティが課題になっており、建築家やデザイナーも新しい素材を探しています。ちょうどファッションデザイナーの江角泰俊さんにTUTTI® BOARDをお見せしたところ、建築家の隈研吾さんにもお話が届き、現在東京・千代田区のJPタワー学術文化総合ミュージアム インターメディアテクにおいて特別展示「被覆のアナロジー ー組む衣服/編む建築」を開催中です。

このように他社や他業種との協働を進めながら、新しく商品化できるものがあれば積極的に挑戦していきつつ、プロジェクトとして廃棄問題に向き合っていきたいと思います。

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#Sustainability
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