そこで今回、同社の素材開発担当者である富永直斗さんに、「EXcDRY D-Tec」の開発経緯、ハリつきにくさに着目した理由とそこにおける工夫、今後の展開などについて伺った。
発汗時の不快感は「ハリつき」
「EXcDRY D-Tec」の特徴は、汗で濡れても肌にハリつきにくい“サラッと感”と、高速速乾性“からっと感”を兼ね備え、発汗時の不快感を軽減させることにある。特に、発汗時の不快さを解消する際に、肌へのハリつきにくさに着目した点が大きな特徴となっている。
「これまでの快適素材というと、一般的には素材に冷感機能や保温機能を持たせるなど、熱に関する機能を追求するこ とが多かったと思います。
しかし、実際の着用時を考えてみると、快適さとは冷たかったり温かかったりすることだけではなくて、複合的な要因によって実現されているのではないかと考えました。
そこで、実際に信州大学とともに『夏季発汗時の不快に繋がる感覚』の研究を行いました」
同社が信州大学と共同で行った研究の結果、発汗時の不快感をもたらす要因は、汗の濡れ感、肌あたり、ベタつきという、肌へのハリつきに関する理由が80%を占めていることがわかった。
この結果からも、ハリつきの軽減が必須であると確信し、同社の研究開発拠点「DISC(DESCENTE INNOVATION STUDIO COMPLEX)OSAKA」において、素材の開発がスタートした。
ハリつきにくさと高速速乾性の両立
それでは、ハリつきにくさを解消するために、「EXcDRY D-Tec」には、どのような工夫が施されているのだろうか。「技術的に大きな点は、水分の拡散性が高い機能を持つ糸を独自に開発したところにあります。それにより、汗をしっかりと生地に広げることが可能になり、ハリつきを抑制しました」
合わせて、「EXcDRY D-Tec」が追求したのは高速速乾性だ。不快感の軽減や着心地を実現するためには、ハリつきを抑えるだけでなく、素早く乾くことが求められるからだ。このハリつきにくさと速乾性の両立が、「EXcDRY D-Tec」のブレイクスル ーであるという。
「ハリつきにくさと速乾性は、いわばトレードオフ的な関係にあります。生地の肉感を出せばハリつきは抑制されますが、速乾性は落ちます。反対に、生地を薄くすると水分を吸いきれずに肌に汗が残ってハリつきが起こってしまいます。このバランスを実現するハードルが高く、何度も試行錯誤を重ねました」
今後の「EXcDRY D-Tec」のラインナップと製品開発
「EXcDRY D-Tec」を使用した主な商品としては、ゴルフウエアやトレーニングウエアなどを販売している。これからどんなアイテムを展開しようと考えているのだろうか。
「汗のハリつきや速乾性のある素材の需要は夏に限った話ではなくて、通年の機能素材だと捉えています。今後はさまざまな汗をかくシーンで、ハリつきにくい速乾性の高いウエアを展開するとともに、認知拡大にも取り組んでいきたいと思っています。
皆さん運動をして、汗がハリつくのはイメージとして持っていると思いますが、現時点で自分事になっていないところもあります。その点に関して、もっと伝えていく必要があると思っています」
今回、「EXcDRY D-Tec」は信州大学との共同研究や自社の開発拠点を活用したことで誕生した。これから、同社はどんなモノづくりをしていきたいのだろうか。
「今後も他社がやってない、弊社だから差別化できるような要素をしっかりと見定めて研究し、モノづくりに落とし込んでいくことが我々の使命だと思っています。
外部との共同研究はもちろん、弊社施設には評価機器等も揃っていますので、新機能や素材について、独自に開発したり改良したりする余地はたくさんあると考えています。
現在もプロジェクトが複数進行していますので、それらをきちんと完遂することで、皆さんに新たな製品をお届けしたいですね」